羅針盤の案内 #1
月曜日
〇〇:休みって短えな...。
〇〇:まあ勉強自体するの好きじゃねえからあれだけど学校生活自体は楽しいからな...。
重い足取りで下のリビングへ降りていく。
母:朝ご飯できてるからね?
〇〇:うん。ありがとう。
今日もいつもと同じような朝。普通の朝。だがしかし今日は何故か普通というものが壊れてしまうかも...という恐怖感に苛まれた。
〜〜
〇〇:行ってきまーす
母:行ってらっしゃい。
なんかいつもと違う雰囲気を纏った母の姿。いつも自分が家を出る際に母と一緒に見送ってくれる父は何故か今日は家にいなかった。
いつもと違うことの多さに困惑しつつ学校へ向かった。
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乃木学院高校
〇〇:おはよー
?:おっ!!善積!!おはよう!!
〇〇:いつも苗字で呼ばないでくれって言ってるだろ...笑
?:ごめんごめん!癖が抜けなくてさ...笑
話しかけてきたのは友達の日向温大。いつも俺の事を頼りにしてくれる。そして名前のように明るく、優しい。困った事があれば相談に乗ってくれ、いつも助けてくれる。
〇〇:お前は週初から元気ありすぎだろ...笑
温大:なんだよ週初って?
〇〇:1週間の始まりのことだよ笑
温大:もうちょっと分かりやすく言ってくれよ笑
〇〇:お前の頭が足りないだけだろ笑
温大:頭が足りないってなんだよ。
〇〇:要するに学がねえってことだよ。笑
温大:お前...ひどいぞ...笑お前は頭良くて、運動もできるハイスペックだからいいかもしれないけど、俺みたいにバカだと色々と不自由なんだぞ...。
温大:おーい!大夢!〇〇がバカにしてきたんだけど笑
温大が今話しかけたのは末吉大夢。温大と同じで明るく、いつも俺を頼ってくれる。時々何を考えてるかわからないけど...笑
大夢:俺もバカだけどお前も大概だろ笑
温大:お前にバカって言われる筋合いないぜ!笑
大夢:そういえば、〇〇少し「お金」貸してくんね?
〇〇:お金?まあ...いいけど...。
大夢:さんきゅー!
当たり前のように友達と会話ができるこの環境。何にも変えられない大切な時間。ずっと続けばいいのに。そう感じた。
授業も、友達関係も、学校行事も、部活も全てがなんだかんだ楽しかった。
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〇〇:ただいまー
いつもは聞こえる「おかえり」という言葉が今日は返ってこなかった。
親からの愛情が今受け取れず少し寂しさを覚えながら、テレビをつけてみる。
〇〇:テレビでも見るか...。
〇〇:最近あんまテレビ見ねえしな..。
〇〇:あんまり面白いバラエティやってるイメージがなくて気づいたらテレビ離れしてたな...笑
〇〇:まあ取り敢えずニュースでも見るか。
〇〇:また殺人事件起きたのかよ...って...は...?
〇〇:なんで...?
〇〇:俺の母さんと父さんが...?
〇〇:人を...殺したのか...?
テレビの画面に映っていたのは手錠をかけられた両親がパトカーの中に入っていく映像と、両親の名前に「容疑者」とついた字幕。
目を疑うような映像に俺は言葉が出ず、唖然とするしかなかった。
〇〇:おい!?そんな訳ないだろ!?
俺は必死に両親に電話をかけ続けた。
しかし...
〇〇:おい!?出ろよ!!答えてくれよ!!
〇〇:嘘だって...言ってくれよ...。
俺は気づけば意識を手放していた...。
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AM 7:00
〇〇:やべっ...。こんな時間じゃん。
〇〇:おはよーって...誰もいないんだった...。
今だに信じられない光景と状況に動揺を抑えきれないまま学校へ向かった。
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〇〇:おはよう...。
温大:おい!〇〇。お前大丈夫か...?
大夢:〇〇...。お前は...悪くないからな...?
どうやら昨日の事件についてはクラス中に自分の親が犯人だったという事が知られているらしい...。
その状況がどういう事を招くか俺にはすぐに理解ができた。
クラスメイト1:おい!殺人犯の息子だぞ!
クラスメイト2:俺ら殺されるんじゃね!笑
クラスメイトの数人は俺の事を殺人犯の息子と囃し立てはじめた。
想定はしていたものの、いざ殺人犯の息子というレッテルを貼られ、いじめを受けるという事は想像を絶する苦しみだった。
学校では常に話しかけても無視をされ、陰で悪口を言われるのは当たり前。机や黒板にも悪口。挙げ句の果てには、暴力まで振るってくる始末。
いじめを受けた人からの話でしか聞いた事ないような内容を、自分が受けている。
その真実を受け入れたくなかった。
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放課後...
俺は頼みの綱だった先生に相談してみる。
でも...
先生:先生も助けてやりたい気持ちは山々なんだけどね...「色々」と理由があって無理なんだ...。
先生:申し訳ない...。
〇〇:色々ってなんですか!?お願いです!!助けてください...。
先生は俺の話を聞かずそのままどこかに行ってしまった...。
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俺の親友2人も...どうせ助けてくれない...そう思っていたが...
温大:ごめんな...普段そばにいれなくて...
大夢:自分たちのことを守るために...って俺らダセェよな...。
〇〇:2人は悪くねえよ...俺がそういう振る舞いをしろって...言ったから...。
普段、教室にいる時は俺と関わらないようにしている。何故なら、逆に2人がいじめの対象になる可能性があるため。
友達のいじめられている姿は見たくない。だから俺から提案した。
俺は現在、クラスほとんどの人からいじめられている。温大、大夢、そして「あと1人」を除いて...
〜〜
2週間後...
俺へのいじめはさらにエスカレート...。俺が殺人を犯したわけではないのにも関わらず、あたかも俺が殺人を犯した極悪人かのように、蔑んだ目で見られ、人間のような扱いは到底されることはなかった...。
そんな日々が続き精神的に追い込まれた。
温大、大夢:〇〇...。本当に...ごめんな...。グスッ
〇〇:俺...もう限界かも...。笑
自分は2人に作り笑顔を見せたところで改めて精神的に追い込まれている事を、自覚した...。
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自宅...
〇〇:ごめんな...笑
〇〇:お前らは...何にも悪くない...!
〇〇:だから自分を責めるなよ...!笑
そう独り言を吐き捨てながら、自ら命のスイッチを切った...。
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AM 6:00
外は既に街中が明るく照らされている時間。
自分は「何か」に呼ばれ、それに呼応するかのように目を覚ました。
〇〇:ちっ...くっそ眠いな...
〇〇:あれっ...?俺ってこんなところで寝てたっけ...?
〇〇:てか...俺はどうして生きているんだ...?
俺って...死んだはずじゃ...なかったっけ...?
to be continued.
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