フィアナ伝説:ゴルの武勲

飢餓に打ち克ったとはいえ、私はこの崖にただ一人。今夜私と一緒にいるのは他ならぬ哀れな去り行く女なのだから。
三十日間、私はこの崖で食べることも眠ることもなく、竪琴もティンパーン琴に類似する楽器の音色もなく、この崖で取り囲まれてきた。
この時に3000人の真の戦士が私の手にかかって命を落とした。それは大いなる狂気の予兆だった。彼らの後に塩水を飲むのはまだだった。
私は歴戦の勇者だった。私には体の守りがあった。私は黄金の武器を持つウランだったが、今夜の私は惨めなゴルだ。
フィアナ騎士団の主君、フィン・マックールは私をこの崖に追い立てた。私の勝利の戦歴は輝かしかったのだが、これが彼の敵意の原因となった。
遭遇したトレンモールは私の恐るべき強大な手にかかって落命した。私が撃ち殺すまで我々の間を遮るものはいなかったのだから。
勇猛で勝ち誇ったクウァルはクヌハの戦いで私の手にかかって落命した。落ちぶれた私と同じくらいの傲慢さだった。私は今そのツケを支払っているのだ。
クロンウォーンの激戦で、大勢の英雄が私に敵対したにもかかわらず、私はカレルの勇敢な支持者たち1000人を攻撃で倒した。
コンブロンの白き肌の息子を私の槍が貫いた。アルムの邸で彼が私に怒ることは二度となくなった。
喜びに満ちた君主フィン・マックールの二人の息子を沼地の中で殺したのは、私にとって長い不吉の予兆だった。
クウァルが来るまでアイルランドの指揮権は私のものだった。私は彼の好意を享受しなかったので、彼の血肉を惜しむことがなかった。
誇り高い約束の成就のため、アルムのフィンが私による不当な扱いを復讐するという名目で私を飢餓に追いやったのは悪いことだった。
クウァルは150人の勇敢な英雄たちとともにタラに来た。彼の魂はとても気高く、彼は広大なバンバの地を我がものにしたであろう。
偉大なる百戦のコンがその時のイチイに覆われたアイルランドの王だった。彼の敵を征服するために私は多くの苦難を経験した。
マグ・アガの戦いに大胆不敵なアイルランドの上王である英雄カサルと1000人が痛ましくも私の手にかかって命を落とした。
このクウァルの兄弟の子であり、美貌輝くウーナの息子であるコンは、クウァルとこれらのフィアナ騎士に関係なしに、私を支持することに気が進まなかった。彼らとこの王の間に血のつながりがなければ、バスクナ一族が強大であろうとも私に折り合いをつけようとしなかっただろう。
堂々たるクウァルの姉妹がこのコン王の養母であったために私は追放され、アイルランドから物悲しく立ち去らねばならなかった。コン王は白き肌のクウァルにガーリアンの王権を授けたが、それは平和的な統治の前触れとならず、私を勇気づけるものだった。私がクレン・オ・グアナハの周りで大きな狩りを開催したある日、クウァルが私を阻止しようと傲慢にも近づいてくるのを見つけた。勇敢なモーナの一族を散り散りにするためにクウァルが襲い掛かってきたのだ。彼を満足させたのは自らの分け前ではなく、戦いだった。そしてクウァルに関係なく私たちは美しきスリアヴ・エブリンに撤退した。我々は一人として置き去りにせず、彼の軍勢は300人を失った。
それからコノートの都クルアハンの城壁に来た。しかしクウァルが攻勢を仕掛けてきたので我々は息も絶え絶えに行進していた。麗しのクルアハンのコナルは養子の頼みにより我々を庇護することを拒んだ。このことはクウァルが我々の多くに悲鳴をあげさせて潰走させ、追放することを予感させた。
我々は迅速にエウィン・マハに向かって、この時にアルスターの君主に永遠の協定を結ぶことを願い出た。しかしアルスター王はクウァルを恐れて敢えて我々との関係を維持しようとしなかった。これは悲しい心変わりであり、屈強な者たちが我々に敵対することになった。
我々はタラの城壁に来て喝采でコン王を迎えた。しかし彼は我々に親身ではなく、我々に勇気を出す理由もなかった。緑地に囲まれたタラの王はその時に我々を拒絶した。悲しむべきことに、彼は我ら高貴な戦士団を見放したのだ。そこで我々はアイルランドを去った。
重い荷を積載した船にのって我々はウェールズの地に向かった。そこで我々は戦いとなり、敵を挫いた。私は海を越えた辺境の主権を高らかに我がものにした。今夜の私には女友達がたった一人しかいないのだが。
一年と四半期、私は主権を得ていた。島の無法者たちが我々の知らせをクウァルに教えたことが戦いの予兆にはならなかった。
驕り高ぶるクウァルと大胆な契約をしたマンスター人とレンスター人の長たち、そして忘れられぬアイルランドのフィアナ騎士団。
この大軍団が私をウェールズの地から追放するべくやって来た。それは私が自らに相応しい権利を支持し得たことが原因ではなさそうだった。
我々は互いに激戦を繰り広げた。私にとってバンバの軍勢は友ではなく、まるで狂っているかのようだった。クウァル、女騎士ボズウァル、勇敢なクリヴァル、そしてバンバのフィアナ騎士団の主だったものたちが私の戦歴に付け加えられた。島の屈強な住民たち、ウェールズ人たちは私の友人ではなく、彼らと一緒になって私に襲い掛かった。そのことが私にはより苦々しく思われた。
しかしその戦いで勇ましく私は軍勢を大いに屠った。その時に私が大勢の者を殺したことは彼らがこれから先も討ち死にする先触れとなった。その戦いで広大なバンバのクウァルの軍勢とウェールズ人戦士たちの2000人が私によって討ち取られた。その撃滅を以て、ただちに私は我が方の撤退を支えた。海を越えた私に彼ら無くして寄る辺はないのだから。
すっかり略奪を終えた後に我々は自由なるロッホランの地を訪れたが、そこで平和を享受することはなかった。我々にとっては忌々しい通り道だった。
戦を好む地の軍勢が我々を追い出すためにやって来た。屈強なつわものどもを打ち倒すことは、我々が少数であることから困難と言えた。我々は恐れを知らぬロッホランの軍勢に近づいて戦いを仕掛け、勇猛果敢に私はロッホランの王を討ち取った。まことに、800人の武勇に優れた軍勢が私によって討ち取られた。私が主権を得るまでの遠征は、並大抵ではなかった。私がその島から貢納を受ける間に、モーナの礼儀正しい息子たちが土地を大胆にも支配していた。
我々はあのクウァルに再び背かれた。それは間違いではない。海外の軍勢が我々に向かってきて、彼らを悲しませることになったのだ。我々は恐れを知らぬ軍勢に華々しく戦いを仕掛けた。私は大勢の人々を苦しめてやったが、私自身もまた傷だらけだった。この軍勢の1500人を私が討ち取った。彼らを骨の山として積み上げたのだが、今夜の私は孤独だ。
我々はただちに快速船に乗り込んだ。海に乗り出した後になっては、彼らは私から人質を取ることはなかった。
我々は顔をスコットランド人のほうに向けた。そこは我々に好意的ではない通り道だった。海の上の男たちは我々を追い出そうとやって来た。
熾烈な戦いが我々とスコットランド軍の間で繰り広げられた。武器を持った無事な姿のフィアナ騎士を見つけることは難しかった。私は友の不名誉を雪ぐため、勝ち誇る王を見つけたところへと猛烈に進んだ。私はスコットランド王と無慈悲な戦いを繰り広げ、その中で名の知られた王の首を一閃して刎ねた。私はその戦いでその王の軍勢を骨まで切り刻んで、戦争と武功に高揚した。栄光の4年間、私はスコットランドの王権を得ていた。覚えきれないほどの金銀があったのだ。だが一度深く鬱蒼とした谷で狩りをしたことが、我々の不幸の原因となった。我々の敵が海のほうからやって来ていた。威風堂々たるクウァルが島嶼の誉れ高き軍勢と共に来た。スコットランドの者たちが我々に背いたことは我々が過ぎたる勇敢さを示す理由にはならなかった。勝ちに驕るクウァルに対して私はすぐさま戦いを仕掛けた。私は昂ぶりを鎮めるまでに1000人を討ち取った。敵をあしらって私が自分の家族を船に乗せると、我々は危険から完全に逃れたことで歓声に沸いた。
我々は広大なロンドンという楽園を目指して旅した。多くの苦難に見舞われたとはいえ、我々はそれでもなお恐るべき存在と言えた。その楽園から我々を追い出そうと屈強な軍勢が出迎えた。彼らの選ぶ道が和平を結ばないものであり、我々はそれを後悔させてやった。王の都城の前の緑地に我々は英雄的な戦闘部隊を連れて来た。そして私のフィアナ騎士たちは敵愾心に満ちていた。ロンドンの強固な城壁はすぐさま破られ、軍勢が大挙して押し寄せた。それは狭き突破口であり、サクソン人の王が戦いの中で私に勇気を出して戦いを挑んだ。私は彼の近衛全員に対して退くようなことはしなかったし、敵意にひるむこともなかった。戦いの最後に、支配者が斃れ立派な最期を遂げた。これは骨の折れる仕事だった。私はひるむことなく2000人のサクソン人を討ち取った。彼らを無惨なまま捨て置いたので、彼らの末路は語り草となった。
暫くの間は我々がイングランドの権力を保持していたが、敵は私と私の友を深刻な脅威として受け止めていた。堅き武器を持つクウァルがアイルランドのフィアナ騎士団を率いてやって来た。聞くところによればその島の軍勢も彼らに加担していた。まさにその怒りに燃えた戦士クウァルは旅の果てに我々へと攻撃を仕掛けた。だが私は復讐に燃え、全てのクランを打ち倒す者だった。私は自ら、敢えて私に従わなかったり行く手を阻んで武装して戦いに加わっていた6000人のサクソン人を素早く討ち取った。
私は敵を打ち倒すと後は味方の撤退を支えた。味方が船に乗るまでの間、彼らを見捨てはしなかった。
それから船に乗ってフランスの地に渡った。海の寒々しい鳥の鳴き声が奏でる旋律に乗って旅をした。簡潔にまとめた話なのだが、広々としたフランスの軍勢がこの時にバンバの少数の軍勢に向かってきた。
我々は英雄的に互いに攻め合ったが、我々の遠征は敵軍から高い名声を得ることになった。取引をしようとしなかったクウァルが来るまでは、私は寛容にフランスの主権を保持していた。友好的な関係ではなかったため、驕ったヨーロッパの軍勢はクウァルの周りに集まり、アイルランド軍は勢いよく前身した。彼らは我々の後を追って、この悪意に満ちた戦いに加担していた。私の六重の軍勢は応じて、彼らに目にもの見せてやった。我々は互いに素晴らしく英雄的に攻撃し合ったが、ついに私の六重の軍勢がフィアナ騎士団を屠った。しかしクリヴァルとボズウァル、そしてトレンモールの家の貴族たちがあのフィアナ騎士団長の周りを固めたので私にはその好機が得られなかった。私は敵軍のうち1500人を打倒した。私が敵をよく防いだことはまた一つの輝かしい武勲となった。この打倒の後に私は味方の撤退を援護した。今日、この崖で私の身体は傷だらけになっているが、黙っているつもりはない。
重い荷を積載した船に、私の部下の少数のフィアナたちを乗せた。私は旅をして、最後にはベルゲンという楽園にたどり着いた。ロッホランの勇猛な王と彼の全軍がその場にいた。しかし彼らは私の剣に恐れをなしたため、私はベルゲンで主権を得て4年を過ごした。そして私はベルゲンの金銀と彼らの友情を得た。
血気盛んなクウァルはバンバの上王とともに戦いに赴き、そこで彼は勇敢であったにもかかわらず百戦のコンの不興を買って去った。英雄コンは使者をベルゲンに送った。この時、我々は急いでクルアハンの平原に馳せ参じた。百戦のコンはこれを機にモーナの一族を支持した。そこで我々は勇んでクヌハの戦いに赴いた。この戦いでは戦装束を整えたマンスター軍や復讐に燃えるレンスター軍がクウァルの陣営に加わって戦った。この時に勇敢な200人のマンスター軍と200人のレンスター軍、200人のフィアナ騎士団が私に勝とうとして男らしく立ち向かってきた。私はこの600人を勇ましく討ち取った。私に対する非道な扱いを思えば、慈悲を与えることはなかった。
その時の私とクウァルとの関係は勇敢なクウァルに対して闘争心を抱かせるものだった。バンバの軍勢が私とクウァルを引き離すことは容易なことではなかった。そして私はその戦士の胸に勢いよく突き、彼の心臓は引き裂かれて私の槍が真紅に染まった。マンスター軍は敗走しフィズ・ガヴラで私が追い付いた。慈悲を許さず私が討ち取った全ての者たちの墓がそこにずっとあるべきだ。女騎士ボズウァルとクリウァルが私を食い止めるためにやって来た。このことがクヌハの戦場を離れるきっかけとなった。幸運なるトレンモール家でもリフィ―川を渡ることはできなかった。たった八人の惨めなものたちと怒れるボズウァルを除いては。勇敢なレンスターの戦士たちを私は追撃し、フィズ・ドルハにたどり着くまでに全滅させた。私は戦利品を集め、タラに向かった。白き肌のコンは私にフィアナ騎士団の団長の地位を与えた。彼がそれを許し続ける間は私にとって大きな利益となった。そして私はアイルランドとスコットランドの軍勢に命令に応じるように言い渡すと、くじを引いて私を選んだので、高潔に取り決めを行った。私はアイルランドの軍勢の長たちへの報酬を優遇した。しかし彼らは私からの恩恵を享受しておきながら、私を信頼しようとはしなかった。そして私は気高く殺していなかったバンバの入り江や湖の醜い怪物を放っておかなかった。これは私の恩恵がもたらしたもう一つの栄光だった。私が熱心に探し出して、その後殺していたことによって、アイルランドに得体の知れない化物や悪霊や異形はいなくなった。私が解体しなかった強力なフォドラの海の艦隊はなかった。これは私のもう一つの仕事だった。私は十年間アイルランドのフィアナ騎士団の団長だった。私は二心を抱かず裏切りもしなかった。しかしフィアナ騎士団の統率は百戦のコンによって私の手を離れ、私の次にフィン・マックールに親愛を込めて贈られた。コン王は堂々としたやり方でフィアナ騎士団を分割して和解のきっかけを作った。三分の一が私に任され、三分の二はクウァルの息子に任された。私たちは和解した後には平和な時間を過ごし、また、私はベルゲンの都市の軍勢から貢納を受け取っていた。丘陵でのコランの狩猟ケシュ・コランの狩猟は我々が遠慮なく行ったものだった。邪悪との遭遇の物語は長い。フィンが急にスリアヴ・セグサの頂上に陣取った。彼に会いに来た三人(の魔女)の物語は長い。丘の斜面から、三人の邪悪な妖精が現れた。女たちの格好は悪魔じみていた。彼女たちは私の仲間を魔法で束縛した。三つの醜い黒い口、六つの閉じられることのない白い目、三つの逆立つ赤い頭髪、六本のねじくれた足、三本の争いごとに長けた剣、三本の槍と三枚の楯を彼女は持っていた。その女性や装束を見つめるのは容易ではなかった。それと棒に取り付けているごつごつした灰色の魔法の鉄、それらを見ていたフィンたちをめまいと立ち眩みが襲った。彼女たちは悪しき魔法によって我々の団長を捕らえた。そして彼女たちはフィンを枯れて震える老人のようにしてしまった。彼女らは骨が散らばったセガスの戸口の前でフィンたちが率いていたフィアナ騎士団の七つの待機部隊を、ただ私だけを除いて同じような窮地に陥れた。フィアナ騎士団全体が速やかに捕縛された。それは語られるべき物語ではない。そして彼らは地下の屋敷に放り込まれた。彼女らはフィアナ騎士団に近づいて彼らの骨を断とうと閃く刃を手にした。私がもっと速くなかったのなら、彼女らは他の誰かの首を抱えていただろう。私は一人で三人の魔女と戦った。セガスの丘の入り口で激しい戦いとなった。カウォーグとクレンを勇敢に斬った時の私の一撃はすさまじいものだった。イオルナを勇気を出して捕縛した。彼女を嘆かせるまで彼女を屈服させることは難しかった。私の鋭い刃で骨まで断たれることを恐れた彼女は、みじめな窮地にあったアイルランドのフィアナ騎士団を自ら救い出した。彼女はやらなかった時のことを恐れて、彼らを元の姿に戻すことを余儀なくされた。したがってこのような話が語られている。フィンは解放され、フィアナ騎士団は狼狽しながら逃げ出した。今夜の私は侘しいが、あの時の私に恐怖はほとんどなかった。私は素早く火をかけて、ケシュのふもとの屋敷を黒い灰塵に帰した。恐ろし気なイオルナは怒ってフィンとそのフィアナ騎士団を追いかけ、大胆にもフィンに一騎打ちを要求した。フィアナ騎士団長のフィンは私が迷っているフィンを見て武具を身に着けて行くまで、心変わりした戦闘妖精と戦う者を見つけることができなかった。彼女の戦いぶりは荒れ狂っていたが、たやすく勝利した。私の青い刃は彼女の首を見事に斬った。トゥアハデダナンのカイムデルの息子のコナランが私に殺された三人の女の父親だった。この戦いの後でフィンは友誼と婚姻の同盟を結んだ。彼らがフェザを殺すまで、私は復讐を忘れていた。彼は輝かしいカインヘの息子、フィンの娘の息子であり、誇りのためにフィンの手にかかって殺されたのだった。彼がいなくて私は寂しい。私は寂しいのだ。


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