Mosaici Fiorentini
先日、ピッティ宮殿正面にある、フィレンツェモザイクのお店と工房を訪問しました。代々続く伝統職人一家の、当代親方の奥様はなんと日本の方です。
少し時間をいただき、お話を伺うことができました。
右がじゅんこさん。
もう30年ちかくフィレンツェにいらっしゃるそうです。芸術と音楽を愛好し、文化に触れるため訪れたフィレンツェで、運命の出会いがあったんですね!
「フィレンツェモザイクは、家具の宝石とも呼ばれ、メディチ家が銀行業や繊維業で蓄えた富を惜しげなく費やした時代に発達したものなんですよ。」
「フィレンツェ独特のもので、テッセラモザイクとは製法が違うんです。」
その辺を詳しくしるため、工房を案内していただきました(お店から徒歩30秒)
材料は貴石。世界中からいろいろな色の石を集めてきます。
昔は職人さんが自分で採掘に行くこともあったそうです。
スライスした貴石を、
デザインにあわせて切り抜き・・・(型紙がおかれています)
(昔ながらの糸鋸!
なれないと1cm切るのに30分くらいかかるとか)
パーツごとに組み立て・・・
デザインの型を切り抜いたベースにはめ込み、蜜蝋で裏から固めます。
え?絵じゃないの?とみなさんおっしゃるそうです。が、
正真正銘これはモザイク。
マエストロの感性と技の結晶です。石の選定と、どこをどう切ってパーツにするのか、自然の観察や芸術に対する理解があってこそ、深みのある作品となるそうです。
この立体感!!すばらしいの一言につきますね。いったい何ピースなんだろ。
下のテーブルは、ラピスラズリをふんだんに使い、装飾も大変手のこんだデザイン。(店内で今一番高価なものだそうです。)
こんなすばらしい技術の工芸職人の世界にも、やはり世間の荒波は押し寄せています。
まず若い職人さんが育ちにくくなっていること。
一朝一夕には身に着く技術ではなく、長期にわたる修行(修行中は報酬も低い)をきらうことと、老後を考えると(職人の年金額は他の職業と比べて大変低い)、現代っ子にはなり手がなかなか現れない。
「これから先、職人さんの育成が一番気がかりです。日本もそうなんですが、イタリアもフィレンツェ市も伝統工芸に対する支援が一切ないので、、、そのあたりが改善されるといいんですけどね」と。温和なじゅんこさんもちょっと厳しい表情に。そんななか、、、
「25歳になる息子が工房で修行中です」それは心強い!よかったです。
そして、お客様の消費傾向が変わったため、あるいはモザイクにたいする知識がないために、伝統的なものが売りにくくなっていること。
「たとえば、団体ツアーの旅行者のかたは、モザイクが美術館にあっても、ガイドさんの説明がなければしらずに帰ってしまいます。個人的にいらっしゃっている方は、じっくりと観てモザイクのすばらしさに感動し、思い出としてお買い求めになることがあるんです。」
近年インテリアの流行はシンプル&ミニマル、そこに合う現代的なデザインのモザイクも設計制作しておられるそう。
かっこいいテーブルトップがたくさん!!
↓これはアンティークだそうですが、こんなテーブルだったら、シンプルなインテリアにも合いそうですね。
こちらかわいらしい柄で、ちと気になりました。
お値段は・・・売れない絵描きにゃ~縁がない数字。工程が工程なだけに、時間がかかるのでしょうな~。
売れっ子になったら買います!
「お求めいただきやすいものもあるんですよ~」と案内された棚。
↓こちらで4万円くらい。かかった手間暇を考えたら、お得な感じです。
じゅんこさんは、実はマルチに活躍しています。10年前からマニフィコクラブというNPOを運営し、年に数回、日本とイタリアの交流イベントをオーガナイズしています。
次のイベントは5月中旬、ヨーロッパの古楽器リュートと琵琶の競演。
今年の10月には、美しい和菓子を紹介する展覧会を企画中。
そして日本で、フィレンツェモザイクを「アート」としてとらえた展覧会をしたいとおっしゃっています。
「もうフィレンツェ市とフィレンツェモザイク協会の後援は取り付けてあるのよ。あとは日本での受け入れ先をみつけるだけ!」
どこかの美術館さん、やりませんか~
一見おっとり、でもとっても行動力とバイタリティーのある、じゅんこさん。
「あのひとはやるといったら必ずやる」と評価されているそうです。話だけで終わることが多いここフィレンツェで、、、地元の人の信頼を勝ち取るには、大変な努力があったのではないかと思います。頭が下がります。
素敵な先輩、じゅんこさんと出会えてラッキーな日でした!
フィレンツェモザイクが美術館にあったら、これからはもっと深く楽しく観察します。
お時間を割いてくださり、ありがとうございました。
そして、これからもよろしくおねがいします。
応援してもいいな〜という方はサポートをよろしくお願いします。工房維持費にさせていただきます。作品やお仕事依頼ももちろん喜びます。仕事は主に人物動物肖像画、壁画制作修復ですがその他の事も相談ください。