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【剣闘小説】Dance like a Yellowjaket,strike like a Killer bee

キャラ崩壊注意

 カードダス時空深部、ここはローマとの空間的距離が近く、野蛮と暴力の空気が漂っている。ピュアなアイドルが迂闊に降りてきたら、忽ち不可解の闘争本能に駆られて筋トレを始め、プロテインを摂り、やがてプレミアムドレスが着れなくなるぐらい素晴らしいマッチョボディを手に入れてしまうため、めったに人が来ない。

 もとからローマで論理受肉して生来ローマ抗体持ちのDOOMはこれをいいことにして、トレーニング資材と訓練用ダミー人形を持ち込み、地下ジム、もとい剣闘士養成所めいた施設を作り上げた。

『アーアーアーアーアー、トライエブリシーン……』

「シュッ、シュッ、シュッシュッ」

 シャキーラのTry everythingが流れているトレーニング室、筋トレ器具、無造作に部屋の隅に積まれたダミー人形、斧、槍、グラディウスなどが壁に掛かれているなか、日向エマはサンドバックに向かって拳を一心に繰り出している。トレードマークである長いツインテールは邪魔にならないよ後ろに一つの団子に束ねて、下半身いつもの黄色い短パンの中に圧力パンツ、上半身は黒いスポーツブラだけ。アスリートめいた引き締まった体が汗で濡れている。

「シュッ、シュッ、シュッシュッ」左右ジャブ、右フック、サイドステップ。

「シュッ、シュッ、シュッシュッ」左右ジャブ、左ボディブロー、サイドステップ

「シュッ、シュッ、シュッシュッ」左右ジャブ、右フック、サイドステップ。

「シュッ、シュッ、シュッシュッ、シーッ!」左右ジャブ、左フック、そして全身をひねり、踏込む!全身の重量に回転を加えた右ストレート!

 グァーーン! サンドバックを吊るしたフックが変形し留め具から外れ、バッグはくの字で前方7フィート飛んで、地面に転がった。

「フゥー……」

 残心を決めたエマ。忽然トレーニング室にCLAPCLAPと拍手音が響いた。音の方向に振り向くと、ドアの近くに、赤いショートボブの少女、DOOMが壁に持たれて立っていた。

「ブラボー、コロッセオでも通用するパンチだったぜ」

 肉食獣のような口を割れて笑いながら言った。

「なんだ、来ていたのか」

 淡々とした対応、オフだからだ。

「入ってばかりだ。集中してサンドバッグを殴ってる先輩がステキなんでつい見とれてしまったわ」「褒めてもなにも出ないよ」「いや、それはね実際、出たんだよ」

 DOOMはポケットを探り、三枚のカードを取り出してエマに見せた。

「タダーン!見ろよこれ!」

 それはエマと相方のマイカが描かれたイエローリンク一式であった。

「へー、ようやく揃ったか。おめでとう」

「へへっ」

「これで新しいPOP属性のフレンズドレスもそ揃ったことだし、これからは遠慮なくPOP属性をレベリングできるね。ミライさんのアイデンティティでな

 エマの表情が暗くなり、トーンが数十度落た。

(ヤベ、地雷踏んじまった)

 DOOMの顔から笑みが消えた。

 フレンズ実装からおそ四ヶ月、主役格のあいねとみお、ひいてはCUTEとCOOLのカードが優遇され充実しているなか、POPとSEXYのカードがなんと各四セットしかない。SEXYは四セット全部蝶乃舞花が使っていたカードに対し、POPの四枠に一つが明日香ミライのミルキージョーカー一式が占めている。加えて新規楽曲に舞花Girls be ambitious!がプレイできるがカラフルシェイクのステージは未実装だ。現在の環境では新規のPOPのステージは上に書いて通りアイデンティティだけ、エマが相当不遇な子になっている。おれだったら剣闘士やめたくなりますよ。

「いいさ、出番が少ないってことは、トレーニングできる時間が増える」エマはダミー人形の中から胸にスプレーで「M」と書いてあるを女性型拾い上げ、トレーニング室中央に固定し、マゼンタのボリューム感あるツインテールのカツラをかぶせた。彼女の敵意が誰に向かっているか一目瞭然だ。

「臥薪嘗胆……活躍の機会が来るまで、ただひたすらおのれの技を磨くのみよ」

 そして壁に飾っている一本のトマホークを手に取り、ダミー人形に向き直った。その精神が明らかにローマの空気に蝕まれている。

「アー、まあ、トレーニングにやり過ぎなんてないよな、はは」「シー」「あっはい」

 エマは両足を前後に開き、腰を沈んだ姿勢で斧を頭上を持ち上げた。緑色の両目が目標であるミライダミー人形を射止めた。そして。

「ヨァーッ!」

 腕をしならせ、トマホークを投擲!トマホークはほぼ直線で跳びながら空中に二回転して「ツァ」とダミー人形の頭部に4㎝めり込だ。衝撃を受けたダミー人形は激しく揺れて、カツラが飛び散った。

「ボラボー」ClapClapClap、とりあえず拍手するDOOM。

「いや、まただよ。ミライさんならこれぐらいの投げ斧は簡単に跳ね返される。パワーを増すか、本数の増やすか……」

(面倒くさくなってきたぜ。暇だったら特訓でもやったらって薦めてここに連れて来たのはあたしだけどよ……)

 果たしてカラーシェイクが導入され、エマは自分のブランドとステージで踊れる日が来るのか?待て次回!



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