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アンソニーが俺に教えたこと

私が尊敬するシェフ、作家、テレビパーソナリティであるAnthony Bourdainが今月の8日、自ら命を絶った。私は翌日の新聞紙でそれを知った。

大学の頃は彼のテレビ番組を熱心に視聴していた。テレビに出る彼は肉ばかり食って、やたらベトナム料理を贔屓して褒め称えていた。十数年前大阪に来たときはカラオケを悪夢と評価し、ビジュアル系は生理的に無理と発言した。さらに歴史と有名人をバカにしたりする皮肉屋のスタイルがしばしば反発を招いた。

私自身は彼の番組を5年以上に見ることがなかったが、Anthony Bourdian's no reservationのとある回の発言が私に中に深く残していた。私の記憶によると、あの回で彼はアフリカの某国で今でも狩りと採集で暮している部族と一緒に狩猟に出た。貧弱なニューヨーカーであるアンソニーはアフリカの太陽と乾いた大地に育てられた狩人たちについていけなくて、直ぐにはててしまった。

テレビマジックによって今日の食材がカメラに収めた。ダッチョウの卵一個、イボイノシシ一匹、どれも採れたての新鮮食材、一体どんな料理になるのかな?

まずはダッチョウ卵から。狩人のおじさんが乾いた草むらを踏んで平げると、火打ち石で火をおこし、卵を落として、その上に土を被せて焼けるまで待つ。その豪快な調理法を見てアンソニーは青ざめた。

卵が焼き上げると、土を小枝でどかし、狩人は手でそれをちぎってアンソニーに勧めた。アンソニーは卵を受け取り、恐れ恐れ口に入れた。「土と草の灰まみれだ。ダッチョウの卵は何度食べたことあるが、これが一番恐ろしい」と彼はカメラに感想を述べて、狩人には感謝を伝えた。

次はメインディッシュのイボイノシシだ。これは腹を切り裂いて、内臓を取り除くと、肉を火で炙る、それだけ。調味されなかった肉を囓ったボーディンはこう言った。「イボイノシシの肉が超くさい、血と炭とうんこ味がする。あたりにうんこが散らばっている所で食べると尚更だ」そう、イボイノシシを焼いてる間に狩人たちが内臓を回収すべく腸から糞便を捻り出していた。

だがボーディンの苦難はまだ終わっていない、狩人のなかに一番顔がこわいリーダー格の男が彼にあるものを渡し、通訳が「イボイノシシの鼻、いちばんいい部位だ。客人のあなたへのプレゼントらしいです」と伝えた。アンソニーが顔をしかめ、イボイノシシの鼻を口に放り込み、渋い表情で咀嚼した。「うん、うん、うまい。ありがとう」ほとんど社交辞令めいた返事に対してリーダーは頷いて返した。最後にいつものアンソニー本人によるシメの言葉ではこう言った「俺は色んな国を旅して、料理を食べてきた。旨い料理があれば、そうでない料理も当然ある。どんな料理も、その下には国や民族の文化、自然、政治、誇りなど様々な要素が隠れている。だからs出された料理がどんなにゲテモノであろうと、俺は一口食って、うまいと言って、もう二度と食うことないことを心の中で願うだけだ」とカメラはイボイノシシのうんこを運ぶスカラベを写してエンドロールに入った。

テレビマンとして矜持なのか、単に悪評とお上様がこわいのか、番組を見る限り、彼は確かに皮肉屋で、口も悪いが、でも食文化を決して侮辱しなかった。うまく言えないが、人は毎日食事をする。食文化とは、その国を根底の何かに繋いでいる。食文化を否定することはその文化ごと否定すると同様と私は思う。だから私は「生卵を好む日本人は頭おかしい」など言わなかったし、つい最近は自分を打ち勝って卵かけご飯食べれるようになった。だからきみも今度「イギリス料理って茹でたソーセージとフィッシュ&チップスしかないだろw」を口を出す前にもう少し考えてくれ、その軽率な一言でイギリス全国民と敵に回してもいいのか、ダニエル・クレイグ似の強面エージェントがキレてぶん殴ってくるぞ。

とにかく、ありがとう、アンソニー。あなたのことは忘れないよ。

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