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【軍隊話】Keep yourself clean, soldier.

軍隊における服の洗濯

俺が知っている限り、兵士が洗濯するには2つ方法がある。

1、自分で手でやる。
2、金払って営内のクリニック業者に洗濯してもらう。

1でやる人は1%以下。シャワーを浴びる時間すら惜しいのに浴室でごしごしよほど暇なのか。それに脱水機もないから乾くまで丸一日かかる。なので兵士たちは大体2を選らぶ。

洗濯物を名前が書いた洗濯袋にぶち込んで、バケツに入れて集めると、業者がそれを回収して、翌日の午後、乾燥機で大量に乾かしたため熱が逃ぜず、またほのかに暖かい状態ぐらいで戻ってくる。

「じゃあさ、数人分の洗濯物をできる限り洗濯袋に詰めれば、一人分の料金でたくさん洗濯できるんじゃないか?」

来てたのかエンジェル。民間人らしいせこい考えだ。いいか、洗濯業者だってバカではない。迷彩服一式、運動着一式、あとは下着など。これが一人が一日で洗濯に出せる量だ。それを破ったらどうなるか、俺の実体験で教えてやろう。とある午後のことだ。

「おれの服をおまえの洗濯袋に入れてくれたよ~」「えっ」

隣ベットの班長が言った。志願役の士官の割には口を開けばMONEY、CAR、WOMANのことばかり。多分ヤンキーだと思う。

「班長、クリーニングに加入してないすか?」「まあそうだね。節約したくてね」

節約って。MONEY、CAR、WOMANのことばかり言ってるのにこういうところでケチつけるのか。

「そりゃちょっとまずいんじゃ……」「大丈夫だって!バレないって!」「でもよぉ……」「なんだ、レディー?俺の頼みを聞かないってのか?」

班長の口調が一変して、士官のそれになった。威圧してくんなよ、ビビるじゃないか。

「ワカリマシタよ……」「サンキュー!」

班長は自分の洗濯物を俺の袋に詰めた。

「待って、それじゃ男二人分の洗濯物が同じバッグに?うわぁ……自分で言い出したけど画面を想像してみたらぞっとするね。きっしょ」

軍隊に入ると対汚力が上がるという、服は臭くなけりゃいいだんよ。お父さんのパンツと一緒に洗濯したくない娘さんにはキツイか。

そして翌日、3日目も班長が俺のバッグを使って洗濯物を出した。そして4日になると、洗濯袋が帰ってこなかった。俺は慌ててクリーニング業界の窓口である洗濯委員に迫った。

「洗委!俺の服が戻ってないぞ!どういうことだ!」
「は?知らねえし。なん物はないんだよ。クリーニングに聞いてみたら?」

俺は憤慨し、班長とケジメをつけると決めた。

「班長、俺はクリーニングのところに行くんでこのあとのトレーニングにいけないい。排長に言っておいてくれ」
「なんだいきなり?態度がなってないぞ?」
「うるせえよボケが」
「あぁ!?」
「てめえのせいで洗濯物が戻らなかったんだよ(たぶん)!少し責任感を持ってたらどうだ?あぁん?」

 アクズメさん、人生のおいて初めて上司にキレた。後悔はしなかった。正義は当方にある。班長は驚いたように見えた。

「……責任感か、わかったよ。行ってくるといい」
「アザッス」

 クールぶって、俺は踵返してクリーニングへ向かった。まるで天地精霊が俺の勇気を讃えているみたいで、途中に軍官以上の上官と一切遭遇しなかった。

「すんません。出した筈の洗濯物が戻ってこなかったんですけど」

 目が鋭い痩せったおっさんがこっちを見て、およそ10秒ぐらい俺を睨んでから、やっと口を開けた。

「名前は何だ?」
「アクズメと申します」
「ああ、おまえか」

 おっさんが奥に行ってしばらく、洗濯袋をカウンターに叩きつけた。

「はいよ、おまえさんのだろ?」
「はい……あの、罰金とか、幾らかかりますか?」
「罰金はいらね。困らせたいからやってるんだ。カッカッカッ……」
「そうなんすか……アザマッス」
「二度と舐めた真似をするんじゃねえぞって、上官に言ってやりなよ兵士さん」
「アッハイ」

 俺はバッグを受け取り、クリーニングを後にした。さすが兵隊と付き合いの長い業者さんだ、よくわかっている。

 それから営内のコンビニに寄って、コーラを買ってその場で飲んだ。それ以降班長が洗濯強要することがなかった。アクズメさんの勝利。

バイオウェポン先輩

名前は忘れたが、体臭がきつい先輩がいた。

彼は演習の時に歩兵学校で訓練を受けていて、演習が終わる頃に装甲車の運転手に加わった。

先輩は太っていて、反応がどんくさて運動神経が悪く、どこが抜けている。シャバで上手くいかなくて軍隊に入るしか就職の道がないタイプだ。

先輩は先輩なんで、それなりに敬意をもって接しようと思っていたが、ちょっとした困難があった。

先輩はとてつもなく臭い。汗腺が発達してるのか、シャワーに入ってないのか、それとも両方か。彼の傍や風下にいると発酵が進んだチーズのような酸っぱい臭い鼻腔をレイプしてくる。

正直きついので彼とは距離を取るようにしていた。彼と同じ寝室の連中が同情で仕方ない。彼の体臭がそれなりの問題になっていて、BULLYまではいかなかったが、好かれていなかったのは確か。生理的に無理な相手は心理的にありなわけがない。

彼が今元気にやっているといいんだが。

「それだけ?先輩がやっと清潔に気を付けるようになって、アクズメさんと友情を築いた涙頂戴の話とかないの?」

悪いなエンジェル。この軍隊話に限って嘘はつきたくない。正直に話、先輩と一緒に駐車場で留守番していたの時のことを思い出すと未だに凹むぐらいだ。俺の嗅覚神経とメンタルに甚大のダメージを負わせた先輩を快く思うわけないだろ。

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