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どんな奴が職業軍人になるか

新兵訓練が終わり、部隊配属されて間もなく、我ら装甲歩兵連隊は志願役の新兵が配属された。

俺が兵役を服していた時はまた教育は中学校卒業までだった。三人の志願兵は中卒直後志願したため、年はおよそ15、16ぐらい。とても若かった。平均が大卒の義務役とは6年以上が年齢差がある。

年齢差があれど、同じ時期で配属されたので、一緒に雑用をやることが多かった。では彼らのことを紹介していこう。

A君:天性爛漫。子供っぽい言動が目立つ。子犬(軍営内で自然発生した野良犬)と遊んでいたら排長に「何やってんだ犬を捨ててこい」と言われたら、本当に子犬をゴミ箱に入れたやべえ奴。学校で変人扱いされそう。

B君:大人しい。言われた通りのことはやる。社交性に疎い。

C君:大人びている。平均20歳以上の義務役に舐められないようタフに振舞っているが、やはり歳相応の幼さがある。

ここで俺は考えた。16歳、普通なら高校に入り、楽しいそうで楽しくない学生生活の延長を楽しむ青春時代。しかし彼らは進学もしなければ、シャバで就職もせず、軍隊に入り、しかも士官ではなく、兵士として入伍した。今時の若者からすれば軍隊とか自由がないし仕事きついし上官の機嫌を伺わないといけないし。良い処というと国家が提供する食事と寝床、そしてコンビニのバイトより高い月給ぐらいだろ。

なので、青春歳月を軍隊で費やして兵士を志願した人間、よほどの理由があるんじゃないかと思った。

A君、B君、C君は、言っちゃあ悪いが、とても勉強ができそうなタイプには見えない。中学校で成績が悪いクラスメイトから感じたあの何とも言えぬ「俺には何もない」の雰囲気を彼らからも感じる。下手な三流職業学校に入り、チンピラに構われるより、軍隊に入った方がより未来が保証される。彼らとその両親はそう考え、入隊と決めたんだろう。

新兵以外に、先輩の志願兵も多い。言っちゃ悪いが、大半の志願先輩はとても勉強ができそうには見えない。とは言えやはり高ストレスの環境で磨かれただけあって頼もしい。山育ちの小柄先輩はマッチョでもないのに素手でリンゴをちぎり、鉄製のコーヒー缶を握りつぶすたといった離れ業を披露してくれた。今でも尊敬している。ABC君も数年立つと先輩みたいになれるかもしれない。

もちょっと上に行くと、士官学校から卒業して、部隊に配属された下級士官たちがいる。大体は班長からやり始める。こいつらは年齢が20~24歳で、ほぼ大卒の義務役と同じか、より若いか。階級を持っていながら、業務に疎いのでミスが多く、兵士にも舐められている。かわいそう。月給は志願兵より多い。でも上官に叱られるし、兵士にも尊敬されない。中間管理職の悲哀はこの階層に表れる。かわいそう。

そしてさらに上、軍官階層。日本語で言えば准尉及びその以上の階級だ。ここまで上り詰めた奴は相当の年功を積んでいる。強者が多し社交能力も高い。准尉排長の一人は人間を片手で吊り上げれるほどの腕力の持ち主だったそうだ。表で兵士に舐められるようなことはまずはないだろう。あったとしたら、そいつは命知らずのアホだ。休日取り消されるし腱鞘炎になるまで腕立て伏せやらされる。20年以上軍人をやって退役できたら国から終身奉が毎月振り込んでくるのでこれを目当てに軍人をやり続ける人が多い。

あとは上級軍官、少佐以上の階級だ。こいつらコワイ。人を食って生きているそう。もうやだ、関わりたくない。

結論:
国のために軍人になった人はあまり見ないが、金のために軍人になった人が多い。
そして銃を撃ちたくて入隊を考えている人がいたら、やめた方がいい。俺が一年の軍役で、実際撃てたのは最初の新兵訓練の時だけだった。それからはひたすら装甲車運転、メンテナンス、運転、メンテナンス、洗車、メンテナンス、運転、メンテナンス、溝から仮設トイレを引き上げるをやらされた。
銃を撃ちたいのなら、金を溜めてベガスのガンショップ、或いは警察試験を受けたり、ギャングに入ったりした方が早い。

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