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【剣闘日記】Not my style maybe

たらふくになった私は東京駅の東側に向かって歩きだした。二本のブリトーのエネルギーが凄まじく、シャツと上着二枚だけの薄着でも全く冷えることがない。目的地は勿論、この東京のローマだ。

「ついにこの日がきたぜ」

 私の横に赤い短髪の少女が前触れもなく忽然現れた。彼女はドゥーム、私のアイカツ自キャラ兼イマジナリーフレンド。今日はアーマーでも制服姿でもなく、剣に貫かれた髑髏を背中に刺繡したスカジャンとカーゴパンツといった格好だ。

「札の数は十分だよな?」「誰に言っている」

 現代社会において最強の武器、それは私の胸と尻のポケットにある。

「湊ォグッズを爆買いしてやる!」

アクズメさん:いい大人のアイカツ!プレイヤー。剣闘士マスター。アイカツ!からグラディエーター性を見出し、アイドル=剣闘士説を唱え、布教している。今の最推しは湊ォみお。

 決断的な歩みで日本橋口に突入した。サラリマンの数は丸の内改札と比べてかなり少ない、代わりにフランス語を操る白人男性集団が見かけた。親近感のある出で立ち、さてはナードだな?やはりここで間違いないようだ。すぐさま階段を発見。矢印はこの先が東京一番街と示している。

「いくぞ」「ああ」

 地下一階に降りて、ガシャポンとデーダカードダスが並んだ廊下を進む。突き当りで右に曲がる。まず目に入ったのはポケモンのショップだ。先週に新作ゲームが発売されただけ会あって人気がすごい。ゲームソフトも置いてある様子。

「おいマスター、横を見ろ」「……ワオ」

 東京一番街に潜んでいる小さなローマが、俺たちも目の前にあった。

「……よし」

 俺は歩み出し、店の前に飾っているラッキーガールの1:1パネルを横目で一瞥し、そのまま左に曲がって素通りした。

「どこいくねん!」「プフッ」

 ドゥームの鋭いツッコミ・チョップが俺の背中を叩いた。

「すまんな……ちょっと羞恥心が働いた」
「はぁ?何言ってんの?そんなもんデーダカードダスやり始めた時もうドブに捨てただろ?」
「俺は繊細なんだ」
「しょうがねえやつだなァ」

 30超えのおじさんがあんなキラキラとした店入るにはちょっと勇気が必要だ。俺はその場で馬歩を取り、丹田に意識を集中した。

「スゥー……ハァー……、スゥー……ハァー……」

 気が血管に伝って流れる画面をイメージし、ブリトーエネルギーを一本消費、内力と化して勇気の中枢に送り込んだ。これでOK。

「よし、今度こそ……!」

 振り返り、店に、踏み入れる!フゥー、やり遂げたぜ。

 気を遣ってくれたのか、店員からアイサツはなかった。それがいい、オタクというのは余計なプレシャーをかけると委縮するからな。店内はまあ、お世辞にも広くはなかった。商品はハンカチ、ペンケース、お箸やスプーンなど小物から作中のブランドをイメージした服やアクセサリーまである。商品からして狙う客層は子供、しかも女子の方。当然だよな、異質なのは俺の方だ。

 一通り見て、目当ての湊ォ以外に少なかった。最も欲しいアクリルスタンドが見当たらない。しかし、手ぬぐいやハンカチのたぐいは間に合ってるし、ましてや子供用のスプーンフォークセットなどで買ってどうするものかわからない。最後はカードバインダーを一つ購入した。

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 これだ。隣は一緒に入った小冊子。

「本当にいいのか?それだけ買って帰って」
「ああ、いいんだ。無理やり欲しくもない物を買っても禄なことないし」
「あっそう。あんたさえ納得すればこっちも文句ないわ。じゃああたし消えるね」

 現れたときと同じ、ドゥームはなんの前触れもなく、Deleteを押して文字を消すように消えた。俺はカードバインダーが入ったAikastsu! Styleのマークが入ったピンクのプラクティスバッグをかばんに突っ込んだ。持ったまま電車に乗るとさすがに恥ずかしいからな。

「さて、帰ってホテル近くの居酒屋で一杯やるか」
「一杯やると言った?あたしもいく」
「うお!?」

 ドゥームがまた虚無からスポーンし、酒精への渇望で目を輝かせて俺の肩を掴んだ。なんで俺のイマジナリーフレンドまで酒飲みなのか。

(終わり)

おまけ

小冊子の中身見てみよう。まずは表紙。

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アイカツ!のWAR、公式は分かっている。

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ナイトとヌーン、そして湊ォのポスターだ。

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こういうキャンペーンやっていた。2000円で一枚GETできるが、どうせ俺の国では使えない。理性の価値だ。済まなかったな湊ォ。

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リアルアーマーだ。女性のフォロワー方々は是非購入を考慮して欲しい。

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カードバインダーに附属したmapple Ribbonのカードだ。なかなか可愛い。しかし俺の国では使えない。

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