【閃光小説】ザ・ショー・マスト・ゴー・オン REAL side
2020年。ローマが滅んだ。
データカードダスから離れた俺は余ったコインを酒代に当て、飲みながアンタイBANDAI活動、略してアバカツを始めた。
俺から闘争を奪ったBANDAIが憎い、BANDAIと結託してデータカードダス筐体を輸入しては撤去するSEGAも憎い、俺の苦しみを知らずにBANDAIの最新コンテンツを楽しむ日本の人々すらも恨めしく感じる。HATE、SADNESS、ANGER……負の感情に浸り続け、酒の量が増える一方だった。
毎日毎日BANDAIの悪口ばかり言う奴に近づこうとする人はまず居ない。結局俺は自分をより孤独で惨めにしただけだった。それに気づくまで三年かかってしまった。
このままでは俺は心身がローマと共の歴史の中で葬られてしまう。考えを改めよう。なにもDCDアイカツだけが闘争ではない、稼働中のアイドルDCDは他にもある。
キラッとプリ☆チャン、それはタカラトミーアーツとシンソフィアの共同開発のデータカードダスおよびタツノコプロ製作のテレビアニメタイトルである。タカラとトミーがまた別々だった時代からお世話になっていた。ゾイド、ビーダマン、ベイブレード……どんだけのお小遣いを注ぎ込んだことか。そして最近はベイブレードバーストにハマって、ランダムブースターで月給の1割が消える現在。BANDAIとタカラトミーに搾取されてきた人生と言ってもいい。
データカードダスキラッとプリ☆チャンは3年前にサービス終了したアイカツフレンズと入れ替わるようにみなみの国で稼働開始。当初はローマ壊滅の悲しみから「絶対にやらないぞ!」と意地張っていた。
そして俺は今、それをやろうとしている。
9月4日、誕生日当日、決行。場所はよく通うおもちゃ屋。今日もポケモンポケモンガオーレの前に小さなお友達と大きなお友達が集まっている。みなみの国は現在ポケモンガオーレが一強の状態。プレイヤー人口は見た感じキラッとプリ☆チャンの十数倍がいる。
まあ俺には関係ない話だ。緊張を帯びた足取りでキラッとプリ☆チャン筐体に近づく。筐体の前で男が座っている。ゲームしているのではない、隣にスーパードラゴンボールヒーローズをやっている友人と歓談しているようだ。
「ちょっと失礼」
「あぁ?おう」
今日はタンクトップで来ている。さては俺の分厚い上腕三頭筋を見て怖気ついただろう。男は椅子を譲ってくれた。
「かたじけない」
椅子に座って、財布からコインを6枚取り出す。キラッとプリ☆チャンをプレイをプレイするには基本コイン3枚、記憶媒体なる会員証を作るにはさらにコイン3枚が要ると予習で把握している。まずはコイン3枚を入れる。ドゥルン、ゲームが開始する。
なんか道化師っぽい娘だ出てきた。彼女がこの作品におけるナビゲーション役か?まずはキャラ作成を選択。コインをさらに3枚入れる。
セルフプロデュースが試される時だ。まずは髪形から、闘争性重視でショートヘアにしよう。髪色はあまり選択がないな、じゃ自然に行こう。目の形もやはり闘争性を出すようにキツめで。メガネはなし。特徴もひとつ選べるのか?チークにしよう。
これで決定。赤いボタンを押してカードをプリントする。
新陳代謝のいい子が出来上がり。今日から俺の新しいチャンピオンだ。よろしく頼むぜ!
(後編に続く)
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