弘法ではない私の道具選び:ペンタブとCLIP STUDIO
4年ほど前からペンタブを使ってデジタルで絵を描き始めました。一般的な板タブと、ソフトはCLIP STUDIO PAINT を使っています。
絵は若いころアナログで描いていたものの、10年以上ブランクがあるし今更……と思いつつ、自作ゲーム素材のため必要に駆られて始めたものです。
イラスト制作を再開させた当初は「元々アナログ勢だしな」とライトテーブルを買い、鉛筆でコピー用紙に書いたものをトレスして、スキャナで取り込み、手持ちのphotoshopとマウスで色を塗っていました。着彩道具はアナログのものを持っていますが、散らかるのと、色選びが得意ではないため、トライ&エラーを繰り返せるデジタルがよい、と分かっていたためです。
アナログで描いていた頃の絵(着彩したものはデータ見つかりませんでした)
しかし、コピー用紙に書いたものをスキャンすると、裏うつりや汚れを取るといった作業が割かし大変です。効率の悪さをみかねた同僚が「今使ってないから」と自宅にあったペンタブを貸してくれることになりました。
ペンタブを買ったことで作業効率が一気に上昇
実は大昔、私も安いペンタブを持っていたものの使いこなせなかった(今思い返してみると強弱設定を受け付けない単なるマウス代わりのものだったようです)のと、手元見ずに画面を見て描くって無理じゃね? などと導入には消極的だったのですが、同僚が貸してくれたことであっというまに描く量が増えました。
当時初めてペンタブで描いた漫画(2016年5月末)
色だけでなく、線画もトライ&エラーできるやり方は素人の私にこの上なくふさわしく、食事を何度か抜くほどには没頭し、借りたペンタブだったのについに芯を一本使い潰してしまい(当時減るものだと知りませんでした)明らかに買い時となったため、少し調べて最新じゃない安いモデルをAmazonで早速購入しました。
環境の変化を畏れず、使い慣れたソフトから乗り換え
ネット上でペンタブの使い方や絵の描き方を調べていると、「マスク」の概念が私が知っているphotoshopのものと違うことに気づき、CLIP STUDIO PAINT(以下クリスタ)の安さと、photoshopの万能感と違いイラスト制作に特化した点に魅力を感じ、こちらも即DL購入。もともとデザインの仕事をしていたのでベクターやレイヤーといった概念を理解していたこともあり、なにより機能や操作が複雑な外国産のPhotoshopやIllustratorと比べれば覚えるのは簡単でした!!
Photoshopに比べてPC版クリスタは買い切りで数千円なので費用的にもオススメ
一昔前クリスタはそもそも存在せず、一般的にはSAIやPhotoshopでイラストを描くもの、として私も認識していました。実際、クリスタが登場した後でも、登場する前からSAIやPhotoshopを使っていた人たちが乗り換えられていない、というシーンを目にしたことがあります。私の場合は幸い?クリスタが登場して各種TIPS記事も十分充実したあとに絵を描くデジタルツールが手元に揃ったわけで「絵を描くなら教えてくれる人を探さないといない、何か調べるなら図書館で」といった時代から一気にタイムワープをかましたようなものでした。
特に新しいものが好きな性格ではありませんが「古き良きもの、慣れたものが一番!」「やっぱりアナログでないと暖かみが」などという感覚など「自分の技量と身の程にあった環境で作業できる」という魅力にねじ伏せられてしまいます。10年以上使ったphotoshopから乗り換えるのに何のためらいもありませんでした。
道具の使いすぎで手指を痛めるも、道具に助けられる
ペンタブとソフトが使えるようになり調子に乗って描きすぎたせいか、肩や手首を痛めることが増えてしまいました。ひどい時には1日2〜3時間描いた程度で痛くなるのです。これでは量をこなすことができない……調べてみると、絵を描かれている方は握り方やペンのカスタマイズなど色々工夫されているようです。いくつか試してみたものの効果は薄く諦めかけていたころ、追加で買っていたペンの芯がちょうど底をつき、なんとなく手持ちの芯と違うものを買ってみることにしました。
ペンタブの芯は使い続けていると磨り減ってしまうんですけど、手や腕が痛くなるタイミングが、新しい芯の使い始めよりも使い終わりに増えることが多かったので、もしかして芯がなんか関係ある? と気づいたためです。
芯は地味に高く、中には綿棒?などを削って代用する人もいるようですが、それじゃさらに手が痛くなったときかなり虚しくなりそうです。できる限りのことをやってみよう……と、選んだのがこの「中身が白くてフカフカしてるやつ」です。
「フカフカ」とは比喩で、実際には硬く、フェルトのような使い心地ではありませんが、板タブの上を滑らず当たりが柔らかいです
別に「これだ!」と信じて買ったわけではなく、そんな高価じゃないし、レビューもよいし、ダメだったらまた他のやつ買えばいいか、くらいでしたが、結果めちゃくちゃよくて、芯の減りが遅いのと、フカフカしているのでいいクッションになっているのか、手指が痛くなる頻度が激減しました。芯はどのみち買い足さないといけないものだから、数百円でこれだけの効果が得られるなら安いものです。
これを買ったのが2017年中頃でした。手を痛めることが減ってきたため、さらに調子に乗って描く量が増えます。
2017年11月頃作成 オリジナルゲーム素材 ペンタブ歴1年半ちょい
達人はどんな道具でもいいものを作る……弘法筆を選ばずと申しますが、同じ弘法さんの言葉に「良工はまずその刀を利くし、能書は必ず好筆を用う」というものがあるそうです。ネットで調べました。解説を噛み砕くと「イチローだってめっちゃバットこだわってるやん」みたいなことのようです。寿司職人が家庭用の包丁で料理してたら、それはそれですごいけど、大抵はお魚向きの包丁を毎日手入れして仕事しますよね。プロでもそうなんだから「ペンタブ・ソフトがなくても素晴らしいものが描けるはずだ!!」などと、素人の私は全く思いません。自分が作るゲーム素材としては圧倒的にデジタルデータが使いやすいし、描くための道具を買えるし使いこなせるんだから堂々と頼ります。
トライ&エラーできるため調子に乗ってレイヤーが地獄のように増えます
道具から入るかどうかは私の場合問題ではなかった
何かを始めるとき、道具から入るか、まず何か作ってから道具を揃えるか、悩むところかと思います。しかし私は確固として選び、悩みませんでした。
・同僚のレンタルによりペンタブが便利だと理解した
・ペンタブもクリスタも買える範囲の価格だった(両方で2万ちょい)
・日本語のハウツー記事やマニュアルが豊富だった(photoshopより圧倒的に)
・Q&Aでメーカーさんがちゃんと答えてくれている(何かあっても頼れる)
失敗したり描かなくなったとしても、損失は少ない。これだけのことがわかっていて、逆にデジタル環境へ飛び込まない理由が私にはありませんでした。
実際、4年前に初めて買った道具を使い続け、傷だらけにはなってきましたが、まだ壊れもせず現役でお世話になっています。
板は薄汚れ、ペンの塗装が剥げてきました
一方で、まだ液タブを買うほどじゃないな、という自覚はあります。
・液タブはめちゃくちゃ高い(20万円以上?)
・すごい場所を取る(デスクも買い換えなければいけない)
・板タブと使用感が違う(絵柄が変わってしまう人もいるらしい)
・なんかプロっぽい(私はプロではない)
これらと今自分がイラストにかけられる時間やコストを考えると、ちょっと無理だなという認識です。
もともと「イラストレーターになって飯を食っていくぜ!」みたいな気概で始めたものではなく「ゲームに必要な素材を描くのに揃えたら夢中になってしまった」程度なので、ゲームがバカ売れするないしイラストを描くお仕事(アテはありませんw)とかができて液タブとデスクを買えるくらい稼げたりしたら、そのとき改めて検討したいです。
2020年4月初旬制作 DQビルダーズ2の2次創作 ペンタブ歴まもなく4年目
私がアナログで絵を描いていた時代、画材を買うには電車に乗って百貨店に行く必要がありました。インターネットは今ほど便利ではなく、pixivやTwitterで上手な人の絵を探すことなんてできませんでした。今、私は板タブをAmazonで買い、数日後には届き、クリスタはDLで即座に使え、困ったことがあっても机上で調べれば大体解決します。いい時代です。活用しない手はないと思うのです。先達の集合知とデジタルの恩恵に感謝しています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?