#1

元気ですか。
こちらは気温がジェットコースターみたいになっていて自律神経が忙しそうです。
私はいつか君に相談していたみたいな忙しさからは解放されて、人や環境に恵まれたところで仕事をしながら、「多趣味で楽しそうだねえ」と言って笑ってくれたとおり、色んなことに手を出しながら過ごしています。

自分のことは、心底薄情な人間だと思って生きてきました。
浅く広く交友関係を広げるのは得意、でも世間でよく言われるような親友は、多分いない。
何でも話せる人、とか、いざという時に頼れる人、とか、あんまり、思い浮かばない。頼れる人がいなくて、とかそういうわけではなくて、まあ、友達なら誰でもいいかな、という感覚の方が近い。
皆大切な友達で、誰が一番とかそういうのはない。
お呼ばれした結婚式の数は30近く。友達が多いね、と言われる度に、そうかなあ、と思っていたけれど、最近はその通りだな、恵まれているな、と感謝することにしました。
でも、じゃあその中で仲良しの子は?と言われると、すごくすごく、悩んでしまう。マンガや小説や映画で、現実で、誰かを特別だと認めることのできる人たちを、心底羨ましいと思っていました。
思い返せば、小学校の頃から苦手だった。進級する度に学校に提出する書類に、仲良しの友達を書く欄があって、母親に聞かれる度に息が詰まる心持でした。子ども心ながら、いないと言ったらきっと母が悲しむだろうと思ったから。幼馴染の名前を入れておけばいいのだと気づいて、気は楽になったのをよく覚えています。
うん、振り返ってみても、自分のことは、薄情な人間なんだと、そう思います。

いつだったか、親友はいないかもなあ、とこぼした私に、「えっ!じゃあ私がなるよ」と言ったことを、君は覚えているでしょうか。
親友って自らの意思でなるもんなんだ!?と驚いている私に、「私はねえ、Aちゃんはすごく仲が良い友達だから、親友かな」と何でもないことのように言ってきて、そうか別に親友って双方の合意がなくてもいいんだな?と変に感心したりしました。
私のことを、変、と言っていたけど、君だって相当、変、だったと思います。

親友って、お互いがしんどい時にも頼りになって、こまめに連絡を取って、一緒に旅行にいったりして、近況も大体知っている、そういう人のことを言うのかと思っていました。
それで言ったら、私と君は、旅行に行ったこともないし、しんどい時はとりあえず自分で乗り越えて事後報告だし、連絡も年に1~2回くらいしか取らなかったので、親友ではないのだと思っていました。
可愛くて、とても賢くて、聡明で、芯があって強くて、でも脆い部分もたくさんあって、苦手なこともあって、私が多趣味なのに対してほぼ無趣味で、何か共通点あったかな?と今思い返しても思うけれど、何だかんだ、高校からずっと友達だった。

よく考えたら、それなのに友達でいられ続けたのって、すごいことじゃないか?
私は多趣味で割とフットワークも軽くて、趣味友達もたくさんいる。だから、趣味友以外は、基本的に属しているコミュニティが変われば疎遠になっていくのだけれど、どうして君とは友達でいられたんだろう?
facebookも、twitterも、instagramも知らないから、何となく近況を知っているわけでもないし、見かけて気軽にコメントして、じゃあ今度ご飯でも、となることもない。どちらかが意思を持って「会おう」と連絡をしなければ会わない人。
とびきり貴重な友人だな、と今書いていても思う。
ひとつは、距離が離れても連絡をくれ続けた君のおかげというのがあるけれど、メールを見返してみたら、帰省のタイミングで私が連絡するのは、地元の幼馴染より君が先だった。
クラスメイトだっただけで、クラスのグループは同じではなかったし、帰りの電車が同じだっただけの君と、少なくとも年1回、私が秋田に赴任してた6年間だって、会っていた。

好きだったんだなあ、と。
君のことは、たぶん、結構、かなり好きだったんだなあ、と。

趣味の話や共通のコミュニティの話題があまりなかった君は、まっさらな気持ちで会うことが多くて、会うまでは何を話そうかなと思うのだけれど、会ったら多分、普段とは違う私で話を出来る、そういう人でした。

神様のお気に入りは早く呼ばれてしまうと聞いたことがあるけれど、それにしたって早すぎて、今でも全然実感がわきません。
結婚したい~!と最近は会えばそればかり言っていた君の、結婚式での友人代表スピーチならいつでも引き受けたのに、まさか、Tと一緒に友人代表として君を見送ることになるとは、夢にも思っていませんでした。

四十九日の法要も終わって、立春を迎えて季節がひとつ変わるその前に、そうだこれからは手紙を書こう、と思いました。
私たちらしく、せいぜい年に1回か2回だと思うけど、「何それうける!」と笑って聞いてほしいです。

大事な、大事な、私の親友だった君へ。
心よりご冥福をお祈りします。

また、手紙を書きます。

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