生の六代目神田伯山を体験した件
とにかく色々なものを生で見たい!というライブ欲が湧きまくっている。生に飢えている。多分生レバー禁止のせいだと思う。
そろそろ日本のパンクスたちは生レバーの為に立ち上がるべきじゃないだろうか?反政府デモを行うべきだと日々考えている。
独演会・講談会などは即完売。寄席もなかなか都合が合わずで観そびれていた神田伯山。別に講談に詳しいわけでもないし、他の講談会に行くわけでもないのだが、松乃丞時代にラジオを通して知り、テレビでその講談を拝見した時に『これは凄い!』と思った。休みが決まってはスケジュールをチェック・・・時既に遅し(チケットは完売しました)を繰り返してた。
六代目神田伯山を襲名してからも、YouTubeなどでは観ていたが、どうしたって生で観たい。そしてその時がついに来た。予定が何もない休み、浅草演芸ホールで神田伯山の出番があるじゃないか!いずれ人間国宝になることが約束された男の今を、折角同時代に生きているのだから観ておくべきだ!と神の啓示だろう。
奇しくもその日、2024年の9月20日は大谷翔平が50本塁打50盗塁、いわゆる50-50を達成した日だ。こんな記念すべき日に、ついに生で伯山を観ることが出来る!テレビでその瞬間を見届け、さらに51-51を見届けて意気揚々と浅草へ向かった。
浅草は9月下旬だというのに茹だるような暑さだった。汗だくになりながら演芸ホールに辿り着く。木戸銭を払って中に入る。既に寄席は超満員。笑い声と拍手が鳴り響いていた。しばし後方で立ち見をしながら寄席の雰囲気を味わう。伯山の出番があるからだろうか、若いお客さんが多い気がする。笑いの発する独特な熱気が会場を包み込んでいる。やっぱり生は良い。
小休憩が入ったタイミングで真ん中の前方3列目に座っていた外国人の団体さんが退席。これはありがたい!と急いで着席。まさかこんなに良い席で伯山を観ることができるなんて幸運でしかない。日頃の行ないが良いのだろう。徳というものが出るのだなぁ。
いよいよ伯山登壇!鋭い目つきで客席を一瞥する。天才が持つオーラを全身に纏っている。その圧にゾゾゾーっと鳥肌が立つ。無茶苦茶に格好いいぞ!2階席にいる修学旅行の中学生イジリから始まった。あっという間に空間を支配する。それまでワイワイガヤガヤとしていた空気が笑いながらも『集中して聴くぞ』というピリッとしたものに変わる。
演目は江戸時代に実在した伝説の横綱、阿武松緑之助の『はらぺこ横綱』。中学生に合わせた演目ということだ。本筋と用語の説明、講談の歴史的なものもサラッと入れてくる。短い時間に凝縮された伯山の講談。大きな笑いの波が幾つも打ち寄せる。お客さんがグゥーっと集中し、次第に前のめりになって行く。完全に引き込まれている。まるで熱心な新興宗教のセミナーのように客席が熱を帯びていくがわかる。カリスマ性が爆発しているのだ。
話のピークで「そろそろお時間が・・・」、一瞬で緊張の糸が解れる。と、時計を確認し「まだ少しお時間あるようで、今日のお客さんは運がいいですね
」万雷の拍手。お客さんの『もっと聴きたい』を実現させ、心まで弄ぶようにコントロールする。凄すぎる。
そして恍惚の時間が終わる。万雷の拍手の中、最後もスッと立ち上がり、眼光鋭く客席を一瞥し舞台袖へと捌けていく。そこに笑顔や媚びはなく、当然満足感もない。孤高の天才、神田伯山。いずれ国の宝となる男。いや、すでに私の中では手の届かないとてつもない至宝だ。
10年後、20年後、そして40年後、どんな芸を見せてくれるのか。自分が生きている間は追いかけていきたい。素直にそう思える至高の時間だった。
From aleJJandro hiderowsky
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