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大河ドラマ「光る君へ」をみました。〜「史記」の登場と「大鏡」の伏線に心躍る!

 昨日、大河ドラマ「光る君へ」を見ました。

 前々作「鎌倉殿の十三人」も、前作「どうする家康」も、授業で中高生に紹介してきましたが、今回もぜひ紹介したいドラマになっていました。

 歴史教員としては、『史記』が出てきたり、『大鏡』の伏線が描かれたりと、興味の尽きない内容でした。

 僕が気になったのは、まず、司馬遷の『史記』、秦始皇本紀を朗読する場面があったことです。主人公まひろの父藤原為時が、まひろに司馬遷の『史記』を読んで聞かせる場面でした。

 当時の日本では、漢文の教養が重んじられていましたし、紫式部や清少納言の作品にも、漢文の影響が色々と見て取れるので、これは良い場面だと思いました。

 ただ、当時『史記』を書き下し文で読んだのかという点には疑問が残ります。10世紀に、書き下し文で漢文を読むことがどの程度行われていたのか、調べてみようと思いました。

 それから、高校古典で学ぶ「花山院の出家」を覚えている人はみんな同じことを思ったと思いますが、登場人物が、『大鏡』の「花山院の出家」の伏線のような展開になっていました。

 主人公まひろの父藤原為時が、東宮(のちの花山天皇)に漢文を教えにいく場面がありました。これは史実のようです。

 また、道長の兄の藤原道兼(腹黒い政治家だと思いますが、めちゃくちゃ悪役に描かれていましたね・・・)は、「花山院の出家」に登場する粟田殿です。

 そして安倍晴明も登場しましたが、この安倍晴明は、「花山院の出家」で花山院の一行が安倍晴明邸の前を通りかかった時に、「帝王おりさせ給ふと見ゆる天変ありつるが・・・」と発言する人物です。

 実は、この場面、僕は高校生時代に習った時のことをよく覚えていて、「これって藤原道兼と安倍晴明はグルだよな。わざと家の前を通るときに、陰陽師にそう言わせているのではないか」と子供心に思った場面なのでよく覚えているのです。

 安倍晴明が、陰陽師として「帝王おりさせ給ふと見ゆる天変ありつるが・・・」と言っているところを偶然粟田殿と花山院が通るったことになっていますが、わざと安倍晴明がそう告げるのを聞かせて花山院に抵抗を諦めさせる策謀ではないかということです。
 
 花山院の出家の場面が、ドラマでも前半のうちに描かれると思いますので、楽しみにしたいと思います。

 他に、源氏物語の場面がオマージュとして描かれているのかな、と思う場面がありました。

 これは、意識していないと気づけないかもしれません。一緒に見ていた家族は、ただの少女漫画みたいな展開だと思っていました。まひろが、鳥を追いかけていき、三郎(道長)と出会う場面です。

 ここは、『源氏物語』の「若紫」の「雀の子を犬君が逃がしつる、伏籠のうちに籠めたりつるものを」の部分をそのまま描いている印象を受けました。若紫と光源氏が出会う有名な場面で、まひろと三郎の出逢いに使われていたのでしょうか。粋な設定というか、面白いなと思いました。

 残念な点もいくつか。

 まず、現代の価値観が反映されてしまっている点。

 これは「鎌倉殿」や「家康」でもそうでしたが、どうしても主人公のよってたつ価値観を現代のものにしなければならないためか、当時の価値観を描ききれていません。

 北条義時と政子は、権謀術数の権化のような人物のはずですが、いい人に描こうとしているので、後半の権力奪取の展開が不自然になっていました。徳川家康も同じです。

 今回は平安時代なので、男性が複数の女性と関係を持つのは当然と考えられているはずですが、そこに違和感があるように描かれています。

 ドラマはあくまでドラマで、歴史の再現ではないので仕方ないのですが、もう少し当時の価値観を描き込んでもいいのかなと思います。

 それから、名前を呼びすぎでは?、という点です。

 人々が平気で名前を呼び合っていて、ラストの衝撃の場面の後にも「ミチカネ・・・」という場面がありましたが、当時は本名を気安く呼ばないはずです。

 ドラマなので、名前を呼ばないとわかりにくいのかもしれませんが、ちょっと違和感があります。

 まあ、この辺りはあくまでドラマですので、歴史教員が堅苦しいことを言うのはやめにしておきましょう。

 他に、古典や日本史の知識がないと十分に楽しめないのではないかという部分も気になります。前述した『史記』を読む場面の意味や、『大鏡』の展開、そして何より『源氏物語』の場面が使われていることなど、知らないと知らないまま見過ごしてしまいます。

 実際、僕も、世界史教員なので、日本史や古典の先生が気づいていることを気づかずに見落としているかもしれません。

 実際、家族は、なんの背景もないただのドラマとして、同じドラマを見ていました。(なので、話が合わない・・・)

 本来なら『源氏物語』を読んだことがない人にもわかるように、ドラマで描いて欲しいところですが、今回は視聴者が、高校の古典で学ぶ程度の知識は知っていることを前提に描かれていくのかなと思います。

 色々書いてきましたが、今後の展開が楽しみです。

 

 

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