グランクレストのデータを作る

はじめに

これは「グランクレストRPG」のオリジナルデータを作る人向けのデータ面でのもろもろについて書いてある記事です。

権利表記

これは、「矢野俊作/チームバレルロール」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『グランクレストRPG』の二次創作物です。
内容は『上級』までを踏まえて書いてあります。

表記法

この記事では、公式のルールブック、サプリメントと同様の略号を用いてルールブック、サプリメントの名称表記を省略しています。また、各項目の読み方に関しても公式と同じ読み方をすることを想定しています。
ルールブックとルールの区別を行う際には、ルールの側を「」をつけた表記で、ルールブックを『』をつけた表記で行うことにしています。
補足に用いたルールなどは、その初回の登場時に著作者を表記しています。

特技

特技の基本は係数3
これは、一部のデータを除いて、攻撃力や防御力などが特技1レベル分で3点上昇するということです。
(【最大HP】【最大MP】【行動値】【移動力】などは例外である)
なお、1Dや〈技能〉レベルも3と同様として扱われています。
そのため、データのデザイン上では、
ダメージに+[LV×3]
ダメージに+[LV]D
ダメージに+[LV×〈技能〉レベル]
というのが等価です。

係数3以外の係数
【能力値】:だいたい係数3を二つ、つまり6程度の扱いです。
【能力基本値】:【能力値】を三つの扱いです。
混沌レベル:係数3を二つで混沌レベルになっていることが多いように感じます。
CL:かなり特殊ですが、取得時の最低レベルなどが考慮されているかもしれません。

係数3ではない数字が使われるもの
【最大HP】:係数5ぐらいです。
【最大MP】:係数5ぐらいです。
【行動値】:係数3ぐらいですが、怪しいです。ついでに上がることが多いこともあり、3ではなく2~4という表現が合っていそうです。
【移動力】:+1は珍しいです。基本値を上昇させるものなどを踏まえると、【移動力】の1点は特技2~3レベル分ほどの価値がありそうです。

例外的なデータ

特技には、取得して欲しい特技や制限のあるものなど、あえて強力に設定されているものがあります。
例えば、防御向きのスタイルではカバーリングやガードの対応範囲を広げる特技などがこれに該当しやすくなっています。
例を挙げるなら、パラディンの《光盾の印》や《庇護の印》がこれに該当します。

これに加えて、「グランクレスト」では1レベル目、3レベル目にボーナスが付いているケースが多く見られます。
1レベル目はコストやタイミングなどの問題で、単純にレベルを上昇させるよりも不便になりやすいからという理由が考えられます。
だかといって、強いからと1レベルの特技ばかりだとコストが厳しいので、3レベルにも追加のボーナスをつけているのかもしれません。
そして、5レベルにボーナスのある特技が少ないため、だいたい3レベルで止めることになるようになっています。

例えば《疾風剣の印》がこの例であり、1レベルと3レベルにそれぞれ命中+2がついていますが、5レベルには付いていません。
もし、5レベルに何らかの有効な効果があれば、ダメージ上昇の効果もあるので、積極的に取得する候補となりますが、5レベルに追加の効果はないのでそうなっていないのです。
ここでは、5レベルに効果を設定するかによって、データのデザインが特技構成を誘導しています。

この例を踏まえて、デザインの際は、どのような特技の構成を行わせるかを想定し、複数種類の特技を取得させたいなら、3レベル目でのボーナスをなくし、ひとつの特技のレベルを高くしたいなら、5レベル目にもボーナスをつけるというようにするといいでしょう。

魔法

魔法は特技と異なり、そのレベルと使用可能魔法レベルでの変化があります。

基本的に、5レベルまでの魔法によるダメージは、範囲1以上(十字か直線)を攻撃するもので以下に近いものとなります。

[魔法レベル×2]D+【能力値】+[魔法レベル×混沌レベル]

5レベルまではこの形でおおよそのダメージが変化しますが、6レベル以降は変化します。
また、範囲が単体の場合はレベルが1高いぐらいの攻撃力を、範囲が広い場合はレベルが1低い程度の攻撃力とするといいでしょう。

6レベル以降ではダイスの数があまり増えず、代わりに混沌レベルに応じてさらにダメージが上昇(だいたい[混沌レベル×4]を加えます)したり、強力な追加効果の付与(場合によっては天運を持たない対象を即死させたり、天運を持っていてもほぼ無力化される)や対象の拡大(起点から2Sqなどの超広範囲化)が行われます。
言い換えれば、レベルが上がるごとに、ダメージ上昇、えぐい追加効果を付与、対象の拡大、対象を単体にしてダメージを2段階(つまり、[混沌レベル×8]相当)上昇させるといいでしょう。
7レベルを超える辺りからは、たいていは対策なしで発動されると死ぬことになります。エネミーなら発動までに時間がかかるような仕掛け(累積詠唱、《リチュアルモーション》《魔歌》など、ただし、いずれも猶予はあまりないので、オリジナルで用意してもよい)を使うようにして、ギミックの一種として扱うようにしましょう。

また、8レベルからもだいたいこの基準ですが、この辺りでは調整をまともに考えてはいけません。このレベルの魔法はどちらにせよ発動すると死にます。インパクト重視で行きましょう。

目標値とコスト
レベル1などの特殊な例や、累積の魔法を除くと、だいたい以下のようになります。

目標値
6~8×魔法レベル前後

コスト
8×(魔法レベル-1)前後

この前後というのは、特別なことがない限り、魔法レベル分数値を上下させるぐらいにしておきましょう。
また、レベル1の魔法ではこの基準は当てはまらないので注意しましょう。

エレメンタラー……
上の基準でいくと《ファイアボール》や《バーストフレア》は目標値とコストが厳しく、プロフェットの《ライトニングボルト》が標準となります。
ただし、ダメージを増加させる特技の多さなどによってより高いダメージになることなどを考えると、妥当なのかもしれません。

ダイスは10個まで?
元々、「グランクレスト」が出た頃はオフラインセッションの想定も大きかったので、ブレイクスルーのようなデータ(偉業特技やCL制限のあるデータなどを除いた)単独のデータでのダイスを10個までとした可能性があります。
もしそうなら、他のデータ、特にエネミーデータなどでもひとつのデータでダイスを10個以上振るというのは印象的で特別なものとなります。
特別な攻撃などにのみとどめておきましょう。

他のデータの効果を含めてなら10個ぐらいのダイスを振ることもあります。それを踏まえると、15~20個ぐらいを基準としてもいいでしょう。
しかし、これでもオフラインでは少し厳しいものとなります。

手元にダイスがたくさんある人は20個ぐらいを手に取って見るといいかもしれません。
16mmのダイスを20個持つとなかなか厳しいはずです。手の小さい人なら一度に振ることが難しいかもしれません。

投影装備とアーティファクト

投影装備には二つの考えがあります。

アーティファクト
レベルと必要カウントで変化するアーティファクトの強さは、考えてはいけません。

投影装備
投影装備は、重量を基準として、その重量の装備から特技1~2個分強化するという考え方と、重量に関わらず、装備を特定の強さまで強化するという考え方ができます。

重量が重いほど筋力による所持可能重量での制限の影響があるので強いというように設定することもできますが、回避修正や命中修正のこともあるので、投影装備に【筋力】以外でダメージを算出するものがあることも踏まえると、実際には公式と別基準を設けたほうがバランスはよくなるでしょう。
この辺りには数値にしづらい要素も多いので、基準はそれぞれのデータ、仕掛けごとに考えることになります。

インフレ

オリジナルデータを作る際に気にすることが多いのが、「このデータは強すぎるのではないか」ということですが、それを気にするような人は、それをあまり気にしなくてもいいでしょう。
それは、いろんな理由でデータは既存のものよりも少し強いぐらいがちょうどいいからです。

相対的ナーフ

相対的な弱体化です。他のクラスやスタイル、特技などを強化することで、特定のクラスやスタイル、特技などを弱体化させます。
例えば、ウィザードが強いから他のスタイルに専用の特技を追加することでウィザードを弱体化させると、それは相対的ナーフとなります。
通常のナーフ(弱体化)と比べると、ユーザーへの不快感が弱いというメリットがありますが、変更するデータや追加するデータが多くなるという問題や、インフレの要因となるという問題があります。

データの魅力

強さをひとつの魅力としたときに、新しいデータが弱いために、選択肢から外れるという問題があるので、インフレの要因は相対的ナーフだけではありません。
ギリギリの調整にすればするほどこのようなことが発生しやすいため、実際には使ってもらえるように少し強くすることが多くなります。
このような状況などでインフレの基準を考える際は、想定している環境において、相対的ナーフになるぐらいと認識しておくとようでしょう。
つまり、オリジナルデータはちょっと強いぐらいがちょうどいいのです。

最新のインフレ環境である『上級』を踏まえた強さとは?

そうなると、『上級』を踏まえた強さという基準が登場します。
例えば、マイナーアクションでダメージに+【能力値】するという効果では、《鋭刃の印》で条件が合えば追加の効果がある程度でしたが、《豪壮の印》の登場で、クラス特技でさえ《豪壮の印》の強さが基準となりました。スタイル特技ならその上を行く必要があるため、さらに強いものが必要となります。
具体的なことを言うと、条件なしにダメージに+【能力値】に追加される効果が必要です。
そんな強力な特技に対して、その上を行き、使われるデータというのを考えると、インフレを気にしつつ作った特技では多少暴走しても、気にするようなものにはならないことのほうが多くなります。

オリジナルデータのバランス

それでもバランスを気にする場合となると、以下のような解決手段があります。

スタイルの動き(クラスロール)

いわゆるコンセプトというものです。
このコンセプトの時点で、同じ場所で競争させないことで、それぞれを活躍させるという考えを基本とすれば、バランス調整の甘さをごまかすことができます。
これは、そのスタイルがデータによってどのように動き、どのようなアクションを行い、どのような役割を果たすのかを考え、できることとできないことを作ることで、それぞれのキャラクターを活躍させるというもので、オリジナルデータを作る前に、普通にGMやPLをする上でも知っておくとよいものです。
ただし、コンセプトによる調整が機能するかは、GMの裁量や敵のデータによる影響もあるため、ゲームを構築するいくつもの理論の中に、クラスごとの役割(クラスロール)というものがあり、それを意識してデータをデザインすることで、多少のおかしなバランスは無視できるという程度に考えればいいでしょう。

自分以外へのメリット

特定のキャラクターにのみオリジナルデータを渡す際に、不公平感をなくすとなると、それが、それぞれのアクションにマイナスの影響を与えないものにするという手段があります。
これもクラスロールに基づいたもので、攻撃を行うキャラクターが攻撃を行うモチベーションを失うと、楽しさが薄れるという理由があります。

特定キャラクターの与えるダメージが上昇し、効果的に攻撃できるキャラクターが制限されるというのもこれに含まれます。
これは、相対的ナーフによって、特定のキャラクター以外の攻撃が弱体化され、効果が薄くなった結果として、プレイヤーが攻撃を行うことのモチベーションを失うからです。
これを、特定のキャラクターの攻撃の後、攻撃が通りやすくなるとすると、最初に特定のキャラクターが攻撃するように攻撃順を工夫するだけなので、モチベーションへのマイナスを少なくしつつ、特別感を出したり、普段とは違う流れを作ったりすることができます。

上位互換と下位互換

上位互換と下位互換は、インフレとクラスロールの二種類の理由でよく発生することがあります。
インフレによるものというのは、単純にそれまでの係数が3の状態で、追加されたデータの係数が4の場合、古い特技(係数3)が新しい特技(係数4)の下位互換となり、その存在意義が薄れるというものです。
場合によっては後から出たデータのほうが下位互換(《猛連の印》と《光弾の印》《光槍の印》)ということもありますが、稀です。
このようなものはすでに公式のデータにも存在しているので、深いことは語りませんが、喜ばれるものではありません。

オリジナルデータを作る際に、下位互換になってしまったデータを強化する特技を追加するというのもいいでしょう。

最後に

グランクレスト以外でも使える内容もありますが、だいたいこんな感じで、あとは質問されたり聞かれて考えると出てくるとかの意識していないものとかが多くなっていきます。
ただ、ここに書いてある内容はあくまで参考のひとつです。
オリジナルデータは自由に作ってかまいませんし、それぞれに考えがあってもかまいません。
むしろ、それがおもしろさにつながることもあります。
気軽にオリジナルデータを作ってみましょう。

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