推しがいない世界は余生だった。

ただ空を雲が流れていく。



(これを書いたのは2021年の春、『推し、燃ゆ。』に影響を受けて、自分のその時の感情を書き出したものです。

激重だし独りよがりな内容なのでずっと公開を躊躇っていたけど、自分の気持ちに少し整理が付いたこと、これからこの感情が変わったらいいなという希望を持って、今このタイミングで公開してみようと思います。)





欅坂46とのお別れからもう5ヶ月が経つ。


あれからというもの、私の人生はなんら変わりなく日々を淡々と過ごしている。
昼過ぎを起きて適当なごはんを食べてテレビは付けるけど携帯に夢中になっている。

そういえばこの前、お気に入りのゲームのレベルは183にまで達した。適当に時間を潰し、同じ服を着て同じ場所で淡々とバイトをこなす。同じ場所に帰って同じ部屋で、時間は違えど同じように眠る。



なにも変わらない。



ただその中でひとつだけ明確に変わったこと。



私から感情が消えた。



はっきりとそう思う。

何を見ても、何をしても感動しない自分がいる。

このままではマズいと、たくさんの人に会いに行った。たくさんの場所へ行った。
用もない降りたことのない駅で降りてみたり、インスタで見つけたお洒落なカフェに行ったり。好きだった人達と自分が大好物だと言っていたものを食べた。


あ、これかも、なんて思う出会いもあったし、一瞬自分の視る世界に色があるような気がした時だってあった。

けど、そのどれもが瞬く間に色を失った。




別に拒否したいわけではない。
今、私には好きになりたいものがたくさんある。周りの人をもっと大切にしたいし、彼氏だって欲しい。食べることを楽しいと思いたい。自分自身だって好きになりたいし、改名した櫻坂46のことももっと好きになりたい。

けれど、そのどれかひとつでも許してしまえば、欅坂46を好きでいられない気がした。




欅坂は、私自身だった。


14歳の頃、センターに立つ同じ髪型の少女に自分を重ね合わせたあの日からずっと。


人混みに紛れているだけの自分を変えたいと思った。
世界には愛しかないと信じていた時もあれば、世界中が敵になってアイデンティティを否定されたように感じることだってあった。
一人でいたいのに、誰かに声をかけて欲しいと願うこともあった。


『僕』の、あの子のどの気持ちもリアルタイムで痛いほどに共感した。自分の意思で似たのか、あちらから歩み寄ってきてくれたのか、ただの偶然か。


いや、そのどれもが正しかったのだ。共鳴していた。お互いがお互いに影響しあったのだと思う。



だからこそ、『僕』の結末が知りたかった。
もっと言ってしまえば、『僕』の居なくなったあとの世界がどう変わってしまうのかに興味があった。
彼女が辞めたとき泣かなかったのは、きっとそれを知れるワクワクが心の隅にずっとあったからだ。



しかしその結論は、足を止めることだった。




泣いた。たくさん泣いた。泣くことしか出来なかった。


いつだって私達には事後報告だった。
ステージに立つ者と客席に座る者の距離はそれなりに離れているべきである。
そんな風に考えていたから、この距離感を丁度いいなんて昨日まで思っていたはずなのに、この時は、この時だけは、この壁が憎いと思った。



10月、2日に渡って行われたラストライブ。
これまでの5年間を凝縮したかのような時間。

この5年間、たくさんの衝撃を受けた。彼女たちの登場の仕方はあまりに鮮烈的だった。そのインパクトが強すぎたせいで、下積みがない、努力していない、なんて心無い言葉を浴びせられた。しかし彼女たちは屈することなく、その後も「今」だけを大切にしてきた。過去を振り返る間も与えず、未来を予測させることもなかった。1秒後の未来すら見せない彼女たちの不安定さに人々は目を奪われた。


そんな閃光のような瞬間を私はずっと見ていた。鳴り止まない雷鳴の中、ひたすら自分自身を照らし合わせた。


ゆっくり過去を振り返られるようになった今、思い返してみれば、欅坂と共にした5年間は苦しさに溢れていた。

仲間に『欅坂をやってて楽しい?』と問う彼女には悪いが、私は欅坂に対して楽しいという感情を持ったことは1度もない。いつだって苦しかったし、泣きたかった。苦しい時こそ好きでいられたし、孤独になればなるほど欅坂が大事だった。 


欅坂を好きでいられるなら、不幸でいたい。


感情を取り戻そうとして起こした行動は、どれも幸せになれる方法だったと思う。近くの人を大切にする、自分自身も大切にする。


でも私は、幸せになることが欅坂から遠のくことであると分かってしまったのだ。

不幸さと比例して欅坂を愛していた自分はいつからか、幸福から逃げるようになった。

幸せの匂いを嗅ぐと、自分から遠ざかるようになったのは、それに気づいてしまったからだ。



空を眺めている。

今の私の生活に不満はこれっぽっちもない。

ただ晴れた空を見て、雷鳴を恋しいと思う。

穏やかな日常より、もがき苦しむあの日々に戻りたいのだ。

今よりもっともっと深い悲しみに飲み込まれてしまいたい。






自分よ、自分を大切に出来なくてごめんね。

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