牛カツ(山陽道 龍野西SA下り)
関東で「カツ」と言えば「トンカツ」だが、関西では「牛カツ」である。
理由は諸説あるものの、牛馬などの肉食を嫌った江戸の武士階級と、それを気にしなかった庶民の好みの違いが影響しているのだろうか。
山陽自動車道を西へ、姫路を過ぎ、赤穂市へ入る少し手前の龍野西SAに、その牛カツはある。
しっかりと胡椒を効かせた神戸牛を、分厚くレアで揚げる。これはトンカツで決して真似できない料理法だ。
そして、牛カツに欠かせないのがたっぷりかかったデミグラスソース。牛肉の旨みを最大限に引き出している。
牛肉は安土桃山時代から江戸時代にかけて食べることが忌避されてきた。豊臣秀吉もキリスト教の宣教師たちが牛肉を食べることを一つの理由として吉利支丹禁教令を出したほどだ。
しかし、江戸時代には彦根藩井伊家が代々「赤斑牛(あかぶちうし)」を飼育し、牛肉の味噌漬けを薬として将軍家や大名へ贈っていた。贈られた側も大層喜んで食べていたようで、かの水戸斉彬公も好物だったようだ。井伊直弼が水戸浪士達に討ち果たされたのも、井伊家から水戸徳川家への牛肉の献上が止められたからだという説もあるとかないとか。
たまには美味しい牛カツをいただきながら、そんな歴史に思いを馳せるのも悪くはない。