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会ったことのない 祖母からのプレゼント

96歳で亡くなった 義理の祖母が住んでいた家を整理している

5年程 空き家になっていたこともあり
もうすごい埃と物の多さで
うひょーーーっ!!と何度も叫んでしまう

それでも、どんな人だったのかなぁ
と思いを馳せながら、なんだかんだ楽しかった


そんな中で見つけた小さな赤いプラスチック製の箱
開けてみると、片手に乗るくらいのアイロンが入っていた

スチーム機能なんてないし、熱さを調整するダイヤルもない
入/切 だけ
働くか 休むか、それだけだ
ここまでシンプルなアイロンはみたことがなかった
埃っぽい 窓も開かない部屋で 私はウキウキと小躍りした


昔のものの美しさ

高機能の家電もいいけれど、
わたしの暮らしには古びたものが合っている
なんだか 流れている時間が近いからだ
工夫する心の余裕も与えてくれる


お気に入りのオイルを入れたボトルで
しゅうぅと霧を吹き、
クンクン嗅ぎながらサンルームでアイロンをかける


誰かのアイロン というより、祖母のアイロン
ということが余計に嬉しかった
祖母の生きてきた暮らしとわたしの暮らしが繋がれて
わたしの根っこを増やしてくれた気がした

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アイロンをかける
どんどん 自分の芯に近づき、静かになっていく
手仕事を愛する人は この静かな時間を知っている人だ

世の中は変わりやすく、この先どんな状況になるのか人間にはわからない
それでも、この静かな時間は変えられない
祖母の頃も、祖母の祖母の頃にも流れていた時間
この流れ続けている時間に、わたしはいつでも還ることができる


今日も、なかなか伸びないシワは まぁいいかと見逃しながら
アイロンをかけた服は 着心地も違うね と褒めてもらい
したり顔でわたしはアイロンをかける

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