私たちはどうつながっているのか

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スモールワールド

・ワッツの定義

→クラスターが多く、六次の隔たり(短い距離)をもったネットワーク

・ミルグラムの定義

→六次の隔たりをもったネットワーク


本書ではワッツの定義をスモールワールドとしている。


・六次の隔たり

世界中の人々は、6人を介した距離で繋がっているという理論。1967年のミルグラムの手紙の実験、2002年のワッツらの電子メールの実験などで示された。自分と赤の他人までの距離が6、つまり全く無関係で国籍すら異なるAさんとBさんを例にした場合、Aさんの知人の知人の知人の知人の知人の知人の知人がBさんである、ということを示している。


・ コミュニティーとクラスター

人は誰しも、職場、家族、自治体、趣味仲間など、様々なコミュニティーに属している。その各コミュニティーの中においては、各人の繋がりが密になっており、自分の友人のAさんとBさんは、友人同士である、というような、ネットワークに三角形(クラスター)が多い。コミュニティーやクラスターは、所属意識を生み安心感を与えるほか、誰かが欠けたときに、連絡が遮断されないという利点がある。また、クラスター内では個人の利己的な振る舞いが抑えられ、協力関係が結ばれることが多い。


各自が複数のコミュニティに属していることで、近道が存在し、六次の隔たりが実現する。


・弱い紐帯の強さ

密接に繋がったコミュニティー内の友人よりも、いつもはあまり接触の無い知人を通して、有益な情報がもたらされることが多い。例えば、同じ大学の研究室仲間で就職活動について情報交換していると、その内、各人が同様な情報を持つようになり、価値観も近くなるため、新鮮な情報やコネには出会えない。だが、普段はあまり連絡を取ることのない、旧友や、先輩は、異なる環境で生活しており、異なる価値観やコネなどを持っているため、有用な情報を運んでくることがある。一見弱い繋がりが、情報を運ぶ上では強い力を発揮する。


・ スケールフリー・ネットワークとハブ

人間関係のネットワークでは、ほとんど繋がりが無い人もいれば、非常に多くの繋がりを持つ人もおり、その格差は非常に大きくなりやすい。多くの繋がりを持つ人はネットワークが成長する際に、優先的選択を受け、より多くの繋がりを持つようになる。例えば、ある会社の部署内に新入社員が入ってきた場合、新入社員たちは、最も顔が広い人が、今後、情報の獲得やネットワークを広げる際に最も有力であると判断し、知り合いになろうとする。これにより、顔の広い人の知人の量は飛躍的に増大し、一方、あまり知人のいない人は新たな知人をほとんど獲得できない。この、ネットワーク内で非常に多くの繋がりを持つ人のことをハブと呼ぶ。


人のネットワークは、パレートの法則に従い、スケールフリー・ネットワークと呼ぶ、人のネットワークは、スモールワールド・ネットワークだが、必ずしもスケールフリー・ネットワークとは限らない。


BAモデルでは、ネットワークの成長と優先的選択によって、スケールフリー・ネットワークが作られる。スケールフリー・ネットワークを作る方法は、ほかにも知人紹介モデルや隠れ変数モデルなどがある。

・ ハブになるための3要素

・個人の能力

→有利に知人を増やすためには、外交的であることや、魅力的な要素を持っているなど、能力が重要である。

・先住性

→最初からネットワークの内部にいる人は、知人の獲得のチャンスが多い。

・運

→ネットワークに新たに入ってきた人が、たまたまAさんと繋がった場合、Bさんとの差が、僅か1の差だったとしても、優先的選択により、次に入ってきた人がAさんと繋がりやすくなり、AさんとBさんの知人の数の差はどんどん拡大する。


ハブは人間関係の維持にかける時間とエネルギーが膨大に必要であり、利点だけでなく、コストも大きい。


・ ネットワークの中心

ネットワークの中心を測る基準はいろいろあり、どのような中心性がいいかは目的による。

次数中心性

→ネットワーク内の各人の枝の数を比較し、最も枝の多い人、つまりハブを中心とする方法。枝が最も多くても、ネットワークの端に位置し、逆サイドの人まで何ステップもかかる人など、いわゆるお山の大将も存在する。

近接中心性

枝数が少なくても、ネットワーク内の全ての人まで短い距離で到達できる人を中心とする。

媒介中心性

あるコミュニティーとあるコミュニティーを結ぶ媒介となる唯一の人がいた場合、枝の数や距離に関係なく中心とする。この指標では、橋渡しの度合いを測ることができ、媒介中心性が高いとコミュニティー間の情報の流れをコントロールできる。

ランダムウォークに基づく中心性では、最短距離よりも気まぐれな道筋で流れる情報を中継している人が中心的であり、媒介中心性に近い。


・ 情報のランダム・ウォーク

コミュニティー間を、AさんとBさんが繋いでおり、どちらのコミュニティーとも繋がっていないが、AさんとBさんの両方とは繋がっているCさんがいたとする。この場合、Cさんは中心であるAさんやBさんに次いで重要な地位を占めているように感じる。これは、情報は必ずしも最短距離を通らず、ランダムに進むことが多いために生じる現象である。つまり、コミュニティー間で情報を伝達する場合、情報はAさんBさんを通過する際に、幾分かがCさんを迂回して伝達される。この場合、Cさんは、AさんBさんに次いで高い中心性を有することになるが、この指標をランダム・ウォーク中心性と呼ぶ。この中心性は、情報がランダムに永久にネットワークを彷徨う時、次数中心性と一致する。


目次

第1章 人のネットワーク

第2章 世の中はスモールワールド

第3章 6次の隔たりを使う

第4章 クラスターを使う

第5章 世の中はスケールフリー

第6章 スケールフリーを使う

第7章 ネットワークの中心

第8章 ネットワークと教育

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