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鉄道の一枚 2

雨だ。

梅雨入り。やっと梅雨入りなのだが、ここ数年の雨の降り方は今年も健在のようで、朝から雨量が多かった。この時期の九州の雨は、降り方が極端で、降る時は滝のように降る。だから道路はすぐ冠水するし、災害も起きてしまう。九州北部豪雨を経験して以来、雨はとにかく怖い。

そんな怖い思い出しかない雨なのだが、ふといい思い出がひとつ頭に浮かんだ。そう、あれも朝から雨が降りしきる日だった。

時は2016年2月14日。熊本市内を走る熊本電気鉄道の通称「青ガエル」が引退する日だった。親族が熊本に住んでおり、幼い頃から市内を走る電車にはよく乗っていた。今もよく乗っている。

電車乗りに行く?

青ガエルのラストランを見に、姪っ子を誘ってみた。一人で見に行こうかとも思ったが、ラストランを見る機会なんて、鉄道好きでなければ、なかなかわざわざ見ることはないだろうと。

「電車?」そうだよ。あのね、青ガエルっていう電車が今日で走るの最後なんだって。「最後?」そ、最後なんだよ。雨降ってるけど、見に行ってみるかい?「行く!」こうして、姪っ子と二人で青ガエルを見に行くことになった。が、4歳児にはラストランの意味は分かんないよねぇ・・・。

とにかく、姪っ子に雨合羽を着せて長靴を履かせて、北熊本駅へ向かった。最終便ではないので、まだそんなに人は多くないだろう。そう思いながら駅に着くと、結構たくさんの人が集まってきていた。

あれが青ガエル?

そうそう。あれが青ガエルだよ。なに?色が青じゃなくて緑だって?うーん、4歳児そうきたか。ほら、信号機と同じでさ、信号機の青も緑色だけど青色っていうやん。という私の難解な説明にきょとんとしている姪っ子に、まあとにかく電車の写真をたくさん撮ってねとデジカメを渡した。

雨がざあざあ降るなか、青ガエルに乗車。上熊本駅までの10分の旅を堪能する。車内は大勢の鉄道ファンで埋まっていた。みんないろんな思いを抱えて乗っているに違いない。私も慣れ親しんだ青ガエルがこれで引退かと思うと寂しい気持ちになっていた。

が、姪っ子はそんな私の気持ちはつゆしらず、大勢の人に緊張しながらも天井を指して「扇風機がついてるよ」とか「うわっ、トンネルだ」とか小声で青ガエルの旅を楽しんでした。

青ガエル、ありがとう!

北熊本~上熊本までの旅を往復で堪能したあとは、北熊本駅で車両撮影タイム。熊本電鉄にはいろんな車両があるが、青ガエルの顔はまた独特で、まるっこいフォルムで愛らしいのだが、いろんな時代を走ってきた貫禄もあった。

熊本でいろんな電車に乗るが、青ガエルに乗るとその懐かしい雰囲気に、いつも現実の嫌なことを忘れさせてくれる力があったように思う。大きな窓から眺める車窓、カーブを曲がる時の軋む音、どれもそっと私を癒してくれていた。

私はいつまでも感傷に浸っていたかったのだが、雨が降っているということもあり、姪っ子の集中力が限界に達してきたので、駅のショップで青ガエルの記念グッズを購入して駅を後にした。青ガエル、そしてラストランに付き合ってくれた姪っ子ちゃん、お疲れさまでした。

青ガエルが引退してからしばらく経ったある日。久しぶりに会った姪っ子が私にこう言った。「あのね、えっとね、青ガエルまだいるよ!」・・・そうね、引退=即消去ではないのよ、青ガエルは。またイベントで登場するのよ。動態保存だから・・・って言っても分かんないだろうなあ。

青ガエル、また会いに行きます!

記事を書くための栄養源にします(^^;)