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【舞浜戦記:番外編】キャストへの収入保証の意味と目的

みなさんこんにちは。あっくんさんです。

今現在TDRの両パークは休園中でちょっと寂しい状態ですね。まあ僕は全然行ってない派なので特に変化なしなんですが……。

先日オリエンタルランド社から、こんな発表がありました。

東京ディズニーリゾート休園中のキャストに一定の収入を保証 OLC、3〜5月の「勤務解消手当」を増額支給

現在お休み中の従業員達に解消手当を支給するとのこと。実に喜ばしいですね。

ただし僕は、このニュースで発表された手当の内容は、ちょっと違う目的があって、彼らキャスト達を保護したと考えています。

その前に、勤務解消手当とは何かを説明しましょう。

勤務解消手当は勤務を早めに切り上げ、半分の時給を支給してくれる手当のこと

キャストは普段シフトに従って勤務しています。勤務時間はかなり厳密に決められています。1分でも遅刻したら許さないよ、というのは以前僕のネタでご紹介したとおりです。
この時間に合わせて出勤して来てね、そしてこの時間になったら終わりだよ、と依頼し、それに合わせて出退勤しているわけです。

しかし、常に決められた人員が必要かと言うと、そうではない時もあります。
たとえば、雨が降ってお客さんがどんどん帰ってしまった時とか。当然パーク内はガラガラ。と言うことはキャストも人余り状態になるんです。

必要ない人達を無駄に勤務させていると、どんなことが起きるでしょうか。そう、キャスト同士が暇になり、お喋りを始めるんです(笑)。

そりゃあやることがなくなると、私語も増えますよね。そんな彼らは見た目も悪いけど、会社としても必要のない人達にお給料を払うのは無駄。それなら、必要ない人には勤務を終了してもらう方が合理的です。

でもきっちり決められたシフトに従っているので、いきなり仕事をやめて帰ってもらうのは会社の身勝手な都合ですよね。そこで、一定の金額を払って帰ってもらう。それが勤務解消手当です。
通常、半額の時給を支払って帰ってもらいます。

たとえば、ある人が16時上がりとします。今の時間が14時。勤務終了まで2時間ありますが、ここで解消になると、本来もらえる2時間分の半分、勤務1時間分がもらえることになります。キャストは2時間早く帰れるし、半分お金はもらえるしでウィンウィンなわけですね。
以上が通常の解消手当です。

今回の措置はかなり思い切った条件ですね。上の条件よりずっと手厚いです。TDRは2/29から休園に入っており、再開は5月中旬以降を予定しているとのこと。

3、4、5月の給与に対し8割の手当を出すそうですから大胆な決断です。これほどの好条件の解消は、当然僕の現役時代にはありませんでした。

おそらくこのニュースを聞いた人は、ああオリエンタルランド社ってなんて従業員に優しいんだ、と思いますよね。それは間違いではないと思います。

ただ、経験者としてみると、単純に従業員に優しいだけではない事情に気がつくんですよね。


TDR全キャストの解消手当の負担はどのくらい必要か?

約2万人もいるキャスト達へ、どのくらいの給与を支払うことになるんでしょうか。超ざっくりとですが、計算してみました。

まず、一人当たりの勤務時間はどれくらいか。部署にもよるしシフトは様々だし季節にもよるし繁忙期閑散期の違いにもよるし、一概には言えないです。しかしそこをあえて強引に算出してみます。
1日あたりの勤務時間は、大体5〜8時間とします。もっと短いシフトも長いシフトもありますがそこは無視。まあ、おそらく感覚的には約6時間くらいかなと思います。

勤務時間の長さによって引かれる休憩時間が異なってきます。
僕がいた当時の基準で言うと、勤務時間は拘束時間によって違います。拘束時間によって引かれる時間は、

6時間以下 →引かれる休憩0分(なし)
6時間15分 →15分引かれる
6時間30分 →30分引かれる
6時間45分〜8時間 →45分引かれる
8時間15分以上 →1時間引かれる

こんな感じだったかな。
拘束時間が6時間〜6時間45分の時は、もらえる給与が一律6時間分なんですね。つまり、給与の計算の対象になる時間は、6時間前後になることが割と多いんです。
それもあり、けっこう6時間前後になるケースが多いです。もちろん繁忙期なら8時間拘束を超えることも少なくないですから、7時間分以上もらえる日が多かったかな。
そこで、単純に一人一日平均6時間分もらえると仮定します。

時給は職種により異なります。勤務人数が最も多いのが運営部、マーチャンダイズ部、フード部。つまりオンステージ勤務の人達だと思います。彼らは現在の時給が1000円。人によっては昇給して少し高いでしょう。その分は無視します。あと時間帯手当もありますがこれも無視。
すると、一人一日分の8割支給ですから、6,000円×0.8で4,800円。

パーク全体の従業員数は2万人ですが、全員が毎日出勤するわけではありません。お休みの人もいます。
季節にもよるけど、大体7割の人が出勤していると見ておきましょう。

何せ季節は春。本来なら春休みの激混み〜ゴールデンウィークまでの期間です。この合間の20日間ほどはやや小康状態になりますが、それでもシフトは長くキャストの人数もかなり多めのはず。7割強が出勤しても自然かなと。
7割なら14,000名。
4,800×14,000で6,720万円。約7,000万円が一日に支払われます。
休園期間が3/1〜5/15と仮定すると、期間は76日間。計51億720万円ですね。
1日7時間で計算したら、5,600×14,000=7,840万円、
×76日分で59億5,840万円。
ざっと50〜60億円の負担です。太っ腹ですねぇミッキーは(違う)。

長期間の休止はキャストの退職を促進し、スキルという貴重な財産を喪失していく

問題は、長期休園がどのような影響を与えるかです。僕が気になるのは2ヶ月半という長い休止状態です。

もしあなたがどこかでバイトしていて、明日から2ヶ月半お休みしてね、と言われたらどうしますか? 普通、バイトする人って早くお金が欲しいですよね。まあ来月の振り込みまでは待てるでしょうが、2ヶ月半も仕事ないよと言われたら?

普通、辞めますよね(笑)。

そう、仮に2ヶ月半後に再開できたとして、その時にみんながみんな戻ってくると思いますか? 生活に追われている人達は、この2ヶ月半に別の仕事を始めていると思います。だってお金、欲しいから。

ということは、再開した時にどの部署も大変な人手不足に見舞われる可能性が高いです。そしてパーク内のキャスト募集は、簡単に代わりの人材を補充するのが困難なのです。
コンビニ店員さんなら簡単にとはいかないまでも何とかなりそうですが(ならねーよって意見も多いかもですね)。

一般的なバイトに近い職種もありますが、そうでない職種が少なくありません。そんな部署は、たとえ人がやってきたとしても慣れるまでに非常に時間がかかります。
アトラクションなんてその最たるもので、ただ仕事内容を覚えてもらうだけでも相当時間がかかるのに、スキルを上げるのに1ヶ月も2ヶ月もかかります。

再開した時に備えて人を採用するのに手間も時間もかかります。現場に来てもらっても教えて習得するのに時間がかかります。慣れるのにも時間が……。

もし入ったばかりの新人だらけのままパークを再開したら? たとえ再開が決定し、運営が始まったとしてもしばらくは大混乱でしょうね。

お店に入っても商品がない、補充が追いつかない。レジは長蛇の列。棚は空っぽ。レストランに入っても注文を聞きに来ない、いつまでも食事が出てこない。人を呼びたくても人がいないので呼べない。広い店内を見回しても関係者の姿はなく、たまに見かけても、そのキャストは他のお客さんからクレームを受けてひたすら謝罪している。アトラクションも動いているのかいないのか分からない。並びたいけど列が果てしなく伸びて最後尾がどこなのかさっぱり分からない。
パーク内のあちらこちらに列ができているけど何の列か見ても分からないし、案内するキャストの姿がないから聞けない。仕方なく並んだら、トイレの列だと気付くまで30分かかったりして。

相当めちゃくちゃな状態で、もはや正常に運営しているのにはほど遠い、すさまじい大混乱が目に浮かんできます……(泣)。
せっかく再開したと思ったら危機的なサービスクオリティの低下で機能不全に陥った異常事態は、すぐ外部へ知れ渡るでしょうね。あのディズニー園内が大混乱で何も遊べず、耐えきれないゲスト達が何もできずに続々と退園していくことでしょう。
機能不全に陥ったパークは見るに忍びないですが、人がいないと動きません。夢と魔法も人がいないと駄目なんです。

こんなカオス状態を回避するために必要な、たった一つの手段は、

退職者を、可能な限り抑制する

です。
今働いている人達が残っていてくれれば、再開した時も混乱は少なくて済みます。だから、社としてはなるべく辞めないで欲しい。そのためなら8割支払うのもやむを得ないんです。それをケチって失うものの大きさに比べたら、50億円など大した金額ではないと思います。
だって人を育てるのって、ものすごく大変ですから。予算より何より、とにかく時間がかかるのですよ。

ただし、これからどうなるか不明なので、先行きは決して明るいとは限りません。休園措置が延長されればさらに負担は重くなり、それならいっそ支給停止もやむなしとなる可能性はなくはないわけで。
こんなニュースもあるそうですよ。

米ディズニー、従業員10万人超の給与支払いを停止へ 新型ウイルスの影響

米国では政府から手厚い補助金が出るそうですから、ディズニー社からの支払いが停止しても何とかなりそうです。

日本でも、キャストのみなさんの生活に支障がないといいですね。
そしてパーク再開の日が来たら、まるで何事もなかったかのようにスムーズな運営っぷりを見せていただきたいものです。






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