木曜、事務所へ
ルミネの6階に入っているカフェはお昼どき心地よく空いていてソファに腰掛けたままスマホ片手に呆けてしまう。
平日だからか、コロナ禍だからか。おかげで私は私自身ととても親密な気分になっている。ここのネギトロ塩レモンプレートが好きで水曜夜のバイト後には気晴らしも兼ねて寄ることが多いけれど昼間に来たのははじめてだ。平日昼のルミネの穴場感たるや。
今日はその医療事務のバイトはお休みなのだけれどモデルのほうの所属事務所から所用で呼ばれたので表参道まで出向いた。いつものルートを2時間遅めに行く。
渋谷駅で井の頭線から銀座線に乗り換えるのだが最近この動線が大幅に変わった。岡本太郎の「明日の神話」の下にぽっかり穴が開いてそこからJR他各線へと続く通路が作られた(私は養生シートの雰囲気からして今年頭からそうなるとは予想していたので的中して少し嬉しい)のだ。
今まで東急デパートのフロアであった場所が広々と拓け、回遊魚のように人の群れがU字を描いて迂回してゆく。私もまたお魚のひとりとなって銀座線へと繋がる階段を目指す。
ここを通る時、毎日少しだけ甘くてさみしい気分になる。数少ないとっておきの記憶が今や工事現場となった急拵えの仕切りの向こうに真空パックされたのだ。日常の摩耗を逃れたと思えばそれも良かったのかもしれない。
ささやかだけれど大事なもの、というのはきっとこういうもののことを言うのだろうな、と自分の心の内側を覗いて優しい気持ちになる。
そのようなささやかなとっておきが重なっていくといいな、と思う。何もきまっていない未来。何も決めていない未来。先を憂うということをしない自分がそれでも不安になるとしたら、それは不在の存在感に圧倒されているからだと思ったり思わなかったり。
迂回路はやがてまた元の位置に新しく通路が整備され通らなくなるかもしれない。
エスカレーターは増設して下さい、渋谷駅の神さま。
でも副都心線あたりについてる高速エスカレーターはつけなくていいです。ぐぁん、となっちゃうから。あれ、お年寄りとか足の悪いひととかにはかえって危ないと思うの。
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