白ヤギさんへ

こんにちは。お手紙ありがとう。

実はあなたからお手紙を貰うなんて思ってもいなくて昨日はとてもびっくりしました。でも、ありがとう。

その後目のほうはいかがですか。いつもあなたの目のことが気になっています。あの日、あの小さな段差を見落として僕の隣にいながら転んでしまったこと、いまでも忘れられないでいます。ごめん、と謝るとかえってあなたは怒るのだろうけれど、でもやっぱりごめんね。(怒らないで下さいよ)


実は今朝ふと気づいたことがあって、そのことを返信として書いてみようと思います。

いつだったか、あなたが泣きながら「あなたはわたしなの!」と言い放ったことがありましたね。

あれ、僕はずっと訳が分からないでいました。いつものあなたの癇癪が言わせた言葉で、あなた自身も意味が分からず言っていたことだと思っていました。

でも今朝、分かった。

あなたがあの時僕をあなたの宇宙そのものとして見ていたそのことの景色というんだろうか、そういう境地がなんだったのか。

あなたは理解できること、できないことを包み込んだうえで僕を見ようとしていたのですね。

僕が自分に相入れないことは不快な異物として視野の中から排除しようと腐心していた時期、あなたはそんなことは承知の上でそれごと僕を見ていてくれた。そのことが…それが、僕には怖かったんだと思う。あなたと僕の見ている世界の広さにズレが生じていることに気づいてしまうことが怖かったのです。

でもひとは本当に分からないものをそのままにして受け容れることが出来るのだろうか。

あなたは結局僕から去って行ってしまったでしょう。いや、それは違う、あなたが遠ざけたのだ、とあなたは言うかもしれない。そうだね。現にこうして今回もまたあなたのほうからお手紙をくれたりしたのだし。でも、やっぱり僕はあなたが僕から去ったのだと思う。それは僕という人間からというよりは、より広い世界に目を向けたということにおいて。

それは寂しいことだよ。

ありのままの僕を受け入れてくれるのならばあなたは僕のこの寂しさごと……

いや、違うな。今のは無しだね。

僕たちは互いに投影しあっていたのだろうか。それが愛し合うということなんだろうか。

今朝ふと拓けた世界の感触ではそういう感じでもなかったんだ。あれは何というか……自立していて、凛としていて、そしてきっかりとした佇まいで互いに向き合っている、そんな感じがしたんだ。

あなたは色んなことを知りたがるくせに自分の言葉にするのは苦手だよね。僕が寂しかったのはそこかもしれない。投げかけたのならやっぱり引き取ってほしい。あなたは僕に「本当は」どうして欲しいのですか。あなたがしたいことは何なんだ。


返事はくれてもくれなくてもいいです。

僕は最近一周回ってレディーボーデンのバニラ味にハマってます。かき氷は、あなたがよく作ってくれていた宇治抹茶掛けのヤツがやっぱり一番好きだな。

じゃあね。






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