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弱音吐きながら、進んでこ -寅子と花江ちゃんと私-

朝ドラ『虎に翼』を観て、救われた気持ちになった。自分で決めた道を進んでいたとしても、それは自分の責任であっても、弱音を吐いて良い、と言われて。

名前をつけるとすると今の私の立場は「駐在帯同配偶者」で、パスポートの関係から就労は出来ない。

初めての駐在帯同が決まったのは約8年前。結婚を意識した時からもちろん、夫が将来的に海外赴任を繰り返すことは承知していたし、子どもを授かりたい気持ちがあったので自分も帯同すると決めていた。

けれど、帯同する場合は一切の就労が出来ない、という事実を知ったのは駐在が決まった後のこと。まさかだった。それまで私が在籍していた会社からは、海外に引っ越してもリモートでもできる仕事を続けてほしいと打診されていたが、断らざるを得なかった。

この件に関しては夫の会社にも、この世の中の仕組みにも物申したい事が今でも山ほどあり、実際夫とも幾度も話し合い(口論)を重ね私なりの気持ちをぶつけた。

それでもやっぱり、制度は制度ですぐには変わらないし、帯同はしたいという自分の考えも変わらないのできちんと納得したうえで仕事を辞め、専業主婦となって駐在帯同を開始し、帰国、出産を経て2カ国目の今に至る。自分で出した結論に後悔は無い。

無いけど。

「いつも何してるの?」
日本にいる親族や友人、この国にいる夫の同僚など(主に女性)から、何気なく聞かれるこのひと言。

相手は「お仕事は何をしてるんですか?」と同じノリで聞いているんだろう。でも私にはどうしてもグサッときてしまう。

いつも、家族の送迎をしたり、掃除洗濯をしたり、料理の仕込みをしたり、買い物に行ったり、語学勉強をしたり、している。昼すぎにはもう幼稚園のお迎えがあり、午後は娘と過ごす。

やることは山ほどあって、毎日あっという間に時間が過ぎ、充実している。

それなのに、仕事をしている人から上のような疑問を投げかけられると、あれ?私っていつも何してるんだろう?何を言っても、たいした事してないような気がする…。と、落ち込んでしまう。

なんでだろう。
ずっとモヤモヤしていて、ずっと考えていた。

きっと、私がやっていることは家庭や子を持ちながら働いている女性たちも当たり前のようにやっていることであり、特別な事ではないから。かもしれない。

働きながら子育てをして家庭を回している周りに対してどうしても引け目を感じてしまって。

自分は闘っていないのかしら。

闘っていない自分は、この生活に対して多少なりともしんどいと思う気持ちを吐露することは、甘えなのかしら。

それは朝ドラ内で主人公•寅子の親友であり義理の姉である花江ちゃんが、自分は家庭に入りそれは自分で望んだ道だけど、女性の道を切り拓こうとしている寅子やその友人たちと比べると自分だけが闘っていないような、1人ぼっちになってしまったような気がした、と弱音を吐いたその気持ちと重なった。

それに対して、寅子の友人•よねが言う。
「甘ったれるな!自分で選んだ道だろう!」

グサッときた。確かに甘ったれた弱音だ。自分で選んだ道を歩いているのに。

でも、寅子は言ってくれた。
「弱音、吐いていきましょうよ。」

誰かの本気に優劣がないのと同じように、人それぞれが抱える辛い気持ちをその大小で比べることには意味がない。

自分がしんどい気持ちに蓋をして、周りの人の方が大変なんだから、弱音を吐いてはいけない。そんな風に思う必要は、無い。

心が少し軽くなった。

自分が選択したことに後悔はないけど、やっぱり私は、働けないという事実に辛さを感じる。選択肢が狭められることに疑問を感じる。

でも、夫の会社の制度も少しずつ変わってきている。子育てがもう少し落ち着いたら、駐在帯同の形もまた変わるだろう。

今はその時では無いかもしれない。でもその時が来たら思いっきり翼を広げられるように、準備をする時期と思う。

女性の道を切り拓いていく主人公のストーリーだけど、闘う彼女だけでなく、それを取り囲む人々に丁寧にスポットを当ててくれるドラマ『虎に翼』。

もらった言葉をお守りに、自分の気持ちを労って、それでも少し先の未来を見ながら、自分で選んだ道を堂々と歩いていきたい。

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