合法の生き物を探す

灰色のフワフワとの別れから、
私は堂々と共に暮らせる生き物を探し始めた。

実は、幼少期に、一度だけペットと呼べるかもしれない生き物が家の中に存在した事がある。

その名は「ぴーちゃん」
そう。鳥である。

この鳥は灰色を基調とした、
いわゆる桜文鳥という種類の鳥であった。

動物を飼いたい!という私の意見が採用されたわけではなく、
ママが洗濯物を取り込んでいた時に、
ベランダから突然、我が家に迷い込んで来たのだ。

ママは「ぎゃあ!」と叫び、一体どうしたものかと
夏にカブトムシを飼っていた虫籠へ
ぴーちゃんを収めた。

鳥籠ではなく、虫籠に、で、ある。

ぴーちゃんはとても美しく、羽はツヤツヤしていた。
足に何かバンドのようなものを巻いていて、
飼い主にとても大事に飼われていた様子が伺える鳥だった。

夜、パパが帰ってきて、ママが相談をした。
「これ、ベランダから入ってきたのよ…
どうしたらいいの?」

パパは、「外に放したらこの子は、きっと死んでしまうよ」と言った。

まだネットもない時代。飼い主を探すのも至難の業である。
という事で、しぶしぶ、我が家の虫籠にて、しばらく飼われる事となった。

ぴーちゃんは鳥籠を買ってもらえるわけでもなく、
カブトムシのお下がりの部屋に
パパがハンダゴテで無数の穴を開けた。

わからないながらにエサを与え、
わからないながらに野菜も与えた。

ぴーちゃんと呼ばれるその鳥は、
全く私たち家族に懐くことはなかった。

きっと、ぴーちゃんなんて名前ではなかったのだろうし、
ましてや、カブトムシのお下がりに穴を開けた住まいなんかで暮らす予定なんて、全くなかっただろうに。

きっと、元の飼い主の元からうっかり飛び立ってしまった事を、すごく後悔していたんじゃなかろうか。

そして、そんなぴーちゃんは、
ある日ママがベランダで、元虫籠の鳥籠をぴーちゃんごとひっくり返してしまい、
そのまま外へ飛び出て、チャンス!とばかりに飛び立っていった。

ママはそんなぴーちゃんに、「ダメ!ぴーちゃん!戻って!」と叫んでいたが、

ぴーちゃんは最後の最後まで懐かなかった。
ママの言う事なんて全く聞くはずもないのだ。


私は、ぴーちゃんの存在に少しだけ救われていた。
ぴーぴー鳴いてくれるだけで、なんだか寂しくなかった。
とても、大切に思っていたんだけどな。

ぴーこの存在は、私にぴーちゃんの思い出を鮮やかに蘇らせ、

そして、
ぴーちゃんは文鳥だったという事を思い出す。

文鳥ならば、飼えるかも…
そんな淡い期待が、私の中の喪失感をほんのり包んでいった。

つづく

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