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エントリーシート、悩まずに書ける人はそんなにいない

前回の記事で、自分を特別だと思わないでねという話を書きましたが、それを書きながらある生徒さんの顔が浮かびました。

彼女は九州内のある国立大学に通う四年生。スクールに通い始める時期としては少し遅めでしたが、それもある意味自信の表れだったかもしれません。
アナウンサーになりたいという気持ちが人一倍強く、スクールにやってくる時も、バッチリメイクでキラキラと顔も輝いていました。そこはかとなく自信がみなぎっているのがわかります。

私たちのスクールの授業では、講師の先生方がどちらかと言えば厳しく指導されます。そのためアナウンスの勉強を始めて暫くすると、人によっては自分の短所が見えて来て、授業が一時的に辛くなったり自信を失ったりする人も多いのです。が、彼女はそんな様子も見せず、いつも楽しそうでした。

ところが、いざエントリーシートを書いて出す時期になっても、彼女は添削を希望しないのです。他の受講生は書いて添削を経て書き直して…と進んでいるのに。
どうしたのかな?と思っていたある夜、彼女から泣きながら電話がありました。

「先生、どうしてもエントリーシートが書けないんです。」と。
あんなにアナウンサーになりたいと、ずっと思って来たのに…
あんなに自信もあったのに…
なぜだか、一文字も書けないんです。

彼女はアナウンサーになりたい!と強く思って来たのに、具体的にアナウンサーになって何をしたいのか、なぜそんなにアナウンサーになりたいのか、を実は考えていなかったのです。
根拠の無い自信ゆえ、ただ強い思いさえあれば夢は叶うと勘違いしていたようで、いわゆる自己分析と企業研究ができていなかったのですね。

そんな当たり前のことが、なぜできていないの?と思われるかもしれませんが、実はアナウンサーを目指す人の中には、こんな人が意外と多いのです。

やはり放送局アナウンサーという職業は、会社員とは言え人前に出ることが前提の、他の会社員とは決定的に違う仕事でもあるわけです。
「多くの人の注目を集めたい」「人とは違う、特別な仕事をしたい」
そんな気持ちだけが志望動機になっている人も実に多いように思います。

放送局という会社はどんな仕組みになっているのか?とか、自分はどんな所がアナウンサーに向いているのか?と、見つめ直したり考えたりしないで、ただアナウンサーになりたい!と思っていればいつかは成れると思っている人達。

さぁこれから、という時に思い詰めて、自分で自分のことを鬱状態です、と言い始めた彼女はもう就活を先に進めることができませんでした。
根拠の無い自信が崩れ落ちてしまったのでしょうね。

彼女がなぜアナウンサーになりたかったのか、改めて聞いてみると…
帰って来た答えは、「私は誰でもできるような仕事はしたくないんです。私でないとできない仕事がしたいんです。」
でした。
教育学部で教職課程を取っていながら、「学校の先生なら私でなくても誰でもいいじゃないですか。でもアナウンサーは私でないとダメだと言ってもらえる仕事なんです!」とも。
それを聞いた私はこう返しました。
「どんな仕事も、誰でもいいというものは無いよ。その人にしかできないことをやっているはず。ましてや、教師という仕事はもっとそうだと思う。誰でもできる仕事、なんて思いながら将来のある子供達の教育にあたろうと思うのはその子供達に失礼ではないかと思うよ。」
正直、少し腹立たしい思いでした。 

ただ目立ちたい、チヤホヤしてもらいたいという思いだけでアナウンサーを目指すこと自体、甘いと私は思いました。アナウンサーの仕事を少し誤解していたのでは?と思います。だからエントリーシートさえ書けなかった。

結局、彼女はアナウンサーになる努力をこの時点でやめてしまいました。
でも、エントリーシートを一文字も書けないと泣く前に、もっとできることがあったのではないでしょうか。

これからエントリーシートを書こうと思っているあなた。
スラスラ書ける人もいるけれど、書けない人もいます。
気持ちだけはあるけれど、具体的なイメージが作れないまま就活に突入しているのかもしれません。
どうか、簡単に攻略しようと思わずに、一度立ち止まって「仕事をする」ってどういうことなんだろうと考えてみて下さいね。
そうすることで必ず自分の長所やアピールポイントが見つかるはずです。

自信は、やるべきことをきっちりやれば自ずとついてくるものです。
根拠のある自信を持って下さいね!

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