立場の逆転
高齢の親を持つ方ならわかるかもしれない話。
子供の頃はもちろん、大人になっても親というのは子供の心配をするし、子の立場であるこちらも親を心の拠り所としてしまうもの。
なるべく心配をかけまいと努めていても、どうにもならないことにぶつかったり、ちょっとした愚痴を溢すこともあったな。
その度に人生の先輩でもあり、親の立場でアドバイスをくれたり、時にはアレコレと世話を焼きたがる。そんな親に甘えていたのもついこの間の事のよう。
親は子に頼られ、子は親を心の拠り所とする。
そんな立場がいつの間にか逆転してしまう。
いつまでも親に甘えてはいられないのだと痛感する時がやってくる。
そればかりか、頼りない親の世話を焼くことになるし、甘えてくる親にかつて親が口にしたかもしれない言葉で励ましてみたりもする。なんだか不思議な感覚。
昨日の夜遅く、携帯に実家の番号から着信。何事かと身構えながら電話に出た。
すると今にも泣きそうな母の声で「もう嫌んなっちゃう〜」と。
先日実家に帰った時に見せられた役所からの手紙。光熱費等の補助金支給の手続きの書類だった。
文字を書くのもおぼつかない母に代わって書類を書き、必要な書類のコピーをとり、あとは封をして投函するだけにしてきた。私が最後までやってあげてもいいのだけれど、出来ることはなるべく自分でやってもらうことにしている。
封をする糊がなかったので、買ってくると言っていた。
昨日の朝デイケアに行く前に、帰ったら封をしようと出しておいたらしいのだが、どこを探しても見当たらない。
おまけにやめればいいのに高いところに登って作業をしようとして転んだらしく、側にあった扇風機を壊してしまったらしい。
その一部始終を涙ながらに私に訴えている。
もう情けなくて、ショックで、自信がなくなっちゃった、と恐らくは泣きながら話しているのだろう。
そこで私が母に話したこと。
もう今日は探すのはやめた方がいいよ。
あのね、お母さんみたいな高齢でなくても、私だってそんな事はよくあるんだよ。ここにあったはずのものがない、どこ探しても見当たらないなんてしょっちゅうだよ。でね、別の日になると見たはずの所から出てきたり、思いがけないところにあったりするんだよ。
まだ期日まで日があるんだし、それで万が一出てこなくても、また役所に話せば書類を送ってくれるから大丈夫。
そんなことを小さい子供に言い聞かせるように話すうちに、涙声だった母の相槌が段々と落ち着くのがわかった。
「そっか、そうなんだ」と私の話に納得した様子。
さっきまでは「わかった、明日そっちに行くよ」と言おうと思っていたが思い直した。私の夏風邪もまだ治りきっていないし、残り僅かな夏休み、休息が必要だ。
今朝8時前に、再び母から電話があった。
昨日はごめんね。
昨日寝ようと思ってベッドに行ったら、服の下に隠してあったの。
隠してあった、にちょっと笑いそうになった。
そっか、良かったね、という私に、今日糊を買って封をしてポストに入れてくるから、と自分がやるべきことを確認するかのように話した。
やれやれ。
これで安心して休める。
まぁ、でもこんなことがこれからもっと増えていくのかもしれないな。
*****
先日の帰省で、遅ればせながら用意した仏壇開きを行いました。
迎え盆のお飾りをして、迎え火を焚いて。
実家は本家では無いので、仏壇もなかったし、迎え火などもした事がなかったんです。
なので今回が初めてのこと。
キュウリやナスで作る馬や牛は、藁で作った代替え品。よく出来ていて可愛い♫
火を焚いた時はしばし無言になり、ちょっと厳かで幻想的で良いものですね。
お父さん、お母さんのことをちゃんと見守ってね。