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「声」【詩】

隣席。
高い声でよく笑うママ友と
よくある愚痴話に興じていた女が
ふいにかかってきた電話にでて
母親の声にかわった。
どちらもほんとうのそのひと、
そのひとにとっての
どちらもほんとうの声なのだろう。

その声ーーあらげていても
柔らかでも
その声で怒り、いきどおる
その声でいたわり、だきしめる
わたしはその女の声の変化を
帰り道までおぼえていた。

わたしも
この声で歌い、話し
うそをつき ときに本当をいう。
わたし自身がなにものなのかいまだにわからぬまま
この日々のうつろいを
この声で
なんとかやりすごしているのだから。

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