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月は東に 日は西に

菜の花や 月は東に 日は西に

桜と共に、春を告げる花として菜の花がある。
鮮やかな黄色は大地を染めて可愛らしくも逞しい。
江戸時代の俳諧師、与謝蕪村の代表的な句の一つ。

前回上げた柿本人麻呂の和歌とは、全てが対比をなしているように思える。
太陽と月。
西と東。
暁と夕暮れ。
清冽な印象を受ける人麻呂の和歌に対し、蕪村の句は優しくも暖かい。
菜の花が揺れる春の夕暮れ。
受ける風の強さも匂いも、肌で捉えたかのように感じられる。
どちらも西の方角、地平線の彼方へ沈みゆく天体(もの)へ意識が強く引き付けられる。
それは私だけの感覚なのだろうか。

蕪村は、人麻呂の和歌に何か教えられることがあったのではないかと、歌人の今井邦子氏は著書で述べられている。
先人たちの感性は、こうして少しづつ今へと積み重なってゆくのだろう。




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