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鳥にしあらねば

梅雨になりそうでならない、どっちもつかずの気候が続いている。
色々と事が続いて、落ち着かない日々を送ることになっている。

世間(よのなか)をう(憂)しと恥(やさ)しとおも(思)へども 
飛び立ちかねつ鳥にしあらねば
  

世間乎 宇之等夜佐之等 於母倍杼母 飛立可祢都 鳥尓之安良祢婆

そんな時に思い出してしまう歌。
万葉集後期の歌人、山上憶良「貧窮問答歌」の反歌。
ここであえて現代語を必要とするのは「恥し」の部分のみ。
「つらい」と訳されることが多い。
鳥のように空へ。
古来より人はそう歌っていたのだ。
地面に縫い付けられたまま、
生きていかなくてはならないのか。
いっそ空へ。
鳥になれるものならば。

空への憧れを歌い上げた作品に「翼をください」がある。
既に合唱曲になってしまっているが、もともとはフォークグループ「赤い鳥」の作品だ。
のびやかに美しく空への憧れを高らかに歌い上げる。

同じように空へ焦がれる歌として中島みゆきさんの歌を思い出す。
「この空を飛べたら」
人がこんなにも空が恋しいのは、鳥だったからなのか?
問いかけと、どうしても辿り着けない場所への渇望が胸を締め付ける。

同じように、鳥を思い、
同じように、空に向かって、

しかし、
それぞれの場所で、違う心で、歌は紡がれてゆく。

今の自分に、似合う想いを探すように。




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