見出し画像

オススメ参考書2 合格る計算 広瀬和之著

オススメ度
ⅠAⅡB ☆☆☆☆  Ⅲ☆☆☆☆☆☆


もう10年近く前になるだろうか。僕は当時私立高校の非常勤講師をしていた。駅から少し遠い学校でまわりに何もないところだ。あまり講師のことを考えずに時間割を組むところで空き時間が何時間もあることもあり、そういうときはひたすら暇だった。学校には色々な出版社から採用見本として傍用問題集や参考書が寄贈されるようで、天井近くにまで尋常ではない数の数学の本が並んでいて、それらのほとんどはおそらく誰の手にも取られていない新品だった。空き時間、僕は家から持ってきた参考書を読むことが多かったのだが、手持ち無沙汰になったとき、その学校にある数学の本を片っ端から読んでいた。正直どれも似たり寄ったりで面白いものはほとんどなかったのだが、そのがらくたの山の中にひときわ異彩を放つそれがあった。


僕が見出してまわりの生徒にすすめていた最初の頃はほとんど知名度がなかったのだが、今となっては説明の必要もないくらい有名な本になってしまった。本書はタイトルのとおり計算についての本である。この本以前も計算の本は多数出版されていたが、そのほとんどはただのドリルのようなものだった。本書の特徴は計算についての工夫が細かく書かれていることである。まず、例題があり、そこで解き方のコツや下手な方法、正しい方法について丁寧に説明されている。そのあと類題が10~20問程度あり、それを実践するかんじだ。ⅠAⅡBもⅢも基礎から載っている。ただ、受験向けのレベルの高い計算法が載っているのでこの本を読む前からどれもそのとおり計算していたという受験生は少ないのではないか。特にⅢは教科書と受験では解法がかなり異なることに留意したい。


(どんな人に向いているか)


Ⅲは受験問題を解くにあたって、計算の占める割合が大きい。それに対してⅠAⅡBはどちらかといえば、解法の定着や理解の占める割合が大きいと僕は考える。それゆえ、ⅠAⅡBは計算の苦手な人、Ⅲはほぼ全ての受験生に読んでほしい。もちろんⅠAⅡBもやる価値はあると思うが、時間は有限なのであれもこれもというわけにはいかない。


◎Ⅲを使う受験生
◎ⅠAⅡBで計算が遅い、ミスが多いと感じる受験生
〇計算に不安はないが時間に余裕のある高1,2生


(問題のレベル)1~4or5(10段階)


ⅠAⅡBについて。扱っているテーマ(ITEM)としては簡単なものだが、類題には少し難しいものも。例えば、部分分数分解のテーマに階乗を含む式が入っていたり。


テーマ自体については簡単なテーマとしては平方根の簡約化や分母の有理化から難しいものは正射影ベクトルなど。面積比などは重要なのだが、意外としっかり扱っている本が少なく重宝する。


Ⅲについて。基本的な計算から積分は回転体の体積や速度・道のりまで。非回転体は扱わない。これは当然か。また、ITEM10の発散の速さは難しい。二項定理などで評価するものだが、数学が苦手な人にはいきなり詰まるポイントになる。飛ばすのもありか。本書が特に良いのは積分の部分でかなりのパターンを網羅するところだ。量も多い。後ろに単語帳があるので必ず作って活用してほしい。積分は暗記的な側面が拭えない。具体的には、円の一部型については補足で扱っている。部分積分についての特殊な方法は扱っていない(USA積分やテーブル法と呼ばれるものなど)。だが、やや高度な積分のテーマも含めるとほとんどの積分パターンは網羅されている。


難易度としてはともかく、著者も書いているようにかなり重い部分がある。想定以上に時間がかかるところがあるので注意したい。


(気になる点)


あくまで計算の本なので典型解法が網羅できるものではない。典型解法の網羅には他の本が必要なことに注意。また未習分野の初学には向かない部分もある。
また、こっちの解法のほうが絶対正義と言わんばかりの独善的な部分もあるので、全て著者の解法に合わせるかは難しいところ。実際僕も違う方法で計算する部分はたくさんある。
特に、著者は暗算を推奨する部分が多いがこれは人によって気を付けたいところ。私見としては計算はスピードより正確さだと思っているので、暗算をしてミスするくらいなら多少書いてもミスしないほうが良い気がする。


※参考書を批判する目的ではなく良いものを紹介する目的です。すべての参考書で気になる点を挙げています。

※今回手元にあるⅠAⅡBは古いものだが、職場に最新のものも持っている。内容はうろ覚えで見比べるぶんにはそんなに変わらない。

youtubeの参考書紹介もぜひご覧ください。

オプスタ

僕が代表講師として立ち上げたオンラインプロジェクトです。
オンラインでコーチング、学習マネジメント、個別指導等を行っています。
受験生に最適な学習を届けようというコンセプトです。

ご興味があればお気軽にお問合せください。


成増塾卒業生でもありオプスタTAでもある東大生によるショート紹介動画です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?