僕が母子ハウスを始めた理由 〜母子ハウスの今までとこれから〜 vol.02
2012年3月。収益物件としては、全国で初めてとなるシングルマザーシェアハウス「ぺアレンティングホーム高津」がオープンした。なぜ、建築家である僕が、母子シェアハウスを立ち上げるに至ったのか。その背景を何回かに分けて書いていこうと思う。
母子ハウスの今までと、これからを少しでも多くの人に知ってもらいたい。まだまだ、成長していかなくてはいけない事業だし、多くの人の助けと応援が必要である。
2015年、母子ハウスのポータルサイト「マザーポート」を立ち上げ。
2019年、母子ハウスの運営者が集う全国組織「NPO法人全国ひとり親居住支援機構」立ち上げ。
そして、これから僕らは何を目指していくのか。
2回目の記事になります。
1回目はこちらより。
住居を確保することができないということ
母子家庭であろうとなかろうと、住居を確保することができないということは、生活を安定させることができないということでもある。
特に母子家庭は、とにかく住所がなければこどもを保育園に入れるための手続きもすることができない。こどもを保育園に預けることができなくては、仕事をすることができない。仕事をすることができなければ、そもそも住居を借りることができない。住居を借りることができなければ、こどもを保育園に入れるための手続きもすることができない。こどもを保育園に預けることができなくては、、、とエンドレスに堂々巡りすることになる。
住所、保育園、仕事。
この3つのうち、どれか一つでも欠けてしまうと、とたんに生活が成り立たなくなってしまう。どれか一つ欠けていると、他の二つも得にくくなってしまう。
それでは、この3つのうち、まずは何を優先に整えるべきか。
それは間違いなく、住居である。
まずは安心して暮らすことができる住環境が整ってこそ、行政手続きも落ち着いてできるし、仕事も探すことができる。住居があればこそ、他の様々な支援にも繋がることができる。
住宅支援が最初の一歩目
このことは声を大にして、訴えたい。
建築家として伝えたいこと
これは母子家庭に限らずだけれど、住まいの支援の選択肢はとても限られていると感じる。
例えば、住まいを確保するための家賃の補助は、生活保護の住宅扶助をのぞけば、2017年から開始された住宅セーフティネット法の家賃低廉化補助制度があるけれど、家賃低廉化するかどうかは地方自治体の判断に委ねられており、そのための予算を組んでいる自治体は残念ながら圧倒的少数である。
さらには、住宅セーフティネットという制度自体が、まだまだ知られておらず、普及していない。
公営住宅という選択肢が本来は住宅支援のファーストチョイスになるべきではあるものの、公営住宅だけではセーフティネットが担えないからこそ、住宅セーフティネット法ができた背景のひとつでもあるので、十分であるとは言い難い。
また、制度だけではなく、住環境そのものも蔑ろにされている。
母子ハウスに限らず、住宅支援の現場では「清潔で、デザイン性があり、性能も面もしっかりしている」ことは贅沢であると言われることが多い。「ボロボロで、古くて汚くても文句をいうな」という意見が根強い。
これは本当に正しい意見だろうか?
空間には力がある。
住環境が人に与える影響は大きい。
良い空間で過ごすことは、精神的な安定や前向きな発想ができるようになるなど、人間にポジティブな影響を与えてくれる。劣悪な環境では当然、その真逆のことが起こる。
良い住環境は贅沢なものではなく、人が生きていく上で必要不可欠なものであり、権利として叫ばれて良いものだ。
人の生活の根幹である住まいの重要性が蔑ろにされてしまっているのではないか。ということは建築家として忸怩たる思いがある。