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【令和5年住宅・土地統計調査】空き家問題の現状と私たちの役割

こんにちは。空き家買取専科 子育て広報の三輪です。
2024年4月末に、5年に一度おこなわれている、住宅・土地統計調査(令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果)が発表されました。今回の結果では、全国の空き家数が900万戸を超えたというデータが発表され、空き家問題が深刻化しています。

今回のnoteでは、空き家問題の現状やその背景、そして私たちができる具体的な対策について詳しく解説します。また、2023年および2024年に施行された空き家に関する法改正についても触れていきます。そして、空き家の現状や皆さん、一人一人ができることについても考えていきたいと思います。


総務省は2023年10月1日現在で「住宅・土地統計調査」を実施しました。

この調査は1948年以来5年ごとに実施されており、今回で16回目となります。今回公表された速報集計結果は、調査結果の早期提供を目的として、全国及び都道府県の総住宅数、空き家数などを確定値に先駆けて公表されたものです。(確定値は2024年9月頃に公表予定)

総務省 令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果

1. 総住宅数

2023年10月1日現在の日本の総住宅数は6502万戸で、2018年と比べ4.2%(261万戸)の増加となっています。総住宅数はこれまで一貫して増加が続いており、過去最多となっています。

都道府県別の総住宅数は、東京都が820万戸と最も多く、次いで大阪府が493万戸、神奈川県が477万戸です。また、2018年からの総住宅数の増加率を都道府県別に見ると、沖縄県が7.2%と最も高く、次いで東京都が6.9%、神奈川県及び滋賀県が5.9%となっています。

2.空き家

総住宅数のうち空き家は900万戸で、2018年(849万戸)と比べ51万戸の増加で過去最多となっています。総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.8%で、2018年(13.6%)から0.2ポイント上昇し、過去最高です。

空き家数のうち「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」は385万戸で、2018年(349万戸)と比べ37万戸の増加となっており、総住宅数に占める割合は5.9%です。

●都道府県別の空き家率

空き家率を都道府県別に見ると、和歌山県及び徳島県が21.2%と最も高く、次いで山梨県が20.5%です。また、「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家率」を都道府県別に見ると、鹿児島県が13.6%と最も高く、次いで高知県が12.9%、徳島県及び愛媛県が12.2%となっており、西日本で高い傾向があります。

●調査の概要

調査は令和5年10月1日午前零時現在で実施されました。全国の調査区から約20万単位区を抽出し、これらの単位区において調査を行いました。

調査の目的:この調査は、我が国における住宅及び住宅以外で人が居住する建物に関する実態並びに現住居以外の住宅及び土地の保有状況、その他の住宅等に居住している世帯に関する実態を調査し、住生活関連諸施策の基礎資料を得ることを目的としています。

調査の対象:調査対象は約340万住戸・世帯で、特定の施設及びそれらに居住する世帯は除外されます。

調査の方法:調査票甲・乙は、調査員等が調査世帯に配布し、インターネット回答、記入した調査票の提出、郵送により行いました。建物調査票は、調査員等が建物の外観を確認するなどして作成しました。
結果の公表:結果は住宅数概数集計、住宅及び世帯に関する基本集計、住宅の構造等に関する集計及び土地集計から成り、インターネットへの掲載、報告書の刊行などにより公表されます。住宅数概数集計による結果は速報値であり、基本集計等の結果とは必ずしも一致しません。

●静岡県の空き家状況の比較(2018年と2023年)

私たちが住む静岡県のデータをピックアップしてみました。

【総住宅数】
2023年の静岡県の総住宅数は177.4万戸で、2018年の171.5万戸から5.9万戸増加しました。この増加率は3.5%です。
空き家数】
2023年の静岡県の空き家数は29.5万戸で、2018年の28.2万戸から1.3万戸増加しました。この増加により、空き家率は0.2ポイント上昇し、16.6%となりました。
賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家数】
2023年の静岡県の「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家数」は10.4万戸で、2018年の8.8万戸から1.6万戸増加しました。このカテゴリの空き家率は5.9%で、2018年の5.1%から0.8ポイント上昇しました。

静岡県では2018年から2023年にかけて、総住宅数、空き家数、および「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」の数と率が増加しています。特に、「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」の増加が顕著であり、これは地域の住宅政策や空き家対策において重要な課題となります。

調査結果から考察

●空き家増加の背景

空き家が増加する背景には、いくつもの要因があります。

日本では「新しいものが良い」という文化的な傾向が強く、新築住宅が好まれます。住宅の寿命が短く、地震などの自然災害に対応するため建て替えが頻繁ですし、住宅メーカーやデベロッパーが積極的に新築住宅を建設し、広告や販売に注力しています。さらに、新築住宅購入時には税制優遇措置が受けられるため、経済的にも有利です。これらの要因が相まって、日本では新築住宅が多く選ばれる傾向があります。

また、日本の家族構成の変化や少子高齢化がも要因のひとつです。かつては大家族で生活することが一般的でしたが、現代では核家族化が進み、多くの家庭で両親と子供だけの世帯が増えています。この結果、子供が成人して独立した後、親が高齢になると一人暮らしや夫婦二人だけの生活になり、最終的には高齢者施設に入所するケースが増えています。その結果、親の住んでいた家が空き家となるのです。

また、相続の問題も空き家増加の一因です。両親が亡くなった際に、相続する子供たちがどのように家を処分するか決められない場合が多くあります。売却するのか、住み続けるのか、あるいは取り壊すのか、意見が一致せずに空き家のまま放置されることが多いのです。

●空き家がもたらす問題

空き家が増えることで、地域社会に様々な問題を引き起こします。
家が傷むだけでなく、倒壊の危険性がでてきます。老朽化した建物が倒壊することで、隣接する家屋や通行人に危害を及ぼす可能性があります。また、不法侵入や放火のリスクも高まり、地域の治安が悪化します。さらに、ネズミやシロアリなどの害虫が発生し、周辺の住環境が悪化することも少なくありません。

空き家に関する法改正

空き家や所有者不明土地を無くしていくための法改正が、2023年〜2024年にかけて多数おこなわれました。

●民法の改正

2024年4月1日から、土地・建物等の利用の円滑化に関する民法の見直しがおこなわれました。財産管理制度の見直し、共有制度の見直し、相隣関係規定の見直し、相続制度の見直しなどが改正されました。

●相続土地国庫帰属制度

2023年4月27日からは、 所有者不明土地の発生予防の観点から、相続等によって土地の所有権を取得した相続人が、法務大臣 (窓口は法務局です。)の 承認により、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする制度が新たに創設されました。

●空家法の改正

2023年12月13日には「空家対策特別措置法」が改正され、管理指針に即した措置を、市区町村長から指導・勧告・勧告を受けた管理不全空家は、固定資産税の住宅用地特例(1/6等に減額)を解除や、特定空家への早期介入制度が創設されました。
これにより、放置すると危険な状態にある空き家に対して迅速に対応できるようになります。また、所有者の責務強化や、市区町村がNPO法人や社団法人を指定して空き家管理を支援する制度も強化されました​。この法改正は、空き家の有効活用と適切な管理を推進し、周囲への悪影響を未然に防止することを目的としています。

●相続登記義務化

2024年4月1日からは、相続登記が義務化されました。相続開始および所有権取得を知った日から3年以内に相続登記を行う必要があり、正当な理由なく登記を怠ると10万円以下の過料が科されます。
この改正により、所有者不明の土地や建物が減少し、空き家問題の解決に寄与することが期待されています​。

各法改正の内容は、取り組み・事業内容noteをご覧ください。

今からでもできる今後の空き家対策

空き家が発生した段階で適切な対応をすれば、無価値な物件やマイナスの価値を持つ物件になることを防げます。また、所有者不明の土地や建物についても、権利関係を明確にすることが求められています​。

空き家問題を解決するためには、家族間で早めに話し合い、意思を確認することが不可欠です。お盆など家族が集まったタイミングを利用して家族の意思を明確にし、将来のトラブルを未然に防ぐことが推奨されています。家族全員で意見を共有し、最善の解決策を見つけることが重要です。
また、専門家の助言をもらうことも近道になります。行政・司法書士・不動産業者などに相談し、管理・活用・賃貸・売却など、適切な対策を講じることが重要です。

空き家問題に関心を持ち、積極的に行動することで、地域社会全体の住環境を改善し、安全で快適な暮らしを実現することができるでしょう。今こそ、空き家問題に向き合い、未来のために行動を起こしましょう。