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父の終活「家じまい」娘のためにやってくれました。

終活、断捨離、やったことありますか?
年を取るほど執着が増し、モノやヒトや思い出も、手放すことはとても難しくなっていきます。
でも考えてみてください。
あなたが執着しているモノやヒトや思い出も、そんなに大事ですか?
あなたや、あなたの家族より大切なものですか?
現在や未来よりも、過去が大事ですか?


1.潔い父の「家じまい」


一時は終活や断捨離がブームになった時期もありましたが、周りを見渡すと、形ばかり取り組んでも、やり切ったという方にはなかなか出会ったことがありません。
そんな中、私の父が、娘の私のために、実行してくれたのが「家じまい」でした。


父がまだ20代の時に建てた家。

そこで私と妹の子育てをし、40年以上も暮らした家。

母が病に倒れてから、自宅での10年にも及ぶ介護、父は見事にやり切り、母を見送りました。
そんな中でも母のために尽くして改修を重ねてきた思い出のつまった家。

苦楽を共にしてきた家を、彼は潔く、しかし、したたかに手放しました。

彼は上手に執着を手放しました。

そして、早めに家じまいに取り組むことで、最良の結果を引き寄せたのです。


2.家じまいで引き寄せた、最良の結果とは


その家は山形県鶴岡市の中でもさらに田舎の村落にありました。

平地に位置する村落ではありましたが、わりと降雪量は多く、冬になると必ず年1回か2回程度は屋根の雪下ろしも必要な土地柄でした。

つまり、家屋敷を売りに出しても簡単には売れない、人気が低い地域だったということです。

現に、近所の家でも売りに出ている物件はこれまでにいくつかありました。

しかし、希望価格では全く売れず、売れるまでにかなりの時間をかけ、かなりの値引きをして、もしくはタダ同然で「買ってもらっている」ような状況です。

しかし、父は、
希望価格で、
短期間で、
すぐに売却
しました。
しかも、決して安い価格ではなかったと思います。

築年数がものをいう、住宅の相場から見ると、かなり高めでしたが、そこに購入者にとっての価値があったため、言い値で決まりました。
そして、購入者にも大変喜んでいただき、お互いに良い結果になったと思っています。

そして、家じまいを成功させた父と私は、市街地に土地を買い、小さな小さな平屋の家を建てました

駐車スペースもままならないような小さな土地ですが、管理はとても楽ちんです。

いずれ父が亡くなる日が来ても、この家なら私が一人でも守っていけます。

きっと父はそこまで考えて、家じまいをしてくれたのだと思います。

本当にありがたいお話です。


3.なぜ好条件で家じまいできたのか

両親がまだ20代で建てたというわりには細部にまでこだわりがあり、いわゆる、田舎の立派な家に分類されていたかと思います。

60坪近い建坪。
敷地は広く、おそらく200~300坪。
駐車スペースに困ることはありませんでしたが、管理は大変です。

性格がマメで、完璧主義な父は、わりとこまめに小さい修繕を繰り返していたので、築40年とはいえ、内部はかなりきれいな状態でした。

水回りも全く古さを感じさせませんでした。

寒い地域でしたので、母が病で家で過ごす時間が多くなると、家じゅうを断熱し、ヒートショック対策も万全でした。

家の前の駐車スペースには消雪設備も整備し、雪の日にも備えは万全でした。

とはいえ、少子化、核家族化が進むなか、田舎の大きな家は持て余しがちで人気はありません。

敷地もあまりにも広すぎて、管理も大変なため、一般の人にとっては無用の長物です。

もし一般の人に売れなければ、老人施設にでも話に行こうかと考えていたくらいです。

しかし、結果は、すぐに出ました。

父の言い値で、即決してもらったのです。

タイミングも良かったようで、ちょうど息子さん夫婦が両親と同居を考えていて、家を探そうかと思っていたという人に、たまたま出会えたおかげです。

そして、現物の状態がとてもよく、すぐにでもそのまま住めるほどきれいな状態だったことも大きいです。

こまめに修繕をし、メンテナンスを行ってきた結果です。

私たち親子にとって一番の問題点だったのは屋根の雪下ろしですが、購入者の息子さん夫婦が同居されるならその点も安心です。

すぐに引き渡しを行い、すぐに入居されたようでした。

決して条件のいい家ではなかったのに、好条件で売れたのは、タイミングと、現物の状態の良さ、そして、「執着を手放す潔さ」が要因です。

メンテナンスもしていない、古い家に価値を感じるのは、長年住んでいた持ち主だけです。

その執着で古家を持ち続けることは決して誰にも価値を生みません。

やはり、適切なメンテナンスをすることが、家の寿命を延ばすことになり、
住む人に価値を与え続け、手放すにも、しかるべきタイミングがあるのだと、改めて実感したものです。

4.まとめ

つまり、私たち親子にとっては、価値がない建物も、他のだれかにとっては価値があるということを実感した出来事です。

もし、父やわたしがあの家にいつまでも執着し、
もし、あのまま私たち親子があの家に住み続けていたとしたら、
年老いていく父と、妙齢の私の二人で、除雪もままならず生活し続けることになっていたでしょう。

そして、いつの日か父が他界した時、私は相続税を払って無駄に大きい土地と建物を引きつぎ、修繕することもままならず、荒れ果てていくままに住み続けていくことでしょう。

そうなったとき、
売れない
修繕できない
住めない
価値がない

そんな負の遺産になることは間違いありません。

そして、私は父のことを、「家じまいもしない身勝手な親」くらいに思ってしまったかもしれません。
そこまでではなくとも、もっと早く対処しておけばよかったと後悔すると思います。

父が、元気なうちに「家じまい」をしてくれたおかげで、親子の関係は今のところ良好です。

お墓くらいは先祖代々の墓に父を入れてあげたいと思っていますが、なにしろ私には子供がいないため、私の代で血は途絶えます。

父は、自分の代で「墓じまい」も考えているようです。

夫も子も成せなかった不甲斐なさで申し訳なさが募りますが、こればかりはどうしようもないので、ありがたく父の愛を受け取り、「墓じまい」も甘んじてお願いしようかとも思っています。

やはり、「家じまい」「墓じまい」は子供から親には言いにくいものです。
うちの場合は父が率先してやってくれているので安心です。

ありがたやありがたや。

そして、彼の潔さ、私も見習わねばならないと思っています。


5.空き家のお医者さんに相談しよう

山形県鶴岡市で空き家のお医者さんをしています。
古い住宅がどんどん取り壊されていったり、
空き家になった住宅がどんどん荒れ果てていく姿を見て、
日々、心を痛めています。

あなたにとって必要のないものでも、
誰かにとっては価値があるかもしれません。

いまは価値がなくても、
価値を上げることが出来るかもしれません。

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