見出し画像

「頸」の解説のような

物語りの産道があるならば、
それは首なのかもしれない、
と思って書いた詩です。

その人たり得る大体のものを備えた頭と、
生きる過程でその人を形成する経験というものを作りだすのに必要な体。
それを繋げる細い線。
そんな首を介して、
直感や、魂のようなもの、光や、理論的なもの、数字的なうつくしさは頭から、
そして体験として確固としたつよさに、血の温かさを含ませ、
目に見えるものよりも肌に染み込んだ様々な情景は体から、
それをひとつに合わせる中間の首。

そこを通ってやってくるような、
言葉はやはり口からがいいのかもしれないし、
その物語をできるだけまんまの形で生まれさせるために、
自分の変形を望む。
そんな詩です。


【物語りを裂いてはいけない
 丸のままで取り出して
 そのために私の顎を砕きなさい
 歯を押し沈め
 舌を平らにし引き摺りだすの

 物語りを私の感情で歪めてはいけない
 頼りない骨組みの
 細部の機微も知り抜いて
 色の滑りも違えずに光を反し
 世界にただひとつを取り出しなさい

 私を傷めても
 物語りの頸を
 そっと両手で支えなさい
 遠く遠くの視界まで
 透明を儚く知るために

 物語りをとりあげてくれ】


ちょっと言葉がつよい言い方の詩は久しぶりでしょうか。
けっこう書いている時、楽しいです。

「くれ」とか「~さい」という言い切るような、
切実に断ち切るような言い方。

そんな切実さもある、詩です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?