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「不実は残る」の解説のような

この詩を書いた時、
というのかここまでの数回分の詩は同じ日にばーっと書いたものだったのですが、
近しくもないけれど、印象の深い人を亡くしまして、
それを知った時に噴き上がったものを書きなぐったような詩になります。


【私の上下すら果たさない
 揺れはあまりに細やかで
 全ては散らばっている

 あまりにあっさりと
 幸福はひっくり返る

 同じでいられない
 一秒の何万分の一の時間さえ

 知覚できる限界まで 説き伏せよう
 あまりに一生は無垢だ

 厚底の世界の透明に溶けた
 愛だけが
 当たり前に不実で
 この胸に残る】


この詩を書きながら、
私は時間のことを考えていました。

放り込まれた出来事で、
そのときまで整っていたものまでひっくり返ってしまう。
自分が落ち着いていたことさえ嘘のように、
安定して立っていたことが思い出せなくなります。

【知覚できる限界まで 説き伏せよう
 あまりに一生は無垢だ】

自分のなかでひっくり返っていく感情に、
その死が冷静にみてどんなものなのかを説いてみても、
ひとの一生くらいの器ではとてもそれを俯瞰できないように思います。
どんなに様々な経験を積んでも、
たった一生では無垢だと言えるのかなと。

だけど湧いてくる感情はそれとは別で、
千年を超えても今生み落ちたものでも、
きっと様々な影や光を含んでいて、
だからこそそれだけは一番印象強く残るのだろう、という詩です。

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