薬学生の実務実習をもっと充実させるために簡単に実行できる3つのこと
薬学生は、薬局11週、病院11週と長期間の実務実習が必須となっています。
せっかくの実務実習の機会なので、少しでも充実した実習を受けたいと考えている薬学生も多いと思います。
また、教える立場の薬剤師も、経験の浅い人が学生の指導を行う機会が増えており、いきなり指導してと言われても戸惑っている人も多いのではないでしょうか。
そこで、私のこれまでの経験から、実習開始時から薬学生に勉強あるいは指導しておくと、簡単にかつ少しでも充実した実務実習になると考えた実行できる3つのことについて書いていきます。
その3つとは
1 「何のために」を意識してもらう
2 実務実習日誌をうまく活用してもらう
3 教わる力を身につけてもらう
です。
実際にこの3つの行動ができている薬学生は、充実した11週を過ごして多くのことを学んでいると私は感じています。
なぜそう思ったのか順に説明していきます。
「何のために」を意識する
何のために実務実習を行っているかを意識するとはどういうことか、具体的な例をあげてみます。
「この患者さんの服薬指導に行くので、見学に行こう」と指導薬剤師が言いました。
このとき、薬学生に「何のために」の意識がないと、「こうやって服薬指導を行うんだ」とただ見るだけで終わってしまいます。
しかし、薬学生が「何のために」を意識していると、患者さんに「何の」指導をしているのか意識するようになります。
その服薬指導が、「自己管理への移行」なのか、「副作用モニタリング」なのか、「アドヒアランス向上」なのか、その目的によって指導法の違いに気づくことができます。
薬学生がいざ服薬指導を実践する時に、この患者さんは何を伝えたらいいのかが分かります。
単に薬の説明だけで終わる服薬指導とは異なる、患者さんのニーズに応じた指導が行えるようになってきます。
また、指導薬剤師は見学や実習を行うときに「何のために」を薬学生に伝えると学習効果が高まります。
薬学生も目的意識が高まり、「この目的の服薬指導の時にはこう伝えるといいんだ」と理解が容易になります。
そうすると見学後服薬指導の実践をしてもらう時に、服薬指導のスキルが高まり充実した実習になっていることでしょう。
実務実習日誌をうまく活用する
薬学生にとって、毎日記載しないといけない実務実習日誌は書くのが面倒だと思っている人も多いのではないでしょうか。
しかし、実務実習日誌は上手く使えば学習効果が高まるように作られた素晴らしいツールです。
まず、毎日「今日の目標」を書く欄があります。
一つ目の『「何のために」を意識する』でも述べましたが、目的、目標を理解すると学習効果は高まります。
学習効果を高めるうえで、目標は「誰にでもはっきり伝わるようにする」ことが重要です。(鈴木克明 2002、「教材設計マニュアル ― 独学を支援するために ―」)
したがって、今日の目標を具体的に書くべきです。
そして、目標に対して指導された内容、理解できなかった内容を中心に書くことです。
なぜなら、実務実習日誌を書く目的が明日の自分に書いた内容を理解してもらい、意図する通りに行動してもらうことだからです。
具体的には、「今日の目標」に対して「指導された内容」は明日の自分に対して「理解できた内容の復習」になり、「わからなかった内容」は「学習、質問すべき内容」になります。
すなわち、明日の自分に復習と今日すべき内容を伝えることができ、充実した実務実務になるのです。
まとめると、「実習日誌をうまく活用する」ために、「今日の目標」を具体的に書き、目標に対して指導された内容、わからなかった内容を中心に書くことが学習効果の向上につながります。
さらに、実務実習日誌を活用するとさらに新たな2つのメリットがあります。
それは、
1 わかりやすい文章を書けるようになる
2 考える力が身につく
の2点です。
1 わかりやすい文章を書けるようになる
わかりやすい文章を書くためのコツの一つは、「誰に何を伝えるか」を意識することです。
実務実習日誌は明日の自分に学習や質問すべき内容や、復習する内容を伝えるために書きます。
明日の自分に伝えるために「何を伝えるか」考えて書くようになります。
このプロセスがわかりやすい文章を書くための訓練になるのです。
2 考える力が身につく
「何を伝えるか」考えて書くためには、頭の中で考えた内容を整理して文章にするプロセスが必要です。
このプロセスが考える力を身につける訓練になります。
以上のように、実務実習日誌を活用することは大きなメリットがあります。
指導薬剤師は、実習日誌を上手く活用できるように「今日の目標」を具体的に書き、目標に対して指導された内容、わからなかった内容を中心に書くように指導してみて下さい。
教わる力を身につける
長年薬学生や新人薬剤師をみていると、「教えてもらうのがうまい人」と「教えてもらうのがヘタな人」とで成長度合いが大きく違ってくるのに気づきました。
教えてもらうのがうまい人は、吸収が早いので指導者から多くのことを学び上達も早いです。
一方、教えてもらうのがヘタな人は何度も同じミスをしたりするなど実務実習に苦労している人も多いです。
指導者が丁寧に教えたくなる要因として、もちろんですが礼儀や愛嬌があります。
しかし、他にも「質問の仕方」が違います。
私が気づいたのは下記の2点です。
1 教えてもらうのがうまい人は一回の質問に一つのことしか聞かない
例えば、
「全部で3つの質問があります」
「最初の質問はこの薬剤の用法についてです」
「まずはこれを教えてください」
と聞きます。
しかし、下手な人は一度で質問をたくさんします。
「この薬剤の用法がなぜ分1なのか分かりませんでした」
「それともっと分からなかったのが、1日3錠なのかです」
と聞いています。
この質問の仕方だと、回答者である指導薬剤師はどれから答えてよいかわかりません。
質問は自分で予め整理して、一つ一つ聞くのが良いです。
2 教えてもらうのがうまい人は具体的に聞いている
質問の上手な人は
「患者さんによく聞かれる副作用について聞きたいことがあります」
と具体的に聞いています。
しかし、下手な人は
「服薬指導がうまくいかないのですが、どうすればいいでしょうか?」
と抽象的に聞いています。
この質問の仕方だと、回答者はあなたに何がわからないのか逆に質問しする必要があります。
「何がわからないのか分からない」状態で聞きに行くのも仕方ない部分はありますが、できるだけ自分で整理すると良いでしょう。
まとめると、「教わる力を身につける」ために礼儀はもちろんですが、指導薬剤師さんへの質問の仕方について、「一つのことしか聞かない」、「具体的に聞く」ことを意識すべきです。
明確な回答が指導薬剤師から得られ、理解がより進むことと思います。
また、指導薬剤師もあらかじめ質問の仕方について指導しておくと良いと思います。
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以上まとめると、実務実習をもっと充実させるために、実習開始時から
・ 『「何のために」を意識する』
・ 実習日誌を上手く活用できるように、「今日の目標」は具体的に書き、目標に対して指導された内容、わからなかった内容を中心に書く
・「教わる力を身につける」ために礼儀はもちろんだが、指導薬剤師への質問の仕方について「一つのことしか聞かない」、「具体的に聞く」ことを意識する
この3点を実践してみると良いと思います。
比較的簡単にでき、効果も感じることができるのではと考えています。
日常の薬剤師業務体験や生活体験をもとに記事を書いています。 よろしければサポート頂けたら嬉しいです。