「smelt」秋田佃煮を広めたい若旦那衆
秋田名物といえば、何を思い浮かべますか?
きりたんぽ、ハタハタ、比内地鶏、稲庭うどん・・・。
美食県秋田にはおいしい名物がたくさんあります。
しかし、そんな中で地域の人からなかなか名前があがらない秋田名物も。
それが「秋田佃煮」
名物なのに知られていない!そんな現状を変えようと立ち上がった人たちがいます。
【smelt(スメルト)】※写真提供:smelt
2019年春に結成した、秋田佃煮若旦那衆。
(左)佐藤食品株式会社 代表取締役社長 佐藤賢一(smelt代表)
(中央)株式会社千田佐市商店 取締役 千田浩太
(右)株式会社菅英佃煮本舗 代表取締役社長 菅原英信
秋田佃煮が県民から遠い存在に
― 秋田佃煮とほかの佃煮では、どういう違いがあるんでしょうか。
(千田)
佃煮というと、最初に思い浮かぶのは江戸の佃煮だと思います。
醤油でしっかり煮込んだ黒くてしょっぱいものが多いんですが、秋田の佃煮は甘くて色がきれいというのが特徴です。
ー 秋田県民の好みに合った、甘じょっぱい佃煮なんですね。
(佐藤)
そうですね。それでも県民の佃煮消費量は落ちています。
(千田)
イベントに出店したときにアンケートを取っているんですが、特に若い方は知らないですね。
「わかさぎ食べたことない。」「八郎潟を知らない。」という意見が多かった。
【八郎潟】※写真提供:smelt
秋田県沿岸部に位置する湖。
八郎潟で獲れた小魚などからたくさんの佃煮が作られている。
(佐藤)
佃煮は年配の方のほうが認知度が高いというのは予想していたところだったんですが、アンケートでもう1つ、「わかさぎのからあげ」が全然知られていないということがわかりまして。
我々は何十年もからあげを作ってスーパーなどに置いているんですが、「初めて見た」という方がかなりいました。
(菅原)
でも「初めて食べたけどおいしかった」っていう意見も多かったよね。
(佐藤)
だから逆に言えば、知られていないということはまだまだマーケットが広がる伸びしろでもあると。
【醸しまつり】※写真提供:smelt
日本酒の試飲や発酵食品・おつまみなどの購入が楽しめるイベント。
秋田県内外の飲兵衛が大勢集う。
smeltも参加し、集まったお客さんへアンケートを行った。
新しいチャレンジを
ー 秋田佃煮をもっと知ってほしいと、その部分にsmelt結成の根幹があるわけですよね。
(佐藤)
もっと佃煮業界を伸ばしていくには挑戦していかなきゃいけないなと。
業界内でもっと情報交換したほうが今後のためじゃないかと、若手で集まってsmeltを結成しました。
最初はお互いの工場見学をしました。それまではお互いの会社に入ることもなかったので。
(株)佐藤食品の工場内。手作業でタレや材料をかき混ぜている。
ー smeltメンバーはお互いにライバルでもあるわけですが、工場を公開することに抵抗はなかったんですか?
(菅原)
我々はいいけど、親父世代がね。
(千田)
うちの親父は隠したがるタイプで大変でした。
「これ見せるたびになんぼ売り上げ下がる」とか。
いまは応援してくれています。
なんでもかんでも「smeltでやってけれ」って(笑)
ー smeltはイベント出店やYouTubeまで、幅広い活動されていますからね。
(千田)
いまテレビよりもYouTubeを見ている層が多くなってきて、すごく効果的なので、しっかり我々のやっていることを見てほしいなと始めました。
(佐藤)
背景もありますよね。実は食のイベントをやろうとしてたんですが、コロナで中止になっちゃって。
いつ収束するかもわからない中で、お客さんとの接点がほしいなということで、こちらから情報発信したり交流できる場所としてYouTubeをやってみようかと。
ー 商品紹介だけじゃなく、いろいろな動画を出していますよね。
(千田)
必ずエンディングに八郎潟の映像や歌をつける、始まりも必ず八郎潟アピール。
結局は八郎潟の紹介、スメルトやわかさぎの紹介につながるようなアプローチにしていきたいって工夫してますね。
【わかさぎ散歩】
smeltのYouTubeチャンネル。
「秋田佃煮」「八郎潟」「わかさぎ」の3つを軸としながら、様々な企画でPRを図る。
ー YouTubeやSNSのようなオンラインだけじゃなく、イベントなどのオフラインの情報発信や交流も大事にしていますよね。
(佐藤)
県外のお客さんの意見も知りたいよねということで、東京で試食イベントを開催しました。
居酒屋でお任せの佃煮アレンジメニューを出してもらって、食べながら意見交換という形ですね。
東京都での意見交換会時の様子。※写真提供:smelt
佃煮アレンジ料理が所狭しと並ぶ。
(千田)
わかさぎの甘露煮おにぎりとか、ふろふき大根とか、サラダに乗せたりとかのなかで、コチュジャンを使ったメニューが出てきて。
みんな、「これおいしくない?」って。
ー それがいちばん好評だった?
(千田)
そう、印象が強くて。じゃあこれやろうよってなったわけですね。
【辛いジャン!】
smelt初の3社コラボ商品。
しょっつる(秋田の魚醤)入りコチュジャンを使用した甘辛い風味で、ご飯やお酒のお供にピッタリ。
3種類の佃煮がセットになっており、味比べができるのも魅力。
ー イベントがきっかけでコラボ商品が生まれたわけですね。
(千田)
イベントは発見の連続だし、参加者の皆さんからの意見もかなり好評で、うれしいですね。
(佐藤)
イベントで試食してもらうたびに、「佃煮ってこんなにおいしいんだね」とか、「こんなに種類があるんだね」とか、そういうご意見をいただいて、ああやっぱり知られていないんだなと。
(菅原)
次は秋田県でもやりたいよね。「秋田で佃煮を楽しむ会」みたいな。
(佐藤)
そうですね。開催できたら皆さんぜひ来ていただければ。
わかさぎで地域を活性化
ー 今年から「わかさぎ週間」を始められましたね。
(佐藤)
これも、佃煮や八郎潟、わかさぎをもっと知ってほしいという気持ちから始めました。
飲食店や小売店で一斉にわかさぎを取り扱えば、より地域の方に知ってもらえるかなと。
【わかさぎ週間】 ※写真提供:smelt
期間中に飲食店等でわかさぎを使ったメニューを提供。
わかさぎ週間1年目の今年は、協力店14店舗。
わかさぎのマリネやかきあげ丼などが提供された。
(菅原)
少しずつ根付いて、「わかさぎでお客さんが増えるのであれば自分のとこもやってみようかな」っていうお店が増える。
そうしたら「今の時期はわかさぎ」っていう印象が強くなって、わかさぎを目的にお客さんが来てくれる。
そういういいループが生まれたらなと。
わかさぎを通して八郎潟に興味をもってもらいたいんです。
観光地にしたいというか、地域を活性化できたら。
八郎潟をもっとよくして後世に残していきたいです。
(菅原)
後世に伝えたいという取組としては、小学校を訪問して佃煮のプレゼントもしています。
子どものころに食べたものって記憶に残るので、そうして佃煮を根付かせようと。
(千田)
食育ですね。
菅原さんが子どもたちに大人気なんですよ(笑)
(菅原)
知ってもらうきっかけはなんでもね、入り口はなんでもいい。
2019年小学校訪問時の様子。※写真提供:smelt
佃煮クイズに元気よく答える小学生たち。
佃煮やsmeltメンバーへの質問も飛び交う。
伝統とチャレンジ
(佐藤)
smeltもそうですけど、各社でもいろいろ工夫しています。
例えば千田さんは「カッパの佃煮」作ったり。
【カッパの佃煮】(株)千田佐市商店 ※写真提供:smelt
とても興味をそそられるネーミングの商品。
その正体は「かっぱ」という超希少部位を使用した牛肉の佃煮。
(千田)
甘さ控えめの商品です。
甘さは秋田佃煮の絶対的な文化なので変えるつもりはありませんが、同時並行でそういうのもあっていいんじゃないかなという試みですね。
佐藤さんはデザート佃煮作ったり。
チャレンジの連続です。
(佐藤)
秋田佃煮は他と比べて色がきれいですが、それでもやっぱり醤油を使っているので、茶色い佃煮が多いんですよ。
その点ナッツみかんはオレンジ色なので、新しい佃煮かなと。
【ナッツみかん】佐藤食品(株)
くるみやアーモンドの佃煮にドライみかんのチップを入れた商品。
見た目の鮮やかさとみかんの風味がとても爽やかな一品。
(菅原)
見た目が悪いと買わないでしょ。最近はパッケージに力入れないと手に取ってもらえなくて。
【厳選白魚のカリカリ揚げ】(株)菅英佃煮本舗
白魚をカリッと揚げた商品。
そのままはもちろん、サラダに和えてもおいしい一品。
カラフルなパッケージにもこだわりがある。
smeltの価値
(佐藤)
こういう風に頑張っている佃煮屋さんがいるんだよっていうことを知ってもらうだけでも、smeltの価値はあります。
ただの会社が商品を出すよりも、smeltの会社がいろんなコンセプトの商品出しているんだなと思ってもらえたらありがたいです。
smeltの活動によって切磋琢磨してお互いの会社がもっと伸びて、それが業界の地位底上げにつながっていけたらいいですね。
これからももっともっと佃煮やわかさぎ、八郎潟をPRしていきます。
【smelt HP】
【佐藤食品(株)HP】
【(株)菅英佃煮本舗HP】
【(株)千田佐市商店HP】
【著:あきたどまんなか宣伝局】