アンチ・パターン化の話

シューティングゲームやアクションゲーム等の攻略で良く耳にするパターン化と呼ばれる攻略方法。敵の攻撃、あるいはステージ全体に対して、『これはこう動いて対処すれば勝てる』というのを予め丸暗記する形で攻略していくという手法を指します。

多くの人が難関ステージを先達の編み出したこの手法で攻略をしていく一方で、パターン化はつまらない、パターン化しないと(自分は)クリアできないゲームはクソゲーだという人も一定数います。

このアンチ・パターン化な意識の人は、大きくわけて2タイプいると思っています。

最初に、ゲームデザイナーが綿密に設計したステージを攻略していくタイプのゲームにそもそも興味がないという人。そういう人は例えば対人戦の駆け引き等に面白さを見出していて、本質的にゲームに対して求めている面白さのベクトルが異なるので、自分が面白いと思えるゲームをやれば良いと思います。

次に、今回の主題であるパターン化という行為にアレルギー反応を起こす人。わたしは脳トレをやりたいんじゃない、シューティング(アクション)がやりたいんだ、等の意見を聞いたことはないでしょうか。

この発想に至る人の多くはそこそこの難易度を自力でクリアでき、その難関を突破することに楽しみを見出せる、中堅ゲーマーやミッドコア層呼ばれたりするプレイヤーです。自力ではクリアできない壁にぶつかって、他所に求めた攻略方法がパターン化であったとき、小さな自尊心が傷つけられて結果としてパターン化に対するアンチ思想になってしまうのでしょう。


パターン化は攻略方法ではない

パターン化を毛嫌いする背景には、パターン化そのものに対する認識の誤りもあります。冒頭でパターン化とは攻略方法の一種だと紹介しましたが、厳密にはこれは違います。

パターン化とは何度も何度も繰り返しプレイし、いかに効率よくクリアするか、いかに効率よくより多くのスコアを稼ぐかを突き詰めていく最適化と試行錯誤の過程そのものです。

攻略方法として紹介されるパターンはその本質である過程を全て省略し、先達が試行錯誤の末に編み出した解法を、過程を理解しなくても利用できるように手順としてまとめただけの解法の一例に過ぎず、そのパターンが唯一絶対な攻略方法であるということは殆どありません。

しかし、いち早く攻略パターンを紹介する人たちはとんでもなくゲームが上手い人たちで、その人達がこうすれば効率が良い、と示した方法以上に効率が良い、あるいはスコアが稼げる方法に自ら至ることは容易ではありません。そのため、先に示されたパターンを踏襲することで先達に負けたと思い込み、劣等感に苛まれ、結果としてパターン化で攻略できるゲームに対してもアンチ思考になっていってしまうのでしょう。


パターン化できるゲームとできないゲーム

少し話は変わりますが、パターン化はできるゲームとできないゲームがあります。

パターン化が出来るゲームはシューティングやアクション等の、ランダム要素が少なく、ゲームデザイナーがステージの構成や敵の配置や行動をコントロールしているタイプのゲームです。RPGなどでも多少のランダム要素はあれど、有効な攻略として一定のパターン化した戦術が取れるものも数多くあります。

反対にパターン化ができないゲームは、大別するとFPS等の対人戦がメインとなるゲームと、ランダム要素をゲームデザインの主軸としているゲームがあります。

対人戦がメインとなるゲームでは相手プレイヤーによって取る行動が千差万別で、それに対するこちらの手も状況によって都度変化するので決まりきった勝利パターンはないというのは言うまでもないでしょう(※一部のバランスブレイカーは除く)

ランダム要素を主軸としているゲームとは、ローグライクと呼ばれるランダム生成ダンジョンなどが代表的です。こういったゲームはランダムにより起こり得る理不尽も含めてゲームデザインが成され、プレイヤーもそれを承知の上で挑んでいるので、突入した途端にレベル1では勝てない敵に囲まれて成す術もなくゲームオーバーというのもゲーム体験として受け入れられます。

一方で、スコアランキングを行うアクションやシューティングにパターン化ができないほどのランダム性があったとしたらそれは面白いのか、ということを考えてみます。

敵の配置や行動に法則性が一切なく、全てランダムで決定されていればその場その場に合わせた対処が必要となり、パターン化はできません。勿論それもゲームデザインとしてはありですが、何度も繰り返しプレイし、ハイスコアを競うゲームでそこまでのランダム性があったらどうでしょうか。

運が悪ければスコアアタック以前に理不尽にやられゲームオーバー。敵の配置が悪ければ効率よく倒すことができずにクリアできたとしてもスコアは伸び悩む。どれだけ腕を磨いても運が悪ければ全てが水の泡になる。

対人戦ではないパターン化では攻略できないゲーム、極論を言うとそれはただの運ゲーでしかありません。

難しいと理不尽は違います。難しいゲームを攻略することに楽しさを見出す人は数多くいますが、理不尽なだけの運ゲーに繰り返し挑みたい人は少数派でしょう。

超高難易度で一見攻略は不可能に見えるステージであっても、繰り返し何度も挑戦し、相応にプレイヤーの技能が上達し、適切な行動を取れるようになれば突破できるように設計されている。これに挑み、クリアできたときの喜びは一入でしょう。

超高難易度でステージ構成は全てランダム、どれだけ回数を重ね腕を磨いても全てがランダムが故に有効な対策は立てられず、たまたま突破できるケースに遭遇するまでゲームオーバーを繰り返し、そして確率的には1万回そのステージに挑めばクリアできるかもしれない。そんなステージを突破できたとして、あるのはきっと徒労感だけでしょう。


アンチ・パターン化な人々へ

話が少々逸れましたが、パターン化とはプレイヤーの知識や経験、技術が攻略の鍵となるゲームにおいて、効率よく攻略するための最適化と試行錯誤の過程そのものです。パターン化を用いた攻略とは、先達が導き出した試行錯誤の結果のみを手順として採用した攻略手法です。

パターン化を頭ごなしに否定する人であっても、恐らく完全な運ゲーを求めている人はごく少数で、型に嵌められるのを嫌っているだけの自意識が高い人が殆どなのでしょう。

アンチ・パターン化な意識を持っている人は、本来はそのゲームを攻略の過程も含めて十分に愉しめる人だと思っています。パターン化が広まっているのが気に入らないと意固地にならず、自分流の攻略方法を試行錯誤していけば良いし、パターン化をその通りにしなければクリアできない絶対的な手順だと勘違いしている人は是非その認識を改めてみてください。そうすればきっとより良いゲームライフが送れるようになりますよ。