見出し画像

動かないボーナス【毎週ショートショートnote】

子供が産まれてから、家の中は荒れる一方だった。
食事も洗濯も最低限、掃除に至ってはほぼゼロだ。
でももちろん不満なんかない。家事と育児を一手に引き受けてくれる妻には感謝しかない。

そんなある日、ふと気づいた。
今日は妻の誕生日だ。毎日頑張ってる妻をねぎらってあげなきゃ。
俺は帰りに大きな花束と豪華なホールケーキを買った。きっと喜ぶぞ。

「ただいま!ほらこれ!」
「……?」
「今日は君の誕生日だろ?俺、ちゃんと覚えてたよ。はい、花束!ケーキは奮発してホールケーキにしたからね。今日のごはんはご馳走かな?」

だが妻の顔は、みるみるうちに般若と化した。

「今のアタシに花の世話までする余裕があると思うの!?ケーキ切るのもお皿洗うのもアタシじゃない!ご馳走作る暇なんてないんだってば!」
「え、でもせっかく……」

妻はびしりと俺に指を突き付けた。

「今のアタシが欲しいのはただひとつ。睡眠よ!子守りもアンタの世話もしないで、眠れる時間をアタシにちょうだい!!」


【あとがき】
よく聞く「悲しい勘違い」ですねえ……。旦那さんのお心遣いはありがたいのですが、妻が今求めているのはソレじゃない、という……。
「動かないボーナス」と聞いて、真っ先に思い浮かべた「増えない賞与」の呪いと戦いつつ、何とかそれを回避しようと努力してみました(笑)

*この記事は、以下の企画に参加しております。



お読み下さってありがとうございます。 よろしければサポート頂けると、とても励みになります! 頂いたサポートは、書籍購入費として大切に使わせて頂きます。