毒舌寿司 #毎週ショートショートnote
「トロいくせに、でかいツラしやがって!」
高級皿の上で寝そべるトロに向かってマグロが怒鳴った。
慌てていなりが仲裁に入る。
「まあまあ、元は同じ魚だろ」
「うるせえ、いなり!巻き寿司女房の言いなりで甲斐性なしの助六が!」
「それを言うなら宿六……」
恐る恐るハマチが口を挟む。
「やかましい!生け簀にハマっちまった奴が偉そうに!」
すると今度はイカが赤貝を小突いた。
「何でえ、貝殻みたいなほったて小屋に住んでる奴ぁ、あかがいっぱいだな」
すかさずホタテがくわっと口を開く。
「頭イカれてんのか!俺の殻がほったて小屋だ?そんなら川や海をうろつくサーモンはホームレスじゃねえか!」
サーモンがぎろりと睨みをきかせた。
「言いやがったな!さあ文句がある奴は前に出ろ!」
「てめえら、何騒いでやがんだ!」
突然、雷声が落ちた。
見ると戸口で板前が仁王立ちになっている。
「そもそも諸悪の根源はあいつだぜ」
「まったくだ。いっそ食るか」
彼らは一斉に、わっと板前に飛びかかった。
「いてまえ~!!!」
*本作品はamazon kindleで出版される410字の毎週ショートショート~一周年記念~ へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です。
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