ビール傘【毎週ショートショートnote】

「さあ、両者立ち合った！赤・ユウヒ、白・ヨントリー共に正眼の構え！」

左右から歩み寄った二人が、互いに傘をぐっと構えるや、同時に床を蹴って打ちかかった。

「おっと、ちょっと高級な感じのヨントリーのビールっ腹に、ユウヒのスゥパァドゥラアアアイな胴打ちが決まった！ああっ、ヨントリーの後ろからゼブラビールが飛び出したぞ！正統派、コクのある面打ち！」

辛うじて躱したもののゼブラの傘の柄に跳ね飛ばされて、ユウヒが後ろに吹っ飛んだ。周りからわっと声が上がる。

「ここで王者ダイコクの登場だ！八相の構えから袈裟懸けに斬りおろした！これぞ王者、唯一無二のダイコクの袈裟斬りだぁっ」

その時、がらりと音を立てて扉が開いた。

「おまえら、あれほど傘でチャンバラやるなって言っただろうが。しかも中坊のくせに妙に酒に詳しいじゃねえか。ちょっと職員室来い」

生活指導の教師に睨まれて、生徒たちは急に酔いが醒めたように、振り上げた傘をしおしおと下に降ろした。

【あとがき】
簡単かと思ったら、意外にネタが広がらず思わぬ大苦戦。しかも今週は皆さんお早いので、ネタ被りに戦々恐々……。
なおこの話はフィクションです。サントリー・プレミアムモルツ、アサヒ・スーパードライ、キリン・ラガービール、エビスビールなど実在の企業・製品とは一切関係ありません(笑)


＊この記事は、以下の企画に参加しております。