見出し画像

涙鉛筆【毎週ショートショートnote】

最初はね、真っ白の色鉛筆なんだ。

その白い鉛筆を手に、大切な人を亡くした話をしてもらうのさ。
そりゃあ聞くのは辛いよ。でもそれが僕の仕事だから。

長年連れ添った夫を亡くしたとか、友達が急逝したとか……あるいは子供を病気で喪ったとかね。これがいちばんキツいんだけど。

当然、みんな泣きながら話す。
するとその涙で鉛筆の色が変わるんだ。
色?人それぞれだね。
子供を亡くした親の場合は、それこそ血のように真っ赤な色だったりする……辛いね。

何のためにそんなことするかって?

あのね、その色鉛筆で日記を書いてもらうんだよ。
それと毎日必ず空を見上げて。

すると鉛筆の色が日に日にすこぅしずつ薄くなって、やがて別の色に変わるんだ。
蜂蜜みたいな金色だったり、淡い薔薇色だったり。
不思議だろう?
その頃には、空を見上げる時に笑顔が浮かぶようになるんだよ。
大切な誰かを想ってね。


……ところで君はどうしてここに来たのかな。
何だか涙の跡が残ってるように、僕には見えるんだけど。



【あとがき】
こんにちは。エモい話を書くのが超苦手な秋田柴子です。
じゃあ何が得意かと聞かれると、ものすごく困るんですけど……
だからやっぱり今週も難しかったです。
また来週のお題を怯えつつ待つことに致します(笑)


*この記事は、以下の企画に参加しております。



お読み下さってありがとうございます。 よろしければサポート頂けると、とても励みになります! 頂いたサポートは、書籍購入費として大切に使わせて頂きます。