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立法権の思い出【毎週ショートショートnote・裏お題】


餃子帝国の国民は、ひどく混乱していた。

『今後我が帝国において、豚挽肉を主とする焼餃子以外を餃子と認めないこととする』

皇帝が定めたこの新たな法律により、国中が大騒ぎになった。

ひとくちに餃子と言っても様々だ。水餃子に揚げ餃子、豚肉以外にエビもよく使われるのは周知の事実。だが偏狭な皇帝は、自らの好む餃子以外を餃子と認めなかった。

当然、国民が反発しないわけがない。
身分の差こそあれ、誰もが皇帝に引けを取らない餃子好きであるのだ。

「横暴な皇帝なんざ、引き摺り下ろしちまえ!」

手に手に鍋やれんげを持った人々が宮殿に殺到し、皇帝はあっさりと拉致された。
だが餃子を愛する者同士の情けで、法律の無効と改心を条件に、皇帝は釈放された。

その後野に下った皇帝は、民に勧められて様々な餃子を味わうこととなった。

「ああ、昔の私は何と愚かな法を定めたことか」

過去の自分の歪んだ権力を深く恥じる皇帝の前に、熱々の水餃子が温かい笑顔と共に差し出された。

(410字)


【あとがき】
表お題で、ちょっと暗めのお話を書いてしまったので、裏お題は一転、おバカな話にしてみました。でもこれでまたワタシのことを「餃子犬」とか言う人たちが出てきそうな予感がします(笑)
いいじゃないですか、好きなんだから。

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