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告白雨雲【毎週ショートショートnote】

「まあ、ぶっちゃけ繋ぎだったんだよ、おまえとのことは。ちょうど前の彼女と別れてヒマだったからさ。でも俺、もう新しい彼女できたから。悪いけど」

そろそろ潮時と踏んだ俺の辛辣な告白に、彼女の顔がさっと青ざめた。みるみるうちにその目に涙が溜まる。
やれやれ。案の定、湿っぽい雨雲が漂ってきちまったな。まあ素直で世間知らずの彼女のことだ。何の疑いもなく恋人同士と信じ込んでいたんだろう。

だが、たとえ女がどれだけ涙雨を降らせようと、泣き落としにかかる俺じゃない。
好きに泣かせるだけ泣かせて、あとはさっさとおさらばだ。

「信じられない。まさかこんな……」
「だから何度も言ってるだろう。俺は最初からそんな気なかったんだよ。おまえが勝手に……」

そう言いかけて俺は息を呑んだ。
彼女は涙に濡れた目で静かに立ち上がると、おもむろに懐から鈍く光る刃物を取り出した。

「本当にこれが必要になる時が来るなんて……」

――そして降ったのは、問答無用の血の雨だった。


*本作品はamazon kindleで出版される410字の毎週ショートショート~一周年記念~ へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です。



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