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失敗の総量を管理する

https://recruit-holdings.com/ja/blog/post_20221108_0001/

リクルートホールディングスのCEOの出木場が「失敗しないように導く」のではなく「失敗の総量をマネジメントする」というインタビュー記事を読んだ。まさに、その通りだと思う。

成功確率を上げるために、たくさん失敗する

私の担当している新規事業開発では、失敗が当たり前である。新規事業開発の成功確率を上げるには、たくさん失敗して、そこから学ぶことだと思う。絶対成功するパターンは分からないが、失敗はパターン化して学習することができれる。それをたくさん繰り返すことによって、失敗の確率が下がり、結果的に成功する確率が上がっていくという考え方だ。

新規事業開発の失敗総量のマネジメント

「失敗の総量をマネジメントする」というのもポイントだ。1つのプロジェクトに社運を掛けて全ての資金を投入して、それが失敗してしまうと、会社が倒産してしまう。そんなリスクの高い挑戦をしなければならい時もあるかもしれないが、一般的にはやるべきでない失敗だと思う。
もう少し「失敗の総量をマネジメントする」について事例を用いて説明する。リクルートの新規事業開発では、ステージゲートという考え方を採用している。4つのステージに分けており、、それぞれのステージで予算や人員の総数が決まっている。最初のステージでは「市場はあるか?」を確認するフェーズで、市場の調査と市場規模の試算を行う。可能性が説明できれば、次のステージに昇格できる。昇格できなければ、そのプロジェクトは撤退することになる。この時点で、撤退することで、失った投資は限定的となる。次のステージでは「儲かるか?」を確認するフェーズで、最低限の機能を持ったプロトタイプを開発して、少ない顧客に利用してもらう計画した通りにシステムは動くか?顧客は想定通りに利用してくれるか?を確認する。並行して、実際に費用をいただき、掛かるコストを集計して、儲かるモデルになるか?を確認する。実現できなかったり、儲からないと分ければ撤退することになる。ここで撤退できれば、利用してくれた顧客も限定的なので影響範囲を限定することができる。ステージゲートはもっと綿密に設計されているが、こうやって失敗の規模を調整できている。このように大規模投資での失敗を減らすことができれば、限られた予算の中で、より多くの挑戦をすることができ、失敗からの学びを増やすことができる。失敗の総量をマネジメントするというのは、いろいろなケースがあるだろうが、新規事業開発におけるステージゲートは、1つの事例と言えると確信する。

バスケのファールをマネジメントする

バスケにおいて「失敗の総量をマネジメントする」を意識して指導してきたことがある。それは「ファール」である。バスケのファールには、チームファールとパーソナルファールがあり、前者はチーム単位で数えられるもので、1クオーター中に5回以上になると相手チームにフリースローが与えられる。後者は個人単位で数えられるもので、試合中で5回以上になると退場となってしまう。
しかし、ファールはしてはいけないものなのか?というと、そうとも言えない。ファールをしないようにプレーすることが良いことか?というと、そうとも言えない。バスケは基本的にはオフェンス優位なスポーツで、だから1試合で得点が大量に入る。ファールをしないようにディフェンスをしていると簡単に点を取らてしまう。そう考えると、ファールは5つまで使えるので、最大限に有効活用するのが良いということになる。エース級の選手であれば、5ファールで退場しては困るので、4回まではファールをするほどタイトに相手選手にプレッシャーを掛けるが、それ以上は無理をしないとかは、ファールという「失敗の総量をマネジメントしている」と言える。また、試合の序盤からエース級の選手に2つ以上のファールが吹かれたら、退場を避けるために、他の選手とディンフェスのマッチアップを変更して、別選手がファールを多く負担するようにすというのも、チーム全体でみた「失敗の総量のマネジメント」といえる。(なお、相手選手に当たれ!というファールの指示ではなく、ファールを恐れず、身体を近づけてディフェンスさせているという指示であることを加えておきたい)
また別の視点では、チームファールが4個になり、次のファールからフリースローになってしまうことがある。4つまでファールをして、ここからは「ノーファール」で安全にファールを取られないようにするというのもマネジメントと言える。更に深めると、小学バスケの平均的なフリースローシュート成功率は50%以下だと思う。私の指導していたチームは、速攻をメインとしていたチームだったので、相手のフリースローでシュートが決まった後のクイックスタート&速攻の練習を多く取り組んできた。これは、成功率が50%ならば失点は1点になるが、速攻で2点取り直せる確率が高いならば、5つのファールをするをしても期待値が相対的に1点加点になる。そう考えると、チームファールを恐れる必要がなくなる。この様にファール後の対応を準備しておくことも「失敗の総量をマネジメントする」に含まれると思う。

失敗という事象の意味を組織内で共通認識にしておくことが重要である。新規事業開発でいえば、失敗は不可避であることと、失敗からの学ぶために量を行う必要があるという理解や、ファールはしてはいけないものではないという共通認識である。この共通認識がなければ、リスクを取ることに対してメンバーの心理的安全性が担保できなくなり、新規事業への挑戦の数が減ったり、強いディフェンスができない組織になってしまう。
次に、どこまでが安全ゾーンなのか?どこからが危険ゾーンなのか?を共通認識にしておくのが良い。ステージゲートであれば予算制限を掛けているし、バスケのファールではエース級の選手を退場させないに程度に設定してチーム内で共通認識がある状況である。そして、それを正しく計測して見える化し、状況をチームメンバーや同僚を共有できることが重要だと思う。
失敗のインパクトを最小化させることも大切である。フリースローからの速攻が強くできれば、更に挑戦の総量が増える。ステージゲートの予算の人員は厳しく管理していることも重要である。
そして、何よりも失敗から学ぶ仕組みが重要である。新規事業開発では、失敗したこと論理的に報告できれば、組織として知見が増やすことができ、将来の同じ失敗をする確率を抑えられる。その点で、振り返り報告をしっかりしていれば、新規事業開発に本質的な「失敗」はないのかもれない。バスケのディフェンスでも、ファールを吹かれたら、次は「この審判はこれぐらい呼ぶと吹いてくるんだ」と理解して、次のディフェンスに活かすことが大切だと言える。これができて初めて「失敗の総量をマネジメントする」ということになるのではと考える。

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