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「風光る」が完結してモヤモヤ

他に仕事で書くべきものがあるのだけれど、どうしてもモヤモヤして集中できない気がするので吐き出してから仕事に着手したく。ネタバレ…はもう解禁でええよな。発売から5日も経ってるわけやし。

風光るは1997年に連載がスタートして、つい最近完結。実に23年も連載していた長期連載で、作者は渡辺多恵子先生である。「ファミリー!」のアニメは見てたなあ。作者さん的には気に入らんデキだったらしいけど。

「風光る」のあらすじ

時代は幕末でちょうど新選組が幕府から重用されるとかしないとかそれくらいの時期。医者の娘であるセイは、家族を半幕府派の浪人に殺され、兄が入隊した(いや、しようとしていたですね。失礼)壬生浪士組(のちの新選組)にオトコのふりをして入隊。そこで出会う武士たちの生き様に魅了されながらも、沖田総司に恋心を抱き、あれこれ事件がありながらも最終的には沖田総司と恋仲になり(ここまで23年)、労咳に冒された晩年の沖田総司を看病し、看取る。その後、セイは…。

というのが、最終回までの23年間のあらまし。

新選組以外は武士にあらずというわけではないが、新選組といえば士道として語られることも多い昨今であり、私自身が函館在住なのでそこかしこに新選組だとか土方歳三だとかの歴史のにおいをちらちら感じている毎日。

新選組で語られる「士道」をざっくり言うとするならば、信じたもののために己の命を捧げて尽くす、義のために尽くすことなのかな?と私は考えています。

最終回の衝撃

沖田総司と祝言をあげ、短い蜜月を送ったセイは夫の隊士服に身を包み、会津を越えて箱館に陣を構えていた土方歳三に沖田の遺言通り会いに行くわけです。

沖田の遺言とは、「自分の遺髪を土方さんに届けてほしい」、「土方さんにあなたへの遺言を預けているから受け取って欲しい」ということ。

無事に土方にあったセイは、自分の勤めは終わった。土方さんとともに戦ってここで散りたいという。そして土方は「遺言など預かっていない」という。しかしここで、土方は何かをひらめき「そうか、総司の遺言・遺志はわかった。これからお前に希望を授ける!」と、突然にセイを手篭めに。「生きてくれ!」という懇願をうけたセイは、そんな土方を受け入れ、土方の生まれ故郷である日野へ戻る(ここまで数ページ)。そこでつわりからの、数年後に5歳の沖田総司にそっくりの息子。「あなたは武士の子よ」END。

唐突に上司であり、夫が大好きだった土方歳三に襲いかかられ、希望を授けるとかいわれながら繁殖行為で、速攻の妊娠て。

あげく、土方の子であるはずなのに、「沖田総司似てよく言われるんです(にっこり)」て。

作者が描きたかったのは「女の武士道とは」なのか?

私も倫理観がわりと崩壊している方なので、作者の意図もわからなくもないんですが、それを打ち切りだからなのか?ダイジェストで100pで読まされるとゲンナリというかガッカリというか、ねぇ…。最後の方の新選組の面々のあっさりとした死にっぷりをみると、歴史とか史実とかホントどうでもよくて、セイと沖田と土方の物語を都合のいいときだけ武士道とか幕末とか歴史とかの皮に包んで魅せられてただけなのかよという気にもなるわけで。

当然、函館住みで熱心な土方スキーが身の回りにもいる人間としても、最終的には和姦だとしても唐突な押し倒しには不愉快しか感じないのだ。

大人の事情を慮ったとしても、スッキリしない最終回だった。

テーマは「女子であるところのセイの武士道とは」というものが軸だと考えると、

・最終的に夫であるところの沖田総司と性生活はありつつも子は授からなかった
・夫亡きあと、武士として命を散らそうとするセイに生きてもらいたい沖田総司の遺志を受け取る形で、夫が最も心酔していた土方が、オトコとオンナでないと出来ない「子を為す」ことでセイに「生きることで新選組の隊士たちの士道を受け継いで欲しい」と事に及んだ
・土方を男としては愛していないが、隊務として命を受け継いで士道を伝えることを了承し土方の行為を受け入れるセイ
・実際に受胎し、産み、医師として修行をしながら育て、武士の心をつないでいくセイ

……というのは、筋としては真っ当でまっすぐだ。

駄菓子菓子。あまりにも唐突すぎることと、微妙に現代感がある雰囲気と、23年もの間、野暮天沖田総司とピュア女子神谷清三郎(=セイ)のプラトニックラブを見守ってきた元200万乙女には、あまりにもあまりにも早急で酷な最終回の描写ではないか。

たった数ページの邂逅で「いきろおおおお!」といいながら、上司が襲いかかってくるシチュエーション……。読者も過半数はもういい大人でしょうからね、別に最終的に土方とそういう関係になることについては、ヒステリックに否定しているわけではなかろう。

23年間やってきたこと、追ってきた物語の集大成が最後のたった数ページでちゃぶ台返されたことに対するモヤモヤ感。これがほんとに残念だ。

そして、この最後の100pの構成にテコ入れ出来なかった担当編集にがっかりだし、フラワーズ編集部にもガッカリなのである。。。事情は察するけれど、残念なのである。

極めつけに、セイが生んだ子が土方の子だと類推されるのに、顔が沖田総司にそっくりだということがさらなる読者のガッカリ読後感につながるのである。

女子としての武士道、女子でしか貫けない命をつぐむことでの武士道を体現し貫くことの象徴としての、セイの子ども…であるのなら、中途半端に沖田総司似の子どもにするべきではなかった。この描写があるせいで、読者は混乱し、作者の意図(だと思いたい)がぼやけてしまう最終回になってしまった。

あえてのミスリードを狙った描写なのかもしれないし、少女漫画としてのドリームだったのかもしれないけど、これは特に良くなかったと私は思う。

奇しくも名作になるはずだった作品が、迷作になった瞬間に立ち会ってしまった。

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