4-⑭ 発心の旅
彼は、親友の四十九日法要を終えた2日後、バックパックを背負い、白いスニーカーを履いて忽然と姿を消した。
向かった先は、四国霊場八十八ヶ所第一番霊山寺であった。
彼は山門の前で一礼し、手水で手と口を清め、巡礼の旅に必要な白衣、輪袈裟
、菅笠、納札、持鈴、そして金剛杖を揃え、僧侶から数々の教えを頂いた。
鐘を突き、本堂と太子堂でロウソクと線香を手向け、姓名、住所を記した納札を納札箱に入れ、読経を唱えた。
納経所で墨書と御朱印を受け取り、再び山門の前で一礼をした。
こうして、彼の発心の旅が始まった。
500名収容の宿坊には、たくさんのお遍路さんが瞳を輝かせ、明日からの予定を話題にしながら夕食を摂っていた。
若いお遍路さんもちらほら見かけたが
、圧倒的にご年配の方が多かった。外国からのお遍路さんもおり、皆それぞれに
、巡礼の旅を始める不安や背負っている想い•••複雑な感情と表情が見え隠れしていた。
秋らしからぬ暑き日差しを全身に受け
て、急勾配の坂道と三百三十三段の女厄坂、男厄坂を息を弾ませながら登り切った先の十番札所切幡寺。
大塔から望む雄大な四国山地、秋の陽光を受け煌めいている吉野川•••一望千里の風景に目を奪われた。
山を越え、下り、また越えてようやく辿り着いた十二番札所焼山寺。道すがらに出会ったおばあさんからバナナと塩飴、痛み止めの錠剤と飲料水のお接待を受けた。
彼は、〝納め札を渡すのは初めてなんです。〟とはにかんだ。
おばあさんは心底嬉しそうな表情で白の納め札を受け取り、彼を見送った。
まるで、〝私の代わりにお参りしてくれてありがとう〟と言っているかのようであった。
宿坊や通夜堂、遍路宿、善根宿、民宿、ゲストハウス、ビジネスホテル•••宿泊し、夕食、朝食のお接待を受け、また歩き、宿泊し、幾度その日々を繰り返すのであろうか。
〝西の高野〟と呼ばれ、青年時代の空海が百日間の難行をした、二十一番札所大龍寺を打ち、二十二番平等寺のご本尊薬師如来に彼が呟いた。
〝右の足裏が痛いです〟
境内にある大師ゆかりの霊水をペットボトルに汲み入れ、宿泊先の宿坊でおばあさんからお接待で頂いた痛み止めの錠剤と霊水を飲み、眠りに就いた。
翌朝、足裏の痛みはほとんど消えていた。彼は感謝を伝える為に平等寺に引き返し、薬師如来に手を合わせ霊水を満たし、先への道を歩き始めた。
左手に見えた広大な太平洋が、これからの巡礼の旅を、その困難さを示すかのように、立ちはだかるかのように美しく広がっていた。
二十三番薬王寺へ向かう途中、日和佐という町のお遍路さん接待所で冷たい麦茶と作りたてのおはぎを頂いた。
暑い中を歩き続けた身体に、栄養が隅々にまで染み渡っていった。
二十四番、室戸岬の先端に建つ最御崎寺(ほつみさきじ)までの76キロを2日に分けて歩いた。
途中雨に打たれ、身体を震わせながらも、懸命に前を向いた。
わざわざ車を停めてまで温かいコーヒーをお接待してくれた男性。
いつもそうしているのだろうか、ワゴンの後部トランクから本人曰く〝お接待セット〟と呼ばれる袋を手渡してくれた老夫婦。
老夫婦から頂いたプロテインバーをを口にしながら、ミルクキャラメルで栄養補給をしながら、彼は歩き続けた。
打ち寄せる波、流れ行く雲、そして今まさに生まれ来ようとしている太陽の光がやがて、地上の全てのものを飲み込んでゆく。
目の前に広がる夜明け前の室戸岬は、声を失う程の幻想的な美しい佇まいであった。
青年太師が悟りを開いた洞窟を訪ね、空と海の雄大な景色に、目を、心を奪われた。
PS•••いつもお目に留めていただき、心より感謝申し上げます🥹🙏次回配信は
、2月3日午前8時です。
たくさんのお接待を、善意、善根を受け、心の修行に励む青年。いつかの、これからの日々の為に🙏🙏
素敵な風景に心打たれます。
私自身、この目で見た懐かしき思い出も紹介します🥹
それではまたお会いいたしましょう!
AKIRARIKA
🐴💨🔥🐴💨🔥🐴💨🔥🐴💨🔥🐴💨🔥
先日、12頭の新規入厩馬がAKIRARIKA厩舎に到着しました🤭🐴🐴
懐かしいお馬さんや、現役トップクラスのお馬さん、ライバル同士等、多士済々です。しばしお付き合いの程を🤭🤭
ではまた👋
この作品を通して、養老牧場への牧草寄付等の引退馬支援を行います。その為のサポートをしていただければ幸いです。この世界に生まれたる、すべてのサラブレッドの命を愛する皆様のサポートをお待ちしております🥹🙇