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小休止

 畑での仕事を終えると、私はチームメイトを乗せて車を走らせる。基本的には同じファームハウスに住んでいるメンバーを乗せて帰る。だが、チームの規模が大きくなるにつれて、隣町のシェアハウスにも多くのメンバーが集まり始めていた。彼らを家に届けることも私の仕事になった。
 オーストラリアの高速道路は基本的に無料で、車線も多いため、日本よりも気軽に使われることが多い。そもそも日本ほど広大な都市が連綿と続いてはいないので、隣の街に行くとなると、幹線道路として整備されている高速道路を使わざるを得ない。そのため、出口二つ分の区間を走らせることが私の夕暮れの日課になっていた。
 皆を送り届けた後の帰り道はすでに闇に包まれていて、暖色といえば高速道路脇に規則正しく配置された街灯だけであった。宇宙ステーションのようなサービスエリアを横目に私は巻きタバコを巻いていた。直線が続くこの道で、ハンドルを両肘で抑えながらタバコを巻く自らの姿に私は一種の専門性を覚えていた。やっと労働から解放され、一人の車内で行われるこの一連の動作と一服が私の癒しであった。
 ラジオはどこかでいつか開催される何かのイベントの告知を受信しているようであった。

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