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緑の丘公園に行って丘に登らず

夕方、川沿いの遊歩道をトロトロジョギングしていたら、後ろから追いついてきた体が引き締まった精悍なランナーに話しかけられました。
「緑の丘公園に行くにはこの道を行けば大丈夫ですか?」
「たぶんこの道よりあっち道のほうが近いと思うけど、こっちの道でもそんな大差ないですよ」
あっちの道は車がビュンビュン走っている県道で、こっちの川沿いの道は景色もいいし車も来なくて安全です。2本の道はほぼ平行に伸びています。
「じゃあこっちの道を走ります。ありがとうございました」
と礼を言って、精悍なランナーはぐんぐん走って行きました。
ランナーを見送ったあと、行く予定はなかったけれど緑の丘公園もいいかも、と僕はあっちの車がビュンビュン走る県道を選んで走ってみました。

走りながら気づいたのは、この県道が川沿いの遊歩道からどんどん離れていることでした。全然平行ではなかったのです。まずい、精悍なランナーさん、緑の丘公園にたどり着けないかもしれない。

20分ぐらい走って、僕は公園に到着しました。そして、公園内に精悍なランナーさんの姿を見つけました。よかったたどり着けたんだ、と思うと同時に申し訳なくて気まずくてあたふたしました。でも見つかってしまった。
「あ! さっきはありがとうございました」
と彼は律儀にお礼を言いました。
「あ、いや、なんかかなり遠回りになったかな。すいませんでした」
と僕が恐縮すると、
「いえいえ、そうでもないですよ。いややっぱり遠かったかな。それにしても広くていい公園ですね」と言ってくれました。
それで気をよくして、僕は耳寄り情報を伝えました。
「あの丘の頂上から見る夕日は最高です!」
「それはいいですね。おやもうすぐ夕日じゃないですか。では!」
そういうと精悍なランナーは丘に向かってダッシュしました。

僕はというと、またまた遭遇するのはなんだかますます気まずいので、せっかく緑の丘公園に来たのに、丘に登らずにそのまま帰ったのでした。

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