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お金を「貯める力」と「使う力」。幸福度の高いお金の使い方とは。

前回はこれからの時代を生きる医師に必須な「お金にまつわる5つの力」についてご紹介しました。今回はその中でも医師の皆さんが特に弱い「貯める力」について私の経験をもとにお話します。そして「使う力」の磨き方も紹介します。

支出をコントロールするために今すぐやるべきこと

「お金が貯まらない」という人が真っ先にすべきことは支出のコントロールです。別に贅沢をしているわけではないのになぜかお金が貯まらない年収1500万円の医師家庭の方は絶対にいますぐやるべきです。
 以前の私のように、お金のことを考えることを避けすぎていて、まず何から取り組むべきかわからないという人は、手始めに毎月何にいくらお金を使っているのか、支出を把握することから始めるべきでしょう。ダイエットをするにも、今の体重を知らないと始まらないのと一緒です。毎日体重を測るだけで痩せていくのと同様に、支出を把握するだけで、本当に支出はどんどん減っていきます。私の場合、初めてクレジットカードの明細をチェックした時に、契約した覚えのないサブスクリプションが4つ。契約したことも忘れていて、一度も使ったことはないのに、年会費だけ何年間にも渡って払い続けていたクレジットカードが3枚出てきました。iPhoneの人は今すぐ「設定⇨メディアと購入⇨サブスクリプション」を確認し、不要なものがないかチェックしてください。スマホの契約の時に、初月無料でいつでも解除できるが、初めは必ず入らないと行けないオプション契約というのがある場合があり、意外と解除し忘れているので、携帯料金の内訳をチェックし、いらないオプションがないかどうかしっかり確認しましょう。「安心」に漬け込む「apple care plus」は個人的には解除でいいと思います。大抵の故障はスマホショップで直した方が安くて早いし、apple care plusの料金を毎月払う金額で大体カバーできます。全壊や盗難って、されたこともないし、された人を見たこともないですよね?今のiPhoneは宇宙工学を応用した頑丈な外装の作りになっているそうです。普通にカバーしていたら、そう簡単には壊れません。初めは使っていたサブスクリプションも、あまり使わなくなったりもするので、固定費は定期的に見直さないといけません。例えば私はたくさん本を読んで勉強しようと意気込み、月額980円のKindle unlimitedに加入しましたが、数ヶ月経ってみると1冊も本を読まない月もあるし、ダウンロードするほど読みたいと思う本は結局有料だったりしたので、解約しました。
 皆さんも、ほとんど読んでないのに購読を続けている雑誌や、研修医の頃に勢いで入ったものの、今は全然別の道に進んでいる学会ありませんか?その学会費を払い続ける必要が本当にあるのでしょうか。「いつか役に立つかもしれない」そのいつかがくる可能性はどれくらいありますか。まずは年間で計いくらの学会費を払っているのかをリストアップすることから始めましょう。役に立っているのかどうかわからない謎の専門医の資格も更新を続ける必要が本当にあるでしょうか。その資格はあなたのキャリアにとって本当に重要ですか?
 家計管理アプリもたくさんあるので、好きなものをダウンロードしたらよいのですが、私が使っているのは両学長が薦めていた「マネーフォワードMe」というアプリです。現金、カード、ポイント支出をまとめて管理できるので便利です。もれなく、重複なく支出を管理するには少しコツが必要ですが、慣れれば使いこなすことができます。私はリアルタイムで情報が更新される有料プランに申し込んでいます。

「節約」ではなく「慈出」

 何かと炎上しているひろゆきさんですが、お金に関するコメントはとても勉強になるな、こういうマインドが大事だなと痛切に思います。資産数億円はくだらないであろうひろゆきさんは節約家でも有名です。ご自身も自分より節約が上手い人は多分なかなかいないとおっしゃっている通り、無駄なことには一切お金を使わないそうです。本当かどうかわかりませんが、毎月の生活費を聞かれたひろゆきさんは、「3万円くらいかな」と答えていました。自動販売機で飲み物を買ったことも人生においてほぼないそうです。大切なことは、「お金持ちなのに節約している」ではなく、「節約するマインドを持っているからお金持ちになる」ということです。「節約」というと、どうしても何だかケチケチしているようなネガティブなイメージになってしまいます。お金のない人が、生活のために支出を切り詰めるという印象があるからです。しかし経済的成功を手にしている人たちは全員、節約するということの本質は、単にお金を使わないということではないことを理解しています。ひろゆきさんを「金持ちなのに節約するケチな人」と捉えている人は一生お金持ちにはなれません。「節約」の本質を表すためにどういう言葉がしっくりくるのか考えてみましたが、今のところベストだと思ったものは「慈出」です。つまり、お金を我が子のように大切なものだと慈しみ、その大切なお金を本当に価値のあるものにだけそっと送り出す(支出する)というマインドです。物を買う時も、それは本当に自分にとって価値のある物なのか、そのサービスはこれだけの金額に見合ったものなのかをよくよく検討して、送り出すという作業を日々繰り返す。価値があるかどうかはあくまで自分の中の基準で決めるべきです。他の人にどう思われるかという「見栄」は意識的に排除しなければ、本当に自分にとって価値のあるものは見えてきません。この力をつけていくと、何かを買うと決めたのであれば、逆に値段をあまり気にしなくなります。「安いから買う」のではなく、自分にとって本当に「価値があるから買う」ためです。例えば、Fireを達成し、経済的成功を手に入れたあとに、一般向けに投資の本などを出版している厚切りジェイソンさんは、無駄な支出は一切しないそうですが、20万円の珍しいインコを買ったことを本の中で紹介されています。本当に自分にとって価値があるものならば、いくらであっても買う。これも含めて慈出のマインドです。
 以前の私は、買うかどうか、どれを買うかどうかを考えることがめんどくさいと思っていたので、「迷ったら高い方を買う」というスタンスでした。自分が詳しくなくて、価値がよくわからないものを買う時に、値段が高い方が品質が良い可能性が高いので安心だからです。これは慈出とは対極にある考え方で、絶対にやってはいけません。こういう人たちは、「念の為に買っておく」「安いから買っておく」「いつか使いそうだから買っておく」という心理で消費行動をしています。電池が安かったからまとめ買いして、使わないまま5年くらい過ぎ、いざ使おうと思ったら使えないパターンです。よくあるBuy 1, take1 for free(1つ買ったらもう1つはタダ!)とか、〇〇円以上で送料無料、ポイント何倍、まとめ買いで10% off などの戦略に面白いようにハマります。いくらタダでも、割引されても、ポイントがついても、送料が無料になっても、必要のないものを買っている時点で損をしています。本当に必要なのか、それは自分にとって価値のあるものなのかを検討せずにとにかく買うので、収入があればあるだけ消費してしまいます。そして大量のモノが使われないまま何年も放置されたりします。貧乏な人ほど家に物が溢れていて、金持ちほど家には何もないと言われますが、本当に大切なものにだけ慈出するマインドを持っていると、自然とモノを買わなくなりますし、だからこそ経済的に成功するという理屈からすると当たり前のことです。そういう目で世の中を見渡してみると、これ本当に必要?というものにあふれていることに気づくでしょう。例えば洗濯するときに柔軟剤は必要なのだろうか?服からいい匂いがする必要はあるのだろうか?車に貼ってあるbaby in carのステッカーは本当に必要だろうか。赤ちゃんを乗せている時といない時で、そんなにあなたの運転は変化し、周りの人に注意喚起をする必要がありますか。実は多くのものは本当にあなたに必要なのではなく、売る側が儲けるために、買った方がいいような気にさせられているだけではないですか?そのためにあなたの見栄とか安心とか、コンプレックスが利用されているだけではないですか?「あったら便利」なものは、本当に「ないと不便」なものですか?「日本でペットボトルの水買う人いるんですねー」と言うひろゆきさんのマインドは実はこういうことなんだと思います。みんなが当たり前に買っているものでも、本当に自分にとって必要なのか、一つ一つ丁寧に考える必要があるのです。

「ないよりはあった方がいい」マインドのリスク

 例えば、iPhoneを機種変更するとして、128GBにするか256GBにするか迷ったとします。お店の人も「256GBあれば、普通は困ることないですよ」と言ってきます。1万5千円出したら倍の容量になるのかー。このiphoneを後何年使うかわからなし、念のために大きい方にしておこう。と言って256GBを迷わず買ったのは数年前の私です。結果、実際使用しているストレージは現在81GB。128GBの容量にしても使いきれません。そもそも端末にあれこれダウンロードする時代は終わり、クラウドのデータに瞬時にアクセスできる時代です。私の場合は128GBで十分だったということです。
 たいして必要でもないのに、手放すのは何となく「もったいない」。いつか使う日が来るかもしれないから「念のため」に持っておこうというという考えの人は、全てにおいて同じ行動をとります。そういう人にとってモノは「ないよりあったほうがいい。使わなくても損はない」と考えがちですが、本当に損してないですか?ケーキについてきた保冷剤で冷凍庫がいっぱいになっている。紙袋が紙袋からあふれている。何年も着ていない服を大量にクローゼットにしまい込んで、クローゼットがいっぱいになったら新しい収納家具を買い、生活スペースがどんどん収納になって、モノのために家賃を払う。多すぎるモノの中から必要なものを探すのに使うエネルギー、どの服を着ようか迷うエネルギー、そして最もエネルギーを使うのは、いつかそれを捨てると決断するために使うエネルギーです。モノを所有する、いつか使う可能性を残すということは、あなたが思っているよりも多くのエネルギーをあなたから奪い、リスクを負わせます。
 「もったいない」症候群の病魔は人間関係においても現れます。例えば「別れた彼氏の携帯番号を消せない人」です。妻がいるのに、多くの女性と何となく曖昧な関係が続いてしまう人の心理も「ワンチャンあるかも」です。その関係がいつかあなたの役に立つ可能性よりも、あなたの人生をぶち壊す可能性のほうがはるかに高いので、どんなに巨乳美女でもさっさと連絡先を消した方が賢明です。あなたにとって本当に価値のある物を大切にするシンプルな暮らしが、幸せな人生を送るコツなのです。
 沖縄県で産婦人科医をしていると、3回目や4回目の帝王切開を担当することがあります。ご夫婦の家族計画についての意向を確認し、今回で最後の出産つもりである場合に、永久避妊術として卵管結紮を提案することがあります。そうするとキッパリ「お願いします」という方と「子供はもう最後でいいと思っていはいますが、永久避妊はちょっと…」とおっしゃる方がいます。妊孕能に女性としての誇りを感じているという場合もあるかもしれませんが、この根底にも「念のためにとっておきたい」心理が働いていると私は思っています。妊娠の可能性を残すということは、卵管妊娠や流産などの可能性も残るということですし、5回目の帝王切開をすることになるリスクも出てくるということです。「ないよりあったほうがいい」マインドの人は、所有を続けるリスクに目が向かない傾向にあります。迷われているご夫婦には「もし次回妊娠をした場合に、継続することに迷いがないのであれば卵管は残した方がいいと思います。でも計画外に妊娠されて中断を考えることになるようであれば、卵管結紮がいいと思います」と卵管を残すリスクについて現実的に目を向けてもらえるようにお伝えしています。

「使う力」を身につけて、幸福になりやすいお金の使い方ができる人になる方法

 お金を使うのにも力が必要なのか!と思われた方もいるかもしれません。勉強を始めたころの私は「使う力」というものがよく理解できませんでした。ただお金を払えばいいだけでしょ。それなら得意よ、と軽く考えていました。でもより幸福になりやすいお金の使い方というものが存在し、一方であまり幸福にはつながらないお金の使い方もあります。
 まずあなたの時間やエネルギーを節約できるものには惜しみなくお金を使うべきです。いくら節約になると言っても、10円安いキャベツを買いに行くために、10Km離れたスーパーに行くのは、あなたの時給とガソリン代を考えたら明らかな損ですよね。少し割高でも、宅配してくれるネットスーパーで買った方がいいということです。例えば私は今ならYoutubeを毎日1時間くらいみるので、YouTubeプレミアムに登録しています。広告を見ることに自分の時間を使いたくないし、せっかく集中して聞いている時に、広告で10秒間も遮られたらinputの効率が下がります。全自動洗濯乾燥機やお掃除ロボットなどの時短家電もいいものがたくさん開発されています。我が家にも洗剤自動投入型の全自動洗濯乾燥機があります。洗剤を測って洗濯機に入れるという作業を毎日するために自分は生まれてきたんだ!と思っている人以外は、今すぐ洗濯機をこれに買い替えましょう。多くの医師夫婦家庭と同じように、うちでも家の掃除は家事代行にお願いしています。せっかくの週末を掃除をしてぐったりして終わるより、家族とゆっくり過ごす時間に使った方が、圧倒的に豊かな人生を送ることができるからです。掃除が大好きで、自分で掃除をして家がきれいになるのが生きがいなのであれば、お金をかける必要はないでしょう。「念のため」のまとめ買いは無駄遣いだと書きましたが、洗剤やトイレットベーパー、キッチンペーパーなどのように絶対に使うことが決まっている明らかな消耗品は私は基本的にネットやふるさと納税を利用して箱買いをします。街で少し安売りをしていたりするのを見かけると、「うちの洗剤そろそろ切れそうだったかなー?それともまだあったかなー?」と迷い、「これって本当にお得なのかな?」と価格の妥当性について思いを巡らせる。買うと決めるにしても、買わないと決めるにしてもエネルギーを消費します。人間が一日のうちに集中して決断を下せる数には限りがあるそうですが、洗剤を買うかどうかを決めることに、その1回を使っている場合ではありません。1年に1回だけ迷い、決定し、あとは1年間洗剤のことは忘れて暮らしましょう。ちょこちょこした安売りや、ドラックストアのポイント○倍が全く気にならなくなるし、重くてかさばる荷物を運ぶ手間もありません。
 一般的に「モノ消費」よりも「コト消費」の方が幸福度は高いと言われます。モノより思い出というやつですね。高い服やバッグを買うよりも、旅行に行ったり食事に行ったりすることの方がいいというわけです。「えっ何も残らないのに?」と思ったあなたは貧乏マインドを脱却できていません。お金を払うことで、あなたの何が満たされるのか、科学的に結論が出ています。人間が「幸福」を感じるとき、脳からは3種類のホルモンが分泌されているそうです。すなわち、ドパミン、オキシトシン、セロトニンの3種類です。うつ病の人はセロトニンを感じにくくなっているので、脳内にセロトニンを増やすような働きをする抗うつ薬が存在します。高級なバックを買った時、あなたの脳ではドパミンが出ています。家族と楽しい食事をするときはオキシトシンが出ています。良いマットを買ってぐっすり眠れたなら、セロトニンが出ています。ドパミンの効果は一時的ですが、オキシトシンとセロトニンの効果は持続します。しかもドパミンはすぐ慣れてしまい、同じ量のドパミンを分泌させるためには、より強い刺激が必要になってしまいます。初めて8万円の給料をもらえた特にドパミンは分泌されますが、そのうちドパミンは出なくなっていきます。給料が20万円にアップしたらまた分泌されますが、それも一時的です。最終的に月収が何億円になったとしてもドパミンが分泌されなくなるという事態も起こり得るのです。
 さらに自分のためにお金を使うよりも、誰かのためにお金を使ったときの方が幸福度は高いと言われています。よく大富豪が多額の寄付をするニュースが流れると、「お金持ちで余裕があるから寄付をしている」と考えられがちですが、真実は「寄付をするマインドを持っているからお金持ちになっている」のです。経済的に成功する人は、誰かのためにお金を使うことで自分の幸福度が高まるという原則をよく理解しています。皆さんも、誰かのためにプレゼントを選んでいるときに、お金を払うのになぜかワクワクして幸せだった経験はないですか?そのときあなたはその人の喜ぶ顔を想像して、オキシトシンが分泌されているからです。大切な人へのプレゼントを選び、人類みんなの幸せを願うクリスマスが何だかワクワクするのもオキシトシンの効果だと私は思っています。
 夫はよく私に花束を買ってきてくれます。「先生今日は何の日なの?」と聞くと「玲、今日は何でもない日だよ!家族でいてくれてありがとう。」そう言われて花束の香りに包まれるとき、私も夫も最高に幸せな気持ちになるのです。

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